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七色の大陸  作者: 108
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ep4:闇に溶ける屋敷~未知への誘い

 暗闇に溶け込むように佇む屋敷。


 その背後で微かに人影が揺らめいている。


 アオは心臓が高鳴るのを感じながら、一歩ずつ近づいていく。


 夜の帳に包まれたその屋敷は、まるで異世界への扉を開く鍵のようだった。


 闇を漂うトライバルな装飾は、未知との出会いを予感させる。


 微精霊の光に誘われるように、アオは一歩ずつ、この世ならぬ場所へと足を踏み入れていく。


 アオは感動で声を上げる。


「これは、幻想を結晶化させたような別荘だ!」


 屋敷の荘厳な外観は、彼の心を強く引きつけ、離さなかった。


 タウィリの声が、力強く、それでいてどこか温かみを帯びて空間を満たす。


「たじゃいまー! アロハ!」


 アオは自然とその方向を見つめた。


 少女が振り返ると、彼女の笑顔は朝日が海面を照らすように輝き、アオの心を瞬時に暖かくした。


 その笑顔は、まるで魔法のようにアオの心をつかみ、離さない。


 好奇心に満ちた眼差しでアオを見つめると、彼女は純粋な笑顔で問いかけた。


「おじいやぁーん、お帰りなさい! それで、君は一体誰?」


 彼女の声は、冬が終わりを告げ、新しい季節が始まることを予感させるかのように、周囲の空気を和やかにし、心を温かくする。


 少女は、まるで春風に乗って遊ぶ、いたずら好きな小鳥のように首を傾げ、茶目っ気たっぷりに尋ねた。


「それとも、おじいやんの新しいお弟子さんかな?」


 彼女は異世界の森から現れたかのような妖精そのもの。


 その姿は、周りを飛び交う微精霊たちをもしのぐ魅力で、アオの心を鮮やかに捉えた。


 プラチナブロンドのショートボブは太陽光を反射して輝き、深緑の瞳からは無限の知識が垣間見える。


 エルフを思わせる尖った耳は、彼女の非凡な存在をさらに際立たせる。


 首にかけたグリーンストーンの首飾りは、その神秘的なオーラを一層引き立てていた。


 生命の息吹を帯びた彼女の衣装は、色鮮やかな布と乾燥草で織り成され、微精霊たちがその周りで舞い踊る中、ただ一人、この世界に新たな光を放っていた。


 アオは照れくさそうに首を掻きながら、少女の尖った耳の先を見つめていた。


 タウィリは冒険家としての経験を生かし、孫娘に状況を説明する。


「この小僧ォはのう、ワシがリケリケビーチで偶然見つけた記憶喪失者じゃ。微精霊たちも彼に興味津々で近寄っておるわい。悪意は感じられんから、安心して接してみるとええぞ!」



 アオは、彼を取り囲む微精霊たちの輝きの中で、確かな声で言った。


「記憶がないのは、まるで白紙のページのようだ。でも、それがどうした?


 新しい物語を、今ここから書き始めるんだ。過去がどうであれ、これからの俺は自分で決めるっしょ!」



 タウィリ老は、古木のように深く、そして穏やかに語り始める。


「この森はのう、生命の神秘に満ちた聖地じゃ。貴様ァの物語が、この森に新たな命を吹き込むんじゃ。心を森に開き、その鼓動を感じてみるのじゃ!」


 タウィリの言葉に、アオの心に新たな風が吹き込み、何かが動き始めたのを感じた。


 少女は弾むような声で宣言する。


「……君と一緒にこの森を探検するの、とっても楽しみにしてるんだからね!


 だから、一緒にこの森の秘密をすべて解き明かしましょう!」


 微精霊たちが舞い踊る深い森の中、一人の少女が興味津々な眼差しで少年を見つめていた。


 少女の名前はアロハ。


 彼女の視線の先には、記憶を失ってしまった少年、アオがいた。


「ねぇ、私のこと、もっと知ってほしいな。アロハ、私の名前。親からもらった、とっても大切な名前なんだ。


 だから、アロハって呼んで。記憶を失ったとしても、私の名前だけは忘れないでね!」


 彼女はそう言って、星空のように輝く笑顔を見せた。


 アオは緊張を振り絞り、精一杯の声を弾ませた。


「よ、よろしく!」


 その瞬間、アオの心はアロハの笑顔に包み込まれ、新たな希望が芽生え、未来への道が開かれたように感じた。


 月明かりに照らされた古風な屋敷は、幻想的な夢の舞台のよう。


 圧倒的な魅力を放ち、アオの心を捉えて離さなかった。


 タウィリは、宇宙の調和を象徴するような温かみのある声でアオを迎えた。


「若き旅人よ、このジーランディアの地に足を踏み入れたことを歓迎するぞ。我が屋敷は、夢と希望の宿る場所じゃ。ここで、心の疲れを癒やし、新たな力を得るがええ!」


 タウィリは温厚な笑みを浮かべ、アオを見つめる。


 その眼差しは深い愛情に満ち溢れ、アオの心を優しく包み込む。


 タウィリは見た目とは裏腹に温かい魂の持ち主であり、アオの未来を照らす灯火のような存在だった。


 タウィリは、かつて世界を救った英雄だった。


 しかし、愛する者を失った悲しみから、この静かな森に隠遁(いんとん)していた。


 アオの出現は、彼の心に眠っていた情熱を呼び覚ました。


 彼はアオと共に、再び世界を救うための冒険に旅立つことを決意する。



「えっと、君と話すと、心がポカポカするんだ。まだ出会ったばかりでおかしいかな?


 でも、君がそばにいると、何だか安心できるの……」


 アロハの優しい言葉がアオの心を温めているその時、ふとした動揺が彼を襲った。


 静かな空間に溶け込むような地下室からの微細な異変が、彼の安堵を一瞬で霧散させたのだ。


 地下室の扉がかすかに揺れる音が、静けさをかき乱し、アオの心に不安の種をまいた。


〈夢だったのか、それとも…?〉


 不安と好奇心が入り混じる。


 幻か現実か。アオは目を疑い、心臓が早鐘のように高鳴る。


 再び扉を見つめるも、揺らめきは消え、静寂だけが戻っていた。


 何が起こったのか、確信が持てない。


「夜が深まると、この森は漆黒に染まり、魔獣たちがその牙を剥く時がくるのじゃ。だが、恐れることはない。ワシの屋敷は、結界のもと、安寧(あんねい)の港じゃ!


 さあ、ホットな食事と温かい笑顔が待っておるぞ。ところで、今日のディナーは何じゃ?」


 タウィリの言葉に頷き、アオは深呼吸をする。


 不安を押し殺し、心を落ち着かせようとする。


 アオの手首に巻かれた透明な束縛が、かすかに光を放ち始めた。


 それはまるで、アオの心のざわめきに反応しているようだった。


 その屋敷は静かに月明かりに照らされ、その美しい姿は(かす)かなざわめきとともに、不思議な魅力を放っていた。


「ほんとに、こんな美しい森に魔獣が出てくるなんて、信じられない!」


 アロハの言葉に、タウィリは厳かな表情を崩さずに答えた。


「この屋敷には魔獣除けの結界が張られておるから、アロハは心配しなくても大丈夫じゃよ!」


 そんなやり取りを経て、彼らは美しい月明かりの元で、静謐(せいひつ)な一時を楽しんだ。


 異世界の七色の大陸では、人々は『魔獣』という存在の噂におののいていた。


 しかし、その恐れも、この温かな屋敷の壁が阻むかのようであった。


 アオは手首の光が消え、安堵のため息をついた。


〈この光は、俺を導いてくれるのかもしれない…〉


 アロハは鮮緑色に染められた唇を尖らせ、「魔獣なんて、一度でいいから見てみたいもんだよ!」と子供のように地団太を踏んだ。


 タウィリは彼女の好奇心を誉め、「魔獣というのはのう、我々が警戒を怠らない理由となる存在じゃ。じゃが、見たいというのなら、機会があれば見せてやろう。ただし、安全な距離からじゃ!」と語った。


 アロハの元気な笑顔に、タウィリは心を和ませ、「……魔獣には、きっといつか出会えるはずじゃ。さあ、宴の始まりじゃ!」と声を上げた。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


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