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10月26日 ほしがき
「おばあちゃん、これって干し柿だよね」
「そうですよ、食べ頃になりましたのでおやつにと。どうぞ」
皿の上に3個乗せられていた。
縁側に座ってからひとくち食べるとねっとりとした甘さが口に広がった。
ちょっと甘すぎる気がするけど少しくらいなら食べられるかな
1つ食べ終わるとそこそこお腹が膨れた。
これ食べられてあと1つだな、こういう時漱印が居たらあげられたのにな
ここ何週間か見かけなかったため徐々に心配する気持ちが強くなっていた。
いつ姿を現すのか、どこにいるのか知らないことが多いな
考え事をしているといつの間にかおばあちゃんが隣に座っていた。
「喜雨、もう満腹ですか」
「結構お腹に脹れるんだね、これって日持ちする物なの?」
「ええ、冷凍庫に入れましたからしばらく持ちますよ。漱印が帰ってきた時にまた食べますか?」
見透かされてる感じがして小さめに頷いた。
その様子におばあちゃんはまた微笑んでお皿を持っていった。
最初は静かになるな、くらいだったのにいつの間にか寂しくなったんだな
口に残る甘さがやけにずっと続いた。




