4月1日 はじめまして
「其方が雨水の孫か、よう来たな」
開いた口が塞がらない...とは誇張した言い回しだと馬鹿にしたことがあった。でも、実際目の前に真っ白の子供がまるで自分の部屋だと言わんばかりに迎えられたら驚くしかないだろう...
「雨水の孫にしては大きいのぉ、時雨はもう50手前か、なら妥当か...お主、知っとるか。時雨が赤ん坊の時はずっっっと泣き止まなんで雨水と若葉が必死に機嫌取っての、特に...」
子供が急に近づいたかと思えば、じいちゃんとばあちゃん...そして父親が子供の話を延々と早口で話し始めた。小さい体を必死に動かしてる姿は女が見たら可愛いと言うだろうが、今は25時だ。
都内から県を跨いでの長旅で体力を使い果たしたからか、じいちゃんとばあちゃんの長話に付き合ったからか、頭がぼんやりしてきた。
子供が布団の上から移動した隙を見計らい、横たわる。
ゆっくりと瞬きすると、まだ熱中して話してる真っ白の子供の姿が映った。
少し散り始めた桜の花びらをぼんやり見ながら昨日を思い出した。
「其方が雨水の孫か、よう来たな」
目の前にいる自分より2回り小さい子供に唖然とする。
ここが自分の部屋で合ってるよな...
長旅で疲れたのだと言い聞かせ、沈むように眠った気がする...たぶん
「何見てるんだ?」
「別に、何も見てません。」
「ふぅーん、そういえば下の名前、喜ぶ...雨?」
「喜雨、読めないなら苗字でいいです。」
何度も聞かれる自分の名前にため息が出る。
親はどうしてこの名前を付けたんだろ...
驚いた声を聞き流しながら、所々ジンジンと痛む体に首を傾げた。
珍しく寝違えたかな...
「何見てるんだ?その四角い紙の束?なーなー」
...夢じゃなかったのかよ
「わしは夢にまで出る程、暇神じゃないぞ」
勝手に心の中を見るな、暇人
「人じゃない、神じゃ。神様、崇められる神様じゃ」
ふんぞり返るチンチクリンに冷たい視線を向けた。
「これは教科書、それとここはお前の家じゃないだろ、さっさと帰りな」
「お主、態度が悪い。それに人を邪険に扱うな。お主、昼間話しかけた人を適当に流したろ?人の縁をもっと大事にせよ。」
人と関わっていいことなんて無いだろ
「うーむ...何か訳がありそうじゃな...お主、男巫をせよ、それがいい」
だんぷ?なんだそれ
「男巫女と言うやつじゃ、学業が落ち着いてからで良い。まずは人と関わる、それが大事じゃ」
何か1人で納得した神(自称)は瞬きした瞬間白昼夢のように消えた。
これが俺と龍神の初めの会話だった。