表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
七色の大陸  作者: 108
8/17

ep8:名付けの瞬間~アオの新たな旅立ち

 アロハはアオの深く澄んだ青色の瞳を見つめ、彼にふさわしい名前を思いついたのだった。


 それは、瞳の色からインスピレーションを得て、彼の新しい人生の始まりを告げる名前。


「君の名前は…アオ」とアロハは静かながらも力強い調子で語りかけた。


 その声には確かな意志が込められていた。


 タウィリがその場の空気を読めずに、言葉を聞き違えた。


「アホ…!?」


 タウィリの反応に、アオは一瞬、驚きの表情を浮かべた。


 しかし、その次の瞬間、アロハは優しい笑みを漏らす。


「いや、アホじゃない。アオだよ」とアロハが慌てて訂正すると、タウィリの笑い声はますます大きくなった。


 アオも、ついには笑いを堪えきれず、軽やかな笑声(しょうせい)を周りに響かせた。


 アロハは、その笑い声が落ち着くと、改めてアオの目を見つめ直した。


「青色は、広大な宇宙のように無限の可能性を秘めた色。アロハはそう信じている」と、深い意味を込めて言葉を続けた。


「そして君こそがその無限の可能性を持つ人物だと確信している。だから、君の名前をアオと名付けるね!」


 アロハは、再び彼の深い青色の瞳に目を奪われながら、「この瞳は、海よりも深く、空よりも広い。本当に美しい...」と、感嘆の声を上げた。


 アオはアロハの言葉に心を打たれ、思わず彼女の手に触れた。


「ありがとう、アロハちゃん。君がそう言ってくれると、リアルにそう思えてくるよ」


 アオの言葉に、アロハは顔を赤らめ、少し恥ずかしそうに微笑んだ。


 二人の間には、言葉にはできない温かい感情が流れ始めていた。


 一方、アオもアロハの翠色すいしょくの瞳に引き込まれていた。


 その美しさに息をのんだ彼に、「ほらほら、なにアロハのことばかり見てるの?」とアロハは楽しげに声をかけた。


 そして、彼の新しい名前が「アオ」に決まったことを宣言し、「ぅおおーッ!! これが俺の名前か、すごくしっくりくるっしょ!」とアオは喜びに満ちた声で応えた。


 新たな名前「アオ」は彼の存在を新たに定義する印となり、その感情は彼をさらに強くしたのだった。


「貴様ァの瞳は、世にも珍しいオッドアイじゃな。ワシの故郷に伝わる神話にも、そんな瞳を持つ者の存在が語られておるのじゃが…」とタウィリは深く語った。


 その声には彼の過去と経験、そしてアオへの理解が重なっていた。


 しかし、その言葉は風に飲み込まれ、語りかけるのはアオだけでなく、タウィリが見てきた世界全てだったかのようだった。


 深い沈黙が広がる中、遠くを見つめていた。


 彼の頭の中を駆け巡るのは、遠い記憶の断片と、冥界神と称される兄、ウィロの姿だった。


 ウィロもまた、特異なオッドアイの持ち主で、その瞳は彼に強大な力を授け、最終的には冥界神(めいかいしん)の座にまで押し上げた。


 タウィリは、その力と瞳の関連性を深く理解していた。


「ウィロは、強大な力を持っていたが故に、孤独だった。彼はいつも、自分の力に恐れを抱き、誰にも心を開けずにいた。


 しかし、そんな彼にも、たった一人だけ、心許せる友がいた。それは、幼い頃のワシだった」


 タウィリは、遠い目をしながら、過去の記憶を辿るように語り始めた。


「ワシは、ウィロの力に憧れながらも、彼の孤独を癒したいと願っていた。しかし、ワシには何もできなかった。ウィロは、次第に闇に蝕まれ、ついには冥界へと旅立ってしまった…」


 タウィリの言葉には、深い悲しみと後悔が滲んでいた。


 タウィリの視線は再びアオに向けられ、その同じような特異な瞳に何かを見つけた。


〈だが、小僧ォはウィロとは異なる。小僧ォは自分自身の道を切り開いてゆくだろう。それがどんな道であれ、ワシは小僧ォを見守り続けるべきだ…〉と、自分自身に固く誓った。


 アオのオッドアイが持つ可能性、そしてそれが彼の運命にどのような影響を及ぼすのかについて、タウィリはさらに深く考え込んだ。


「アオよ、貴様ァの瞳は、光と闇、二つの力を宿している。それは、強大な力となるだろう。


 しかし、その力を正しく使うためには、心の強さと、正しい道を見極める知恵が必要だ。


 ワシは、貴様ァがその力を正しく使えるよう、導いていくつもりじゃ!」


 その思考は彼の兄、ウィロの経験と重なり、彼の思索を深淵へと導いていた。


 その深淵の中で、タウィリは自身の傷と向き合い、過去を振り返りながら、未来への道筋を模索し続けていた。


 その一方で、アオは満足そうにシャカサインを掲げ、名前に対する喜びが声に変わって宙を舞った。


「その名前、すごく気に入ったよ! アロハサンクス!」


 アロハはアオの喜びを共有し、「よかったね、アオくん」と優しく言った。


 すると、アロハのポウナムの首飾りが、再び温かく輝き始めた。


 アロハは目を閉じ、首飾りにそっと手を触れると、彼女の口から、不思議な言葉が流れ始めた。


 それは、風の音、鳥のさえずり、そして木々のざわめきが混ざり合った、自然の歌声だった。


「アオ…君は、このジーランディアに選ばれし者。君には、この世界を救う使命がある」


 アロハの声は、まるで別人のように神聖で力強かった。


 アオはその言葉に深く心を打たれ、しばらく黙っていたが、ふと顔を上げて夜空を見上げた。


 夜空を見上げ、アオが感嘆の声を上げた。


「あの七色の星、綺麗っしょ!」


 タウィリはしみじみとその星を眺め、言った。


「昔、あの星は九色で輝いておったんじゃ。しかし、時の経過と共に二色が消え、今は七色だけが残っておる。そして、今、その七色の中の一つが消えようとしておるのじゃ…」


 かつてジーランディア大陸の空には、毎夜、九色に輝く星があった。


 しかし、ある日を境に、星の色は一つずつ消え始めた。


 タウィリは、この現象を古代の予言と結びつけた。


「星が全て消える日、大陸は闇に呑まれん」


 タウィリの言葉は、冥界神・ウィロ、冥界の女王・ミルクラ、そして冥獣・アカアンガがこの現象に関わっていることを示唆していた。


 彼らは、かつてジーランディアを統治していた神々だったが、その力を悪用し、大陸を恐怖と絶望で支配しようとしていた。


 九色の星は、ジーランディアの自然と人々の心の光を象徴しており、冥界神たちはその光を奪い、自らの闇の力を増幅させようとしていたのだ。


 アオとアロハは、タウィリの言葉に不安を覚えながらも問いかけた。


「では、俺たちはどうすれば!? 暗闇に呑まれる運命を変えることはできないのか?」


 タウィリは彼らを見つめ、静かに言葉を紡いだ。


「星の消失は避けられん運命かもしれんが、闇に立ち向かう勇気を持つことで、希望の光はいつも心の中に宿るものじゃ。


 我らが団結し、冥界の力に挑む決意を固めるならば、大陸の運命もまた、変わるかもしれんのう!」


 そして、タウィリが話し続ける。


「その青色の瞳は、七色の星の一つ、エイストレリア大陸に多いのじゃが…」とタウィリが呟くと、アオの心は強く揺さぶられた。


 アオの瞳は、まるで深い海の底を思わせるような青さで、エイストレリア大陸の神秘を内包しているかのようだった。


 タウィリの言葉は、ただの伝説や物語を超え、アオ自身の運命と深く結びついていることを示唆していた。


 アオは自らの瞳を思い浮かべながら、なぜ自分がエイストレリア大陸と関わりを持つのか、その理由を探求する旅が始まることを感じた。


 しかし、同時に、自分が本当にこの世界の危機を救えるのかという不安もよぎった。


 過去の自分には、何もできなかった。


 大切な人たちを守れなかった。


 その記憶が、アオの心に暗い影を落とした。


〈エイストレリア!?〉


 その言葉にアオの心は郷愁(きょうしゅう)と期待で溢れ、「そこにはきっと、俺のルーツがある気がするんだ。エイストレリア…」と自身の出自について語った。


 その瞬間、アオの意識は、まるで深い霧の中に迷い込んだかのように、周囲の景色から切り離されていった。


 焚き火の炎が揺らめき、タウィリとアロハの声が遠ざかる。


 そして、アオの視界は完全に暗闇に包まれた。



***



 ……暗闇の中、アオは自身の存在に混乱した。


 しかし、その混乱の中でも彼は進むことを決意し、「ここは一体どこだ? 何が起きているんだ?」と問いかける声は闇に吸い込まれていった。


 足元のざらついた感触と柔らかさを頼りに、彼は闇の中を進んだ。


 それはまるで、真夜中の浜辺を歩くかのような幻想的な感覚だった。


 遠くから聞こえてくる波の音が、彼を前へと導いた。


「まるで真夜中のビーチを歩いているみたいだ…」とアオはつぶやき、その瞬間、遠くの闇から一筋の白い光が現れた。


 しかし、その光はすぐに消え、「あれは一体何だったんだろう?」と彼は思いながら、その光を追いかけようと叫んだ。


 しかし、その光は闇に呑み込まれ、彼の視界からすぐに消えてしまった。


「待って!」とアオは叫んだが、その声も闇に吸い込まれ、彼自身も再び闇に包まれた。


 その瞬間、アオの心は不安と期待で満ち、自分がこの暗闇から抜け出すこと、そしてその光が何を示していたのかを知りたいと強く願った。


 その時、微かに声を聞いたような気がした。


「アオ、目を覚ませ」


 聞き覚えのある声だった。


 それは、まるでアオの心の奥底から呼びかけるかのように、優しく、そして力強く響いた。


彩陽(いろは)…?」


 アオは呟いた。


 それは、かつての彼の世界で、共に過ごした双子の兄の名前だった。


 アオが名前を呟いた瞬間、暗闇が掻き消え、目の前に広がるのは、見覚えのない洞窟だった。


 そして、その洞窟の奥から、不気味な声が響き渡った。


「よくぞここまで来たな、光の戦士よ」


 声の主は、闇の中からゆっくりと姿を現した。


 それは、冥界神ウィロ、冥界の女王ミルクラ、そして冥獣アカアンガだった。


「お前が、ジーランディアの運命を握る者か」


 ウィロは不敵な笑みを浮かべながら、アオに近づいてきた。


「今から、お前を試す。この試練を乗り越えられれば、お前は真の光の戦士として認められるだろう。だが、失敗すれば、お前は永遠に闇に囚われることになる」


 ミルクラは冷酷な目でアオを見下ろし、アカアンガは威嚇するように唸り声を上げた。


 アオは、恐怖を感じながらも、一歩も引かなかった。


「俺は、この世界を守るためにここに来た。どんな試練でも受けて立つ!」

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


ぜひ『ブックマーク』を登録して、お読みいただけたら幸いです。


感想、レビューの高評価、いいね! など、あなたのフィードバックが私の励みになります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ