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4月16日 じんつうりき
「暇だな...」
「暇じゃな...」
漱印もため息をついている。
平日の夕方、神社に来る参拝者などいる訳もなく、ぽつんとした境内をぼんやり眺める。
「そうじゃ、神通力を授けてやろう。そろそろ来るじゃろうし」
良いことを思いついたみたいに言うけれど、こんな時間に参拝者は来ないだろと愚痴る。
「まあまあ、物は試しじゃ。ほれ参拝者が来たぞい」
神通力がなんだと言う疑問を持ちながら挨拶をする。
顔を上げると女性の頭にぼんやり文字が浮かんできた。
─何この人─
怪訝な顔をしてこちらを睨みつけている女性に再度頭を下げた。
どうなってる...
「神通力じゃよ」
にんまりとこちらを見上げるアイツを睨む。
「人の心を読む力をお主に授けたのじゃ、どうじゃ面白いじゃろ」
やっぱり1度殴った方がいいな...
「神を殴るとはバチが当たるぞ、それより見よ」
子供を窘めるように怒るアイツに余計に腹が立つ。
─お母さんが早く帰ってきますように─
女性の頭の文字が変化していた...この人の願いだろう。
「叶うといいな」
他人事のように言う神を横目に、帰る女性の姿を何となく見つめた。




