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7月21日 もも
「諏訪さん、桃貰ってくれますか?」
ビニール袋に4個程入った桃を渡される。
まだ返事してないのに…
「良いではないか、桃美味しいぞ」
「熟されて美味しかったよ!でも食べ切るには多くて…貰ってほしいの」
─お願い、貰って─
懇願するようにこちらを見つめてくる。
「分かりました。分かりましたからそんな目で見ないでください。」
香取さんと漱印が手を繋いで喜んでいる。
どうせ漱印が1人で食べ切るだろな…
「ほれ、早く冷やしに行くのじゃ」
しっしと追い払うように手を振る漱印。
はいはいと台所へ向かった。
「おばあちゃんいる?」
「どうしたの、喜雨」
「この桃貰ったから冷やしてくれる?」
「桃貰ったのね、1つ食べる?切りますよ」
「え、じゃあ1つ切って欲しい」
素早く切られた桃は薄い黄色で瑞々しく、美味しそうだ。
3つ爪楊枝を刺して戻った。
「切ってもらったので食べますか?」
香取さんは目を見開いている。
「じゃあ、いただきます」
漱印は躊躇いもなく、いただきますと言って食べている。
じゅんわりとした甘さが口に広がり美味しい。
3人で桃の甘さをゆっくりと味わった。




