表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
七色の大陸  作者: 108
15/17

ep15:森に響く咆哮

夕暮れ時、森は変わりゆく空の下で神秘的な魅力を放っていた。


空は金色から深紅へと移ろい、やがて夜の深い青へと溶け込む。風に揺れる葉の間から差し込む光は、まるで森そのものが息をしているかのようにきらめく。小鳥のさえずりが徐々に遠ざかり、森の静寂が支配する。だが、その静けさの奥には、隠れた魔獣たちの気配がじわりと漂っていた。


アオ と アロハ は、夕日を頼りに森の奥深くを目指す。枝や蔓に行く手を阻まれ、足元の土は湿り、苔が滑りやすく光る。しかし、未知への期待が二人の心を前へと押し出す。


「アロハ…今日こそ、星の花を見つけられるかな?」


アオの声には、希望と不安が混ざり合い、揺れる光のように不安定だった。


アロハ は微笑みながら彼の肩に手を置く。


「大丈夫、アオくん。必ず見つけるよ。おじいやんのために、そして自分自身のために、私たちは戦っているんだから!」


その言葉は心の奥に暖かく染み込み、アオ は再び立ち上がる。二人は手を取り合い、星の花を探して森の奥へと進む。


【不気味な静けさと魔獣の気配】


森の奥は、深緑の葉が夕日に赤く染まり、不気味な静けさが辺りを包む。枝が折れる音、遠くで何かが動く気配が、二人の神経を研ぎ澄ます。


アオ は思わずアロハ の手を握りしめた。その手は小さくても力強く、彼に勇気を与える。


その先には、魔獣たちが静かに身を潜めていた。姿は狼に似ているが、通常の狼の比ではない。ほぼ三メートルに達する巨大な体。森の住人たちから恐れと尊敬を集めるウルフィ族である。


月明かりの中で佇む二匹のウルフィは、まるで森の守護者そのものの威厳を放っていた。


紺色の獣毛と深紅の瞳を持つ者、銀色の毛並みに氷のように冷たい青い瞳を持つ者。獰猛さと威厳が同居し、口から滴る涎が地面に落ちる音すら恐怖を煽る。


紺色のウルフィが舌なめずりし、低く唸る。


「今宵は小熊鍋にしよう」


小熊の「キュウキュウ」という悲痛な鳴き声が森中に響き渡る。ウルフィたちはその声に反応し、視線が二人の隠れる場所へと向けられた。


銀色のウルフィが声を上げる。


「今宵の晩餐は、小熊と人間鍋に変更だ! ダンデリオン族長に、これ以上の貢物はないだろう!」


その声は森に深く刻まれ、二人の胸に重くのしかかる。


【驚きと理解】


狼の口が動く。


「我々ウルフィ族の領域に人間が入ってくるとは、珍しい…」


アオ は目を見開き、言葉を失う。


「えっ、狼が…喋ったっしょ!?」


アロハ は微笑んで答える。


「驚かなくて大丈夫、あれはウルフィよ」


「ウルフィって、何?」


「ウルフィは特別な存在。狼と人間の言葉を話せるの。君の首飾り、ポウナム が眠る力を目覚めさせたのかもしれない。太古の昔から、私たちの先祖はポウナムを使い、自然の精霊たちと心を通わせてきた。首飾りを身につけることで、その力の一部を受け継ぐことができると信じられている」


アオ はうなずく。恐怖と、タウィリ や小熊 を助けたいという強い意志が胸を締めつける。


「アロハ、どうしよう…怖い。でも、このままじゃ見過ごせない」


アロハ は肩に手を置き、穏やかに励ます。


「大丈夫。私たちなら、きっと乗り越えられる。ポウナム の力もある。きっと、何かできるはずよ」


アオ は深呼吸し、決意を新たにする。


「そうだね、アロハ。一緒に頑張ろう!」


【ウルフィとの交渉】


二人はウルフィに向かい、声を震わせながら呼びかけた。


「待ってください、ウルフィ族の皆さん!」


紺色のウルフィが低く呟く。


「人間が話しかけてくるとは…しかも、我々の言葉を理解している」


アオ は落ち着いて続ける。


「小熊を助けに来ました。どうか解放してください」


紺色のウルフィが冷たく答える。


「この森では弱肉強食が自然の摂理。小熊 は我々の食料となる運命だ」


アロハ が制止し、懇願する。


「私たちは掟を尊重します。しかし、この子はまだ生きるべき命です」


銀色のウルフィが答える。


「簡単には解放できぬ。我々には掟がある」


アオ は尋ねた。


「では、どうすれば小熊 を助けられるのでしょうか?」


紺色のウルフィが言った。


「もし、お前たちが我々を倒せれば、小熊 を解放しよう」


アオ は静かに決意を示す。


「戦いは望まない。ただ、タウィリ と小熊 を助けたいだけだ!」


ウルフィたちは笑い声をあげる。


「人間が我々ウルフィに立ち向かうとは、面白い!」


その笑いは威圧と嘲笑が入り混じり、森の空気を震わせた。しかし、アオ の決意は揺るがない。


【ポイと光の戦い】


アオ は腰に巻いたポイ に手を伸ばす。森が一瞬静寂に包まれ、彼の意志が全てに伝わる。


アロハ は微笑み、首飾りの光を握りしめ、二人は手を取り合い前に進む。


目の前のウルフィは銀色に輝き、冷徹な眼差しで二人を捕らえる。鋭い牙からは滴る涎。


「何を言おうと、熊も人間も晩餐になる!」


アオ はポイ を握りしめる。


「俺たちは、ただ食事になるためにいるわけじゃない!」


ウルフィの攻撃が迫り、アオ は身体をひねり光で反撃。ポイ がウルフィの目を眩ませ、頭を叩く。


「くそっ、人間風情が…!」


ウルフィは怒り狂うが、アオ は冷静に光を操り攻撃をかわす。


【小熊救出と希望】


アオ の脳裏には倒れたタウィリ の光景がフラッシュバックする。


「絶対に諦めない!」


ポイ から放たれる光がさらに増幅し、ウルフィの動きを封じ込めた。


アロハ の祈る声、首飾りの光が二人を包む。


「うおおおおお!」


ポイ を振り下ろすとウルフィの頭に炸裂、小熊 が転がり落ちる。


アオ は素早く抱き上げ、アロハ の元へ駆け寄る。


「アロハ、小熊は無事だ!」


アロハ は涙を浮かべ微笑む。


「よかった…本当に良かった…」

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


ぜひ『ブックマーク』を登録して、お読みいただけたら幸いです。


感想、レビューの高評価、いいね! など、あなたのフィードバックが私の励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ