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5月10日 きょうかしょ
教科書無くなってる...
あの日から漱印を見かけなくなった。相手する暇もなく勉強していたからか拗ねたのだろうか。まさかとは思うが漱印が教科書を持っていったのか。
「これを探しておるのか」
噂をすれば...
「そう、返して」
「やじゃ」
嫌と言われても...
取られたのは日本史の教科書だけ...他の教科をすればいいか。
英単語帳を取り出し、テスト範囲の単語を赤シートで隠し勉強し始めた。
「小さい...これが無かったら困るじゃろ」
何か言ってるな...
「なあなあ、少しくらい反応してもよいじゃろ」
騒がしい...それよりもテストに備える方が大事だ。
最初は煩かったが、次第に絡んでこなくなった。
ふと気になって見ると、教科書を開けたまま寝ている漱印がいた。
結局寝るのかよ...
起こさないように教科書を回収して、そっと薄手の布団をかける。
最近反応しなかった罪悪感だ...多分。
そんなことを思い出しながら習った長文を読み始めた。




