20/206
5月28日 つゆいり
「漱印」
呟いたけれども現れない。何回呼んだか分からない。
昨日から梅雨入りで雨が降り続け、より参拝者が少なく感じる。何時かに雨音が良いと言ってた漱印が頭をよぎった。
「漱印っていう名前なんですね。結構渋い…」
「こんにちは。」
小夜さんと言いかけたけれど、漱印が聞いたから知ってるだけで名前を聞いたことない。
「そういえばお互いの名前知りませんでしたよね、香取と申します。」
「あ…僕は諏訪です。」
「諏訪さんですね。」
周りが名前呼びだからか苗字呼びが新鮮に感じる…馴れ馴れしいやつばかりだな…
「今日も雨強いですよね、梅雨入りだからですかね。」
「そうですね。」
天気の話題になったらもう終わりじゃないか…
良くも悪くも周りがおしゃべりで自分は聞き手に回ることが多く、自分から話題を出せない。もしかすると香取さんもおしゃべりじゃないかもしれない…
漱印がいないから心を読むことが出来ない…でも居心地悪い気はしない。
雨音をぼんやりと聞きながらゆったりとした時間を過ごした。




