ep14:風と剣の交錯~タウィリ対トゥマタ・ウェンガ
「さあ、始めようか、タウィリ」とトゥマタ・ウェンガが言葉を投げかけると、彼の剣が静かに振り上げられた。
その瞬間、空気が張り詰め、一触即発の状態が広がった。
対するタウィリは静かに頷いた。
「貴様ァの力、見せてもらおう!」と呟きながら、天を見上げた。
すると、空が激しく揺れ始めた。
雲が集まり、風が吹き荒れ、その風が剣と杖の間に絡みつき、ふたりの力を引き立てた。
トゥマタ・ウェンガの剣は黒鉄で作られ、その剣身は光を反射し、まるで闇夜を切り裂く稲妻のように輝いていた。
しかし、その剣はタウィリの操る強風に阻まれ、進行を遅らせられた。
トゥマタは風を切り裂き、再びタウィリに襲いかかった。
「どうだ、この力! ストラクション・ゴッド!」と叫んだトゥマタの剣からは、神々しい光が放たれた。
その光は、大地を揺るがし、周囲の木々をなぎ倒すほどの威力を持っていた。
しかし、タウィリは冷静さを失わず、杖を高く掲げると、「アトゥア・プロテクション!」と唱えた。
すると、杖の先端から緑色の光のバリアが展開され、トゥマタの攻撃を完全に防ぎきった。
しかし、タウィリはその光を見逃さなかった。
瞬時に身をひねり、その光から逃れた。
その光はタウィリの顎髭を掠め、髭が空中に舞い散った。
しかし、それ以上のダメージはなかった。
その時、地上にいたアオは何もできずにただ見ているだけだった。
〈タウィリさん、頑張って…〉と心の中で呟いたが、その声は届かなかった。
一方、空中の戦闘は続き、タウィリは徐々に押され始めた。
トゥマタ・ウェンガの剣の攻撃は次第に激しさを増し、タウィリはその攻撃をかわすのがやっとだった。
「おじいやん、助けに行く!」とアロハが叫んだその瞬間、彼女の体は神秘的な緑色の輝き、グリーンフラッシュに包まれた。
アロハの脳裏には、幼い頃、タウィリに抱きしめられながら、優しく語りかけられた記憶が蘇った。
「アロハはワシの宝物じゃ。何があっても、アロハを守る」
その言葉は、アロハの心に深く刻まれ、彼女にとってタウィリはかけがえのない存在となっていた。
今、愛するおじいやんが危機に瀕している。
アロハは、迷うことなく、その身を挺してタウィリを守ろうと決意した。
その輝きは、意志と決意を強く表していた。
アロハの目は固く閉じられ、表情は一瞬で真剣さと覚悟に変わった。
その勇ましい姿は戦士のようだった。
そして、アロハは力強く地面を蹴り、空に向かって飛び出した。
彼女の姿は地上から急速に遠ざかり、まるで矢のように天に向かって進み続けた。
しかし、その動きを見たトゥマタ・ウェンガの表情は一変した。
彼の深い琥珀色の目が、驚きと興味深げな輝きを放った。
トゥマタはアロハに向けて剣を振り下ろした。
その剣は黒鉄で作られ、先端が二股に分かれた大剣「ツインフォース・オブ・カオス」だった。
彼の剣の振る舞いは、まるで混沌とした力が解き放たれるかのようで、存在感は圧倒的だった。
その一方、地上に残されたアオは、その光景を目の当たりにして驚愕した。
「アロハ、だめだ! 戻ってきて!」とアオは叫んだ。
「おじいやーん!!」
アロハの心から絶叫が響き渡り、それは空へと響き渡る。
しかし、その叫び声は、一番伝えたいアロハの大切な人、タウィリには届かず、語りかけるのはただ空だけだった。
アロハは前方を見据え、その視線は空を舞う鳥のように軽やかにタウィリという名の戦士、彼女にとっては大切なおじいやんである彼の元へと舞い上がっていった。
彼女はまるで風を切る翼を持っているかのように、重力を感じさせない軽やかさで空中を進んでいった。
地上を歩むことの重さを忘れ、アロハは自由に空を舞い、前へと進んでいった。
その時、空気が凍りつくような音が響き渡った。
タウィリが、アロハを庇うように、自身の体を剣に向けて突き出した。
トゥマタ・ウェンガのツインフォース・オブ・カオスは、タウィリの胸を貫き、彼の体を突き抜けた。
その瞬間、タウィリの口からは血が噴き出し、その場に倒れ込んだ。
体は地面に打ちつけられ、その衝撃がアロハの体を揺さぶった。
「おじいやん…」と、アロハの声は泣きながら叫んだ。
その声は、心から絞り出されるような、切なくも悲痛なものだった。
しかし、タウィリの目はまだ、彼の前に立つ巨大な存在、ツマタ・ウェンガを見つめていた。
その瞳は、未だに彼の戦士としての意志を示しており、彼の生命力がまだ衰えていないことを示していた。
トゥマタはタウィリにゆっくりと視線を向け、深い琥珀色の目には何かを終えた安堵と共に新たな決意が宿っていた。
「オレの復讐は終わった」と、静かに言った。
それは、彼の内に秘められた闘志と痛み、彼自身の過去への区切りを告げる言葉だった。
しかし、同時に、長年の憎しみが消え去ったことで、心にぽっかりと穴が開いたような虚無感も感じていた。
そして、トゥマタはアロハに向かって目を向けた。
「タウィリを救いたければ、星の花を探せ!」と言った。
その言葉はミステリアスで、アロハの目には新たな輝きと期待が宿った。
最後に、トゥマタはアオに目を向け、その青い瞳をじっと見つめた。
「その青い瞳……オレの勘違いかな……」と、意味深な言葉を残し、去っていった。
トゥマタの言葉はアオに深い思索を呼び起こし、表情は一瞬で真剣さに変わった。
残された森は、トゥマタ・ウェンガの去ったあとに静寂が広がり、空気感を濃厚に感じさせた。
森の葉々が風に軽く揺れ、小鳥たちの鳴き声が遠くから聞こえてくる。
アオの目に映ったのは、苦痛に歪んだタウィリの姿だった。
その光景は見るに堪えないほど痛々しく、彼の心は悲しみに揺さぶられた。
「タウィリさん、どうしたらいいの?」と、アオの声は震えていた。
予想外の事態に直面し、彼は途方に暮れていた。
タウィリは、浅い息を繰り返し、その度に肩が小さく震えた。
顔色は土のように青白く、額には脂汗が浮かんでいる。
時折、胸を抑えつけ、呻き声を漏らす。
その姿は、まるで枯れかけた大樹のようだった。
毒は確実にタウィリの体を蝕んでいた。
呼吸はさらに荒くなり、意識も朦朧とし始めていた。
それでも力を振り絞り、アオとアロハにかすれた声で伝えた。
「トゥマタの…ツインフォース・オブ・カオスに…突かれてしまった…星の花が…あれば…毒も…治せる…」
その言葉を聞いたアロハは、アオと同じく驚きと不安で顔を歪めた。
それでも彼女は強くなろうとした。
「大丈夫。私はできる。アロハは強いのだから」
アロハは、自分の歌声に込められた力に希望を託した。
彼女の歌声は、「ハーモニック・ブレス」と呼ばれ、心や体の疲れを癒し、エネルギーを回復する力があった。
アロハは深呼吸し、目を閉じた。
そして、静かに歌い始めた。
彼女の歌声は、澄んだ泉のように清らかで、優しい陽の光のように温かかった。
歌声は、アオとタウィリの心にも響き渡り、彼らの不安や悲しみを優しく包み込んだ。
……しかし、今回の毒に対してはその力も及ばなかった。
タウィリの苦しむ姿を見て、アオはたまらず声を上げた。
「アロハ、早く星の花を見つけないと…!」
焦りと不安がアオの心を支配し始めた。
「アオくん、心配しないで。必ず星の花を見つけるから」
アロハは、アオの手を握りしめ、力強く頷いた。
二人はタウィリを安定した状態にしてから、急いで森へと向かった。
アロハは森の中心に立ち、鳥たちと微妖精たちと会話を交わした。
彼女の周囲にはカーディナルの深紅の羽根、金鳥の金色の羽根、青鳥の空色の羽根など、色とりどりの鳥たちが集まり、彼らのさえずりが森全体に響いた。
そのさえずりは高く清らかで、アロハの心に直接響き渡り、彼女はそのさえずりを通じて、星の花の在り処を尋ねた。
しかし彼らの答えはあいまいで、「タプナの森とかいぶつの森の間のどこか」としか教えてくれなかった。
「もう少し詳しく教えてくれないかな?」
アロハは鳥たちに語りかけた。
すると、一羽の老いたキーウィが、ゆっくりとアロハに近づいた。
「星の花は、太陽と月の光が交わる場所でしか咲かない。その場所は、タプナの森の奥深くにある、古代の祭壇の上。祭壇の周りには、七色の石が置かれている。その石が、星の花への道標となるだ!」
アオは、アロハが鳥たちと会話する姿を見て、改めて彼女の不思議な力に驚かされた。
同時に、アロハの優しさと芯の強さに、心惹かれるものを感じていた。
一方、微妖精たちは透明な翼をひらひらとさせてアロハの周りを飛んでいた。
彼らの声は小さく、しかしはっきりとした声で、アロハに星の花の在り処を教えてくれた。
しかし彼らもまた、その場所は非常に危険で、「命がいくつあっても足りない」と警告した。
アオは、微妖精たちの言葉に不安を覚えたが、同時に、星の花を見つけ出すことへの決意を新たにした。
「アロハ、行こう。タウィリさんのために、必ず星の花を見つけ出すんだ!」
アオは、アロハの手を握りしめ、力強く言った。
アロハは、アオの言葉に頷き、二人は手を取り合って森の奥へと進んでいった。
二人の間には、固い絆と信頼が生まれていた。
その絆が彼らを星の花へと導くことになる。
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