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七色の大陸  作者: 108
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ep12:ポウナムの光

 かつての世界の記憶が、遠くの星々のように瞬き、やがて静かに消えていく。


 その瞬きは、新たな運命の舞台となる広大な異世界――七色の大陸を見つめるアオの瞳に反射していた。


 アオは、古代の知恵を伝える者、タウィリと出会い、民族的な儀式に立ち会うこととなった。


 同席するのは、タウィリの孫娘アロハ。彼女はアオの新たな冒険の仲間となる存在だった。


 「我が眼前に立つ者よ、貴様ァに渡したいものがもう一つある!」


 タウィリの声が屋敷中に響き渡る。


 その手には透き通るクリスタルのステッキが握られ、輝きはまるで星屑が凝縮されたように煌めいていた。


 アオは思わず息を呑み、自然と畏怖の念を抱かざるを得なかった。


 タウィリはステッキを慎重にテーブルに置き、自らの鎖骨に巻かれたグリーンストーンをアオに差し出す。その瞬間、空気がゆっくりと流れるように感じられ、時間までもが神秘的に歪むようだった。


 アオの心に疑問が湧く。

 〈あの宝石は、クリスタルステッキに付いているものと同じだ。それに…アロハが身に付けているペンダントにも似ている…〉


 疑問は瞬時に彼の心を満たし、視界までもが淡い光で包まれた。


 「我が手から、貴様ァを新たな世界へ迎え入れるポフィリを、今、ここに行う!」


 タウィリの声が再び屋敷を震わせる。


 手渡される宝石は、アオが秘める未知なる力を覚醒させるとされる。古代の力が宿り、彼の内なる力を引き出す鍵――それがポウナムだった。


 「アオくん、そのポウナムは大切なものだよ。新たな力を覚醒させ、君の未来を照らす光になるんだ」


 アロハの声が優しく響き、アオの胸に深く刻まれる。希望と期待が静かに育まれた。


 だが、同時に不安も湧き上がる。


 「…タウィリさん、その儀式って、痛いこととか、怖い魔獣が近づくこととか、そういうのは…ないよね?」


 声は小さく、心の奥の緊張が滲んでいた。


 タウィリはくすりと笑い、

 「大丈夫じゃ、小僧ォ。心配することは何もないんじゃからな」

 と、おどけながらも優しさに満ちた声で答える。


 その言葉とともに、神秘的な儀式が始まった。


 タウィリの体から炎のような光が放たれ、赤い閃光がアオを包み込む。


 「おりょ!? 顔面凶器のタウィリさんがドアップだけど、全然怖くないっしょ!」


 驚きと興奮が入り混じるアオ。額と鼻が光に触れた瞬間、尾骶骨あたりがじんわりと温かくなり、その感覚は全身に広がった。心に深い安らぎが訪れる。


 「――んん!? 古傷がジンジンして癒される。この儀式、最高に素晴らしい!」


 その後、タウィリはアオの首に神秘のグリーストンの首飾りをかけた。触れた瞬間、雷神の如き圧倒的なエネルギーが体を駆け巡る。


 「すごい、タウィリさん! これがグリーストンの力か!」


 視界は鮮明に、聴覚は研ぎ澄まされ、世界が新たに生まれ変わったように感じられた。


 「体中がパワーで満ちて、何でもできる気がする…でも、本当に代償はないのかな? 少し怖い気もする」


 新たな力に心は満たされるが、不安もまた微かに残った。


 アロハは儀式を見つめ、その澄んだ瞳にタウィリの万七とアオの万七が共鳴する神秘的な光景が映し出されていた。


 「ねえ、おじいやん。アオくんの万七がこんなに反応したのは、ホンギのおかげ? それともポウナムの力?」


 タウィリは愛情を込め微笑む。

 「さすがはワシのアロハじゃ。その感じたことは両方とも正解じゃよ」


 丸い手でアロハの頭を撫でると、彼女は自信に満ちた笑顔で応えた。

 「これは、大好きなおじいやんの『万術・龍・塾』のおかげだよ! 本当に感謝してる」


 一方、アオは会話の意味が理解できず困惑していた。

 「タウィリさん、マジュツリュウジュクって、何のことなんだ?」


 タウィリは優しく説明する。

 「マジュツとは、神や自然界から万七を受け取り、その力を使うこと。龍は動植物や精霊と交信する神聖な獣。塾は学びの場、アカデミーのようなものじゃ」


 アオの瞳は興奮で輝き、アロハも微笑む。

 「塾はわかるけど、龍って…架空の生物だよね? でも、この世界に実在するなら、直接見てみたいな」


 「…話はここまでじゃ。万術・龍・塾の詳細は、ワイテマへの道中で教えよう。アロハも早く魔獣に会いたくて待ちきれんのじゃ」


 アロハは腕を引き、期待で目を輝かせる。その姿を見てアオも微笑んだ。

 〈アロハ、本当に元気だな。見ているだけで楽しくなる〉


 無邪気な光景は、アオにとって眩しい光。だが同時に、彼女を守る責任も感じる。


 「じゃったのう、のんびりしておると『魔獣・パトゥパイアレへ』に冥界へ引きずり込まれるぞ」


 その言葉に二人は身を引き締める。これからの冒険の大きさを、心で予感していた。


 「ふぉっふぉふぉ、出発のベルが鳴ったのじゃ!」


 朝日が昇る空を見上げ、タウィリの声には使命感が込められていた。


 「うん、朝寝坊は三文の徳。さっさと出発しよう!」アオは興奮したまま頷く。


 「おはよう、おじいやん、アオくん! 今日から新しい章が始まるよ。さあ、パトゥパイアレヘの棲む森へ飛び込もう!」


 その瞳は、新たな一歩への期待で輝いていた。


 「そうじゃな、アロハ。でもパトゥパイアレへは直射日光が苦手じゃ。昼間には会えぬ」


 「え、リアルで? じゃあどうやって冒険するの?」


 「それが冒険の面白さじゃろ?」


 パトゥパイアレへ――ジーランディア大陸の深森に潜む恐怖の魔獣。


 真紅の瞳は闇の底から覗くように冷たく光り、青白い肌には死の気配が漂う。血のように鮮やかな赤髪、三本の足指と四本の手指。尖った耳は微かな音を捕らえ、獲物を逃さない。


 闇を操り、心に恐怖を植え付け精神を支配する力を持つ。その存在感は圧倒的で、名を聞くだけで人々は震える。


 しかし自然界のバランスを保つ重要な役割も担っており、恐怖は秩序を乱すものではない。


 とはいえ、その事実が恐怖を和らげることはない。


 アオとアロハが挑むパトゥパイアレへの遭遇――その危険と恐怖は、まだ二人には知られていなかった。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


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