8月2日 おみあげ
「こんにちは」
「こんにちは」
あれ、香取さん?
咄嗟に挨拶を返しつつ境内の掃除を続ける。
最近来なくなったのはお母さんが退院できたからじゃないのか?
「小夜ちゃん!おかえり、おばあちゃん家は楽しかったかのう」
「漱印君ただいま、楽しかったよ」
え、おばあちゃん家に行ってた?
「これ、お土産。どうぞ」
鮎の形をしたお菓子を受け取った漱印。
「ふむ、おばあちゃん家は京都なのか...若鮎久しぶりじゃのう、ありがとう」
わかあゆと言うのか...
「諏訪さんもどうぞ」
「あ、ありがとう...」
ちらっと上を見るが文字は無い。
漱印の方を見るとじっくりと味わっている。
「どうしたの?お菓子嫌いだった?」
「え、違います。ここ最近来ないから来る必要無くなったのかと思って...」
「母が退院して、せっかくだから実家に行こうってなったから急で...」
なら余計に来る必要ないんじゃ...
「お主も若鮎食べよ、美味しいぞ」
「今仕事中だから後で食べるよ」
「別に良いぞ、わしが許可したからのう」
急かす漱印に苛立つが、なぜか香取さんも期待している。
...仕方ないか
そう思いながら鮎の形をした可愛らしいお菓子を食べ始めた。




