能力を授かる
俺は<三鷹 俊>
高校2年生の17歳だ。
特段秀でたところもない、普通の男子高校生なんだけど、一つだけ自慢できることがある。
それは親友の存在だ。
俺にはかけがえのない友人がいる。
<雲川 晴斗>
小さいころ、いじめられていた俺を助けてくれて以来、ずっと助け合って過ごしてきた。
どんなにつらいことがあっても、親友が助けてくれた。
親友が困っていた時には、俺が手伝った。
なんのとりえのないただの高校生だけども、親友が、晴斗がいるだけで、毎日が楽しいものとなっていた。
これからもそれが続くと思っていた。
思って、いたんだ……
ある日、いつものように学校に行くと、何やら騒がしい様子だった。
先生も生徒も、何やら一か所に集まっていた。
その集団の中から、小さな悲鳴も聞こえる。
不思議に思い、野次馬根性で近づいていくと、一人の先生が俺に気づいた。
その先生は少し戸惑った表情になり、そして決心したような顔をしてこちらに駆け寄ってくる。
「三鷹……その……なんだ。」
「この先に進むのなら、心の準備をしていってくれ。」
「先生は、この現場にお前がいてほしくはない。」
「けれども、お前は知る必要があることだと思っている。」
「三鷹……お前に、その覚悟があるのなら……この先に進みなさい。」
先生は、一音一音言葉を選ぶように、それでいてしっかりとした言葉でそう告げる。
俺は不審に思いながらも、ただならぬ表情の先生に気圧され、真剣な表情をして答える。
「……この先で何があったのか、わからないけれど。」
「わかりました。覚悟、しました。見せてください。」
先生はその言葉に、悲しそうな表情をしながら、
「わかった。先生が案内しよう。ついてきなさい。」
そういい、俺を案内するために歩き始めた。
俺はそれについていく。
その様子を見ていた周りの人は、静かに道を開けていく。
そして、その先にあったものは―――
頭から血を流し、倒れている親友の姿であった。
「な……っ」
絶句する。
この瞬間、俺はいつもの日常が崩れ去っていく音を聞いた。
そのあとのことはあまりはっきりと覚えていない。
気が付いた時には、自宅のベッドの上でうずくまっていた。
どうしてこんなことになったのだろう。
どうして晴斗が。
どうして。どうして。
行き場のない感情が頭を埋めていく。
「……俊?大丈夫……?」
母さんの声だ。返事をしなくちゃ。
「……うん。大丈夫……」
「大丈夫じゃなさそうね……」
「晴斗君の容態だけどね。とりあえず命に別状はないらしいわ。」
その一言で多少救われる。
しかし、次の言葉で再び絶望に落とされてしまう。
「でも……目が覚めないらしいわ……」
「お医者様の診断だと、<植物状態>ってやつらしいの。」
「すぐに立ち直れ、なんて言わないわ。学校も、先生から暫く休んでも構わないって言われてるから。」
「でもね、いつかは立ち上がらないといけないわ。前を向かないといけない。」
「余裕ができたら、少し外の空気を吸ってきなさい。何気ないことをして、気を紛らわせるとかしてみなさい。」
そういって母さんはドアを閉める。
何気ない日常のはずだった。
いつも通りの日々のはずだったのに。
あっけなく崩れてしまった。
悲しい。つらい。苦しい。
助けて、晴斗……
涙が止まらない。
布団にくるまり、泣いていると、やがて意識が薄れていった。
目覚めたのは、次の日の昼だった。
ひとしきり泣いたせいか、昨日よりは気分が落ち着いている。
「……母さんの言ってた通りに、外に出てみるか……」
変な体勢で寝てしまったせいで、節々が痛む体を引きずり、とぼとぼと外に出る。
学校は休んでしまったし、どこに行く宛てもない。
適当にそのあたりをぶらつこうと、足を進めていった。
近くの公園のベンチに腰掛ける。
昔、晴斗と遊んだ公園だ。
懐かしさとやるせなさ、自分の無力さで心がいっぱいになる。
涙はもう枯れてしまった。
ゆっくりと顔を上げ、空を見る。
これから、一人でも頑張っていかないといけない。
頑張ろう。頑張らないと。
無理やり大丈夫だと思い込み、立ち上がろうとする。
その時、足に鋭い痛みが走る。
「いっ…!」
咄嗟に痛みの出た個所を見る。
何か鋭利なもので切り裂かれたようだ。
ぱっくりと傷がつき、血が流れている。
「な、なんだ……?」
近くに切れそうなものはない。なのになぜ。
不思議に思っていると、突然景色が変わる。
「……は?」
何もない。青白い空間に自分が立っている。
いや、浮いているのか?
体の感覚があやふやだ。
自分がいるということ以外、わからない。
訳も分からず戸惑っていると、目の前に龍のようなものが現れる。
『……汝は参加資格を満たした……』
『故に、力を与える……』
『汝が右腕は<万物を自らの物とする>』
『汝が左腕は<万物を強固にする>』
『その力、極まりし時、汝が願いは叶うであろう。』
『力を極めるは、他の能力者との戦なり。』
『汝の行く末に、幸あれ……』
一方的に語り掛けられると、目の前がまっしろになっていく。
何か聞こうにも、声が出ない。
目を開けると、俺は元居た場所に戻っていた。
「な、なんだったんだ……?」
「夢……なのか?」
右腕だ左腕だと言われたので、自分の腕を見るが、特に何も変わっていない。
不思議な出来事に出くわしたせいか、さっきまでの鬱々とした気分は多少まぎれた。
先ほどの出来事について、考えながらも帰路についた。
明日からまた、学校に行かなくては。




