表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
七色の大陸  作者: 108
17/17

ep17:星のマフラーの秘密

 森の熊さんの後を付いて行くアオとアロハ。


 アオはマシュマロリングをぷよぷよと弾みながら、痛みを紛らわせていた。


 それでも、痛みは痛みで、鋭い痛みが時折顔を歪ませる。


 一方、アロハは星の熊ちゃんと小さな手を繋ぎながら歩いていた。


 彼らの手は暖かさを共有し、そのつながりが心を落ち着けていた。


 星の熊ちゃんがふと振り返り、アロハとアオに言った。


「アロハ姉ちゃん、アオ兄ちゃん、なんでこんな山奥に来たの?」


 アロハは彼の瞳を見つめて、優しく答えた。


「おじいやんの怪我を治すために『星の花』を探しているんだよ!」


 星の熊ちゃんは一瞬黙り込み、次に言った言葉は子供らしさを残しつつも、意味深だった。


「星の花か…それは、大切な人を救うための旅なんだね!」


 森の熊さんはその言葉に一瞬だけ反応し、目を細めた。


 しかし、すぐに表情を戻し、そのまま歩き続けた。


 やがて、彼らが巣穴に到着すると、アオとアロハは息を呑んだ。


 目の前に広がる光景は、想像を超える巨大な地下都市のような空間だった。


 無数の部屋が広がり、そこが熊さんたちの生活空間であることを示していた。


 巣穴の中には、熊さんたちが自ら作り上げた美術品が展示されており、それ自体が一つの美術館のようだった。


 アオとアロハはその全てに目を奪われ、感嘆の声を上げた。


「こんな所が、こんな山奥に…!」とアオが声を震わせた。


 アロハも目を輝かせて、「すごいね、星の熊ちゃん」と感嘆の声を上げた。


 そして、その中から一組の年老いたコアラ爺さんと熊婆さんがゆっくりと前に出てきた。


 コアラ爺さんの深く刻まれた皺が彼の顔を彩り、そこからは長い人生の知恵と経験を感じさせた。


 彼の目は驚きに広がっており、その瞳は彼が目の前の現象を信じられないほど喜んでいることを物語っていた。


 荒々しい黒髭が彼の口元を覆い、その存在感が彼の個性を際立たせていた。


 かつては森の賢者として知られ、その深い知識と洞察力で多くの若者を導いたコアラ爺さん。


 しかし、愛する妻を病気で亡くして以来、心を閉ざし、人里離れたこの場所でひっそりと暮らしていた。


 一方、熊婆さんは、皮膚がたるむほどに年を重ねていたが、その目は驚愕の表情で、生命力に溢れていた。


 彼女の髪は白髪で、胸元まで長く伸び、その髪は彼女の年月を語っていた。


 彼女の全身には、色とりどりのタトゥーが施され、それぞれが彼女の人生の軌跡を描いていた。


 若かりし頃は、森の守り神として崇められ、その勇敢さと優しさで多くの人々を救ってきた熊婆さん。


 しかし、最愛の息子を事故で失って以来、悲しみに暮れ、この地下都市に引きこもっていた。


 二人は手を繋ぎ、杖を突きながらゆっくりとアオとアロハに近づいてきた。


 そして、コアラ爺さんが穏やかな声で言った。


「二人の勇者よ、星の熊ちゃんを救ってくれてありがとう。あなた達の勇気に感謝する!」


 その言葉に続いて、周りにいた熊さんたちとコアラたちは一斉に拍手を送った。


 その瞬間、楽しい音楽が響き始め、それは「コアラのマーチ」だった。


 アオはその光景に驚き、夢の中なのかと自分のほっぺをつねったが、目覚めなかった。


 それは夢ではなく、現実だったのだ。


 一方、アロハはその音楽に体を揺らし始め、次第にそのリズムに合わせて踊り始めた。


 アロハの動きは自由で楽しげで、その姿は見ている人々にも楽しさを伝えていた。


 彼女の笑顔は輝き、その笑顔は周りの人々にも広がっていった。


 コアラ爺さんと熊婆さんに向かって、アオは微笑みながら言った。


「星のように輝く熊ちゃんを救えたのは、家族の愛情と勇気のおかげです!」


 その言葉に、星の熊ちゃんはアオの方にゆっくりと近づいてきた。


 彼の目はアオを見つめ、彼の手を引っ張った。


「僕が手当てしてあげるよ。ついてきて」と星の熊ちゃんはアオに言った。


 二人は森を抜け、巣穴の中に入ると、目の前には黄金色に輝く滝が現れた。


 その滝は地上からダイナミックに落ちてきており、その光景にアオは驚愕した。


 しかし、その驚きはすぐに甘い香りに変わり、アオの顔には驚きとともに喜びの表情が浮かんだ。


「もしかして、この滝は蜂蜜なのかな?」とアオは星の熊ちゃんに尋ねた。


 星の熊ちゃんはアオの言葉に頷き、その顔には満足そうな笑みが広がった。


「そうだよ、これが僕たちの秘密の蜂蜜滝なんだ! この蜂蜜には、傷を癒やし、毒を中和する特別な力があるんだよ。さあ、アオ兄ちゃん、滝つぼに入ってごらん。きっとすぐに良くなるよ!」と彼はアオに教えた。


 アオの瞳は驚異と歓喜で溢れ、その顔は純粋な喜びでいっぱいだった。


「リアルかい、星の熊ちゃん! ありがサンクス!」とアオは喜びの声を上げた。


 アオは星の熊ちゃんの後について、蜂蜜の滝つぼへと足を踏み入れた。


 黄金色の蜂蜜が全身を包み込み、その温かさと甘い香りがアオの心を満たした。



 一方、アロハは地下都市に魅了され、森の熊さんに案内されて、様々な部屋を見て回った。


 そこは、図書館、工房、音楽堂、そして食料庫など、多岐にわたる施設が整っており、まるで一つの文明が築かれているようだった。


 壁には美しい絵画や彫刻が飾られ、床には色鮮やかな絨毯が敷かれていた。


 図書館では、歴史書や植物図鑑、物語など、様々な本が所狭しと並べられており、アロハは星の花に関する手がかりを見つけようと夢中になってページをめくった。


 工房では、職人たちが木工細工や金属細工、織物など、様々な技術を駆使して作品を作り上げていた。


 アロハは、彼らの熟練した手さばきに見惚れ、その技術の高さに感嘆した。


 音楽堂では、美しい歌声や楽器の演奏が響き渡り、アロハは音楽の力に心を癒された。


 食料庫には、新鮮な果物や野菜、穀物などが豊富に蓄えられており、アロハは地下都市の自給自足システムに感心した。


 アロハは、地下都市の住民たちが、互いに協力し合い、支え合いながら生活している様子を見て、心温まる気持ちになった。


「ここは本当に素晴らしい場所ね、森の熊さん。みんなが幸せそうに暮らしている」とアロハは感動した様子で言った。


 森の熊さんは誇らしげに頷き、「そうだよ、アロハちゃん。私たちはここで、助け合いながら生きているんだ。


 そして、この地下都市は、私たちにとってただの住処じゃないんだ。


 それは、私たちの祖先が残してくれた、大切な宝物なんだ」と語った。


 アロハは森の熊さんの言葉に心を打たれ、この地下都市の秘密をもっと知りたいと思った。


 そして、彼女は森の熊さんに、この地下都市の歴史や、星の花との関係について尋ねることにした。


「森の熊さん、教えて。この地下都市はどうやってできたの? そして、星の花とどんな関係があるの?」


 その瞬間、森の熊さんの表情が少しだけ変わった。


 それは、遠い過去を思い出すような、どこか懐かしげな表情だった。


 ちょうどその時、手当てを終えたアオと星の熊ちゃんが、二人のもとへ戻ってきた。


 アロハは、森の熊さんの表情の変化に気づき、質問を続けるのをためらった。


 しかし、彼女の瞳には、まだ知りたいという強い意志が宿っていた。


 森の熊さんは、アロハの瞳を見つめ、静かに口を開いた。


「アロハちゃん、あなたも星の花を探しているのね。それなら、あなたたちに、この地下都市の秘密を教えましょう」


 その言葉に、アオとアロハは、期待と緊張が入り混じった表情で、森の熊さんを見つめた。


「さあ、こっちへいらっしゃい。暖炉のそばで、ゆっくりとお話をしましょう」


 森の熊さんは、そう言って、アオとアロハを暖炉のある部屋へと案内した。


 その部屋は、暖炉の火が優しく照らし、壁には美しいタペストリーが飾られていた。


 アオとアロハは、暖炉の前に置かれた柔らかい毛皮の椅子に腰掛け、森の熊さんの話を聞く準備をした。


 アロハはその甘い香りを嗅ぎ、顔をほころばせた。


「この甘い香り、ホニポーロだ!」


 森の熊さんはアロハの言葉を聞き、うなずいた。


「そうだよ、この蜂蜜、大切に使ってね。傷がある時や、体力が落ちてきた時には特に効果的よ。そして、舐めると、その味は最高だよ!」


 そして、森の熊さんは手元の壺に蜂蜜を入れ、アオに差し出した。


「これを持っていきな。旅の途中で傷をつけたら、これを使ってみてほしい」と彼女は優しく言った。


 星の熊ちゃんは、アオの腕にユーカリの葉に蜂蜜をのせて、アオの腕を優しく蜂蜜で塗った。


 その優しい動きと温かさは、アオの心を癒し、疲れを吹き飛ばした。


「ありがサンクス、星の熊ちゃん」とアオは感謝の言葉を述べた。


「アオ兄ちゃん、大丈夫だよ。これで傷はすぐに治るからね!」と、星の熊ちゃんはアオに向かって微笑んだ。


 その言葉は、彼がアオを気遣い、その傷が治ることを心から願っていることを伝えていた。


 アオの腕の痛みが見る見るうちに引いてきた。


「こ、こりゃー、本当に痛みがなくなったっしょ! リアルにすごい!」と、アオは驚きと感謝の表情を浮かべた。


 アロハはアオの反応を見て、笑顔で言った。


「それは良かったね。森の熊さんたちのおかげだよ!」


 その言葉に、星の熊ちゃんも呟いた。


「アオ兄ちゃん、これからも大丈夫だよ。僕たちがついているからね!」と彼はアオに励ましの言葉を贈った。


 森の熊さんは優しく微笑みながら、アオに言った。


「あなたたちの旅が、これからも順調でありますように!」


 その言葉は、彼女の心からの祈りとも言えるものだった。


 そして、アロハが彼女の美しい歌声で「ハーモニック・ブレス」を歌い始めると、周囲の空気が微妙に変わった。


 その歌声は、自然界のエネルギーを呼び覚まし、聴く者に新たな力を与える力を持っていた。


 その歌声は優しく、暖かく、そして力強く、それはまるで森全体を包み込むようだった。


 さらに、星の熊ちゃんの首元に咲く星の花が、歌声に呼応するように輝きを増し、その光がアロハの歌声と共鳴し、より強力な癒しのエネルギーを生み出していた。


 その歌声が響き渡ると、アオの傷口は完全に閉じ、彼の体には新たな活力が満ちた。


「アロハサンクス。そして、あなたたちのおかげで、俺はまた新たな旅を続けることができるっしょ!」と、彼は感謝の言葉を述べた。


 森の熊さんが星の熊ちゃんに向かって言った。


「星の熊ちゃん、星のマフラーを外しなさい」


 星の熊ちゃんは驚きの表情で彼女を見上げ、「え? でもなんで?」と尋ねた。


 森の熊さんは微笑みながら、「だって、ママも熊ちゃんの星のマフラーを一度巻いてみたいのよ」と答えた。


 星の熊ちゃんは、「うん、いいよ!」と言い、星のマフラーを外すと、その首元からは透明な茎が伸び、その先端には美しい星の花が咲いていた。


 実は、マフラーを巻く度にかすかに花の香りが漂っていたのだと、アオは思い出した。


 その香りが、今ここで鮮明に感じられた。


 その花は、星空に輝く星々のような美しさを放ち、花びらは純白で、中心には深い青色の模様が描かれていた。


 その模様はまるで星座のようで、見るものを夢中にさせる神秘的な魅力を放っていた。


 花の姿は、まるで異世界から訪れた奇跡のようで、美しさには言葉を失うほどだった。


 アオとアロハはその光景を見て、思わず息をのんだ。


「これが星の熊ちゃんのマフラーの正体だったんだ」とアオは納得した。


 森の熊さんは、そっと星の花に触れ、目を閉じて深呼吸をした。


「この花は、遥か昔、星たちが地上に降り注いだ時に生まれたと言われているの。私たちの祖先は、この花を大切に守り、その力を借りてこの地下都市を築いたのよ。


 そして、星の花は、純粋な心を持つ者に力を貸してくれる。星の熊ちゃんは、その純粋さゆえに、星の花に選ばれた特別な存在なのよ」


 森の熊さんは、優しく微笑みながら、星の花を静かに見つめた。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


ぜひ『ブックマーク』を登録して、お読みいただけたら幸いです。


感想、レビューの高評価、いいね! など、あなたのフィードバックが私の励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ