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4月10日 べんとう
「腹減ったなーきうー」
「そうですね。」
「きうの弁当鮮やかで綺麗だな、うちは茶色しかないぞ。でも好きな物だらけで昼休みが楽しみなんだけどな」
幸せそうに唐揚げを頬張る姿を横目に自分の弁当と比較する。
南瓜と人参の煮物、きんぴらごぼう、卵焼き、塩鯖、1口サイズのおにぎりにはおかかとじゃこが乗っている。
高校生の弁当にしては少し渋い品々だが、確かに他の人の弁当より色鮮やかな弁当である。
「今どき全部手作りの弁当ってなかなか無いぞ、母さんに感謝しろよー」
「これ作ってるの祖母ですよ。」
「ばあちゃんが、すご...だから健康的なんだな」
...しみじみと人の弁当を見るのやめてくれないか。
南瓜を口に含んだ。南瓜のほんのりとした甘さと少し濃いめの味付けで顔が綻んだ。
「1つくれよ」
「なんでですか。」
「顔に書いてある」
にやにやしながら、おかずを狙ってくる。
「あげませんよ。」
咄嗟に弁当箱を持ち上げて抗議した。
ちぇっと小さく零しながらご飯を食べ始めている。
自分も守ったおかずを味わい始めた。