ニート歴5年の俺が5才児に救われる
「大樹、母さん我慢の限界! 幼稚園の送迎アルバイト申し込んだからね!」
配送業をうつで辞めて5年、惰性でニートを続けていた俺はもう29歳。
うつは殆ど治ったが、ゲームばかりで就活しない俺は母親を怒らせてしまった。
「園長先生は母さんの友達だし、短時間バイトだろ? このリハビリを乗り切れないようじゃ面倒みきれないぞ」
父親は市立博物館の館長になり、定年まで立場が保証されている。
くそっ、俺と代わってくれよ。
「大樹君は小さい頃から知っています。優しい子で、土地勘と運転技術もありますから期待していますよ」
短時間のバイトに、働き盛りの男が来る事は滅多にない。
園長先生が母親の友達というのも実に厄介で、俺は即採用が決まってしまった。
勤務初日から騒がしい子ども達に囲まれ、運転は楽だが頭にストレスが溜まる俺。
試用期間中に、うつが再発したと嘘をついて辞めようか……。
そんな事を考えながら2ヶ月が過ぎ、保育士さんの病欠で俺がひとりで送迎をしたある日、運命は回り始める。
「うっ……ぐすんぐすん」
何やらひとりで泣いている子がいる。
ゲーム好きで人気者のさとる君だ。
「さとる君、どうしたの? おなか痛いの?」
5才児とは思えない程ゲームに詳しいさとる君は、ゲーム好きな俺にはすぐ懐いた。
だが、郊外にあるおばあちゃんの家まで遠回りしなければならないので、いつも最後までバスに残されてしまう。
「お母さんとお父さんとおばあちゃん、みんないっしょにいてほしい……」
どうやら両親の仕事が忙しく、家族全員が揃う事が滅多にないらしい。
ゲームにやたら詳しくなったのも、寂しさを紛らわすためだったのだろう。
「さとる君、もう少しの辛抱だよ! 俺の持ってるキャラの取り方、全部教えるから、それまでゲームを楽しもうぜ!」
思えば俺も、将来の不安を紛らわせるためにゲームをやっていたに違いない。
でも、純粋にゲームも好きなんだ。
さとる君に、家族とゲームに辛い想い出を持って欲しくないよ。
「今日はおひとりなんですね。さとるは毎日貴方の話をするんですよ。いつもありがとうございます!」
おばあちゃんはさとる君の手を取り、近くのゲームショップを覗きに行く。
これが日課なのだろう。
だが、よく見ると土日のアルバイトを募集している。
幼稚園の休みにも出来る仕事だ。
結局、俺はさとる君に救われ、俺達ふたりはゲームに希望を与えられていた……。
もう少し、送迎のバイトを続けなきゃ。