7月27日 はなびたいかい
「喜雨、今日は門を閉じなくてもいいぞ」
いつも通り門を閉めようとするとおじいちゃんに止められる。
「そういえば、花火が上がる日じゃのう」
「ちょうど開けてるから花火が見える、喜雨も見るか?」
正直蒸し暑いから部屋に戻りたい。
断ろうとしたが、おじいちゃんがワクワクしながら簡易的な椅子を用意している。
「部屋に戻らんかったのう」
ここぞとばかりに弄ってくる。
人が多くないなら別に見てもいいって言い訳みたいになってしまった。
「水分補給しっかりね」
おばあちゃんから冷えた麦茶を貰った。
「ありがとう」
「生き返るのう…」
自称神なのに、生き返るとかいう表現はするのか。
「お主は意地悪じゃのう」
頬を膨らませて不満げな漱印を無視して麦茶を味わう。
思ってたより人が増えてきたな...
「こんばんは」
「香取さん、こんばんは」
Tシャツに短パンでラフな格好だ。
「どうも」
「あ、こんばんはです」
暗いから隣の大男に気づかなかった。
全身黒い服で顔も強面で子供なら泣くのでは...
「お父さん、この人はここの神社の受け付けさん」
紹介されたので頭を下げた。
「そうか、お父さんは端に行くからな。」
そう言って奥に行ってしまった。
「お父さん無愛想なの...ごめんね」
「大丈夫ですよ、そろそろ始まりそうですよ」
言い終わる前にひゅーと笛の音が聞こえた。
反射的に顔を上げるとパンと華が咲いた。
きれいと零れた声の方をむくと香取さんの目が花火で反射して輝いていた。




