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10月17日 みそしる
「お疲れみたいですね」
「旅行自体あんまり行かないから、体力も無いし」
「存分に楽しめた証拠ですよ」
おばあちゃんがニコニコしながら障子を空けた。
眩しい朝日で思わず目を細めるとまた笑われた。
「朝ごはん用意してますよ、先に行ってますね」
なんとか支度を終えて居間に向かうと味噌汁の良い匂いが鼻をくすぐった。
「お味噌汁の具って何なの?」
「豆腐とワカメですよ」
オーソドックスの組み合わせだけど1番好きなんだよな
茶碗を持ち上げると白い湯気が揺れた。
何となくだけど汁物を始めにするとご飯が始まるような気がする。
ひと口運ぶと優しい味が広がった。
思わずほっと漏らすとおばあちゃんがくすくすと笑っていた。
「何か面白いことでもあったの?」
「いえいえ。美味しそうに食べてもらえると嬉しい気持ちになりますね」
「…いつも美味しいご飯作ってくれてるから」
「ありがとうございます。ゆっくりだけれど時間大丈夫かしら」
ちらっと時計を見るとそこそこいい時間になっている。
まあこのゆっくりとした時間が心地いいからいいか
そう思いながらちょうどいい温度になった味噌汁を啜った。




