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09 「幕間」



「……コレデ、良カッタノデスカ?」

「うん、上々だよ。悪いね、私の娘が世話になって」


 煌びやかな建物から、兵士に連行される無様な集団。

 それを街道の闇から眺める、二つの影があった。

 一人は革製品のコートに全身を包む壮年の男。明るい通りを見つめるその瞳には、ただ無感動が添えられている。

 そしてもう一人の男……ダニエルは、しかし通りから目を逸らして、ヒゲを手で扱く男へ視線をやった。

 その物言いたげな視線を受けた壮年の男……シンデレラの父は、ピクリと眉を上げた。


「うん? どうしたのかな。何か言いたいことでも?」

「……」

「……ふふ、まさか情が移ったのかい? ありがとう。私の娘を心配してくれて」

「……死ヌカモシレナカッタノデスヨ?」

「ふ、あははっ!」


 糾弾する言葉に、男は吹き出して笑う。


「それこそまさか、だ──死なないさ。そう育てたし、そう鍛えている。アレは私の娘だよ? もし死んだなら、それは他の要因さ。鍛え方の足りない王子様が足を引っ張ったとかね」

「……」

「やれやれ、何が不満なのだか分からないな。そうなったらなったで、“これ”で手助けでもしていたさ」


 手慰みに魔法の杖を弄りながら、男は嘆息にも似た息をつく。


「どれだい? あの集団にクラブを襲うよう唆したことかい? そこへ鉢合わせるよう、我が娘を送り込んだことかい?」

「……」

「酷いと思うかな? 不良品の銃を横流しして、増長させる程度の手助けはしただろう? 私の娘にはそれで充分だと思い、事実そうなった」


 ……いくら不良品とて、銃の試し撃ちくらい事前にするだろう。

 そんなモノの前に娘を追いやった男は、「ふむ」と表情を緩ませてダニエルを見る。己の部下へ向け、言い聞かせるように。


「これは家族サービスなんだよ。結果を見たまえ。我が国に蔓延る犯罪者は捕まり、それによってギクシャクしていた家族は新たな絆を得た。これでも日々、家庭環境を憂いていた一人の父親なんでね。だが生憎と、こんな人目を憚る“仕事”をしている身だ、こうやって離れた場所で策を巡らせるしかないんだよ」

「……アナタハ」


 家族には“不倫”などと称して、距離を取る男はいまだ笑っている。家族の安全を想いながら、同時に必要であれば危険にも近付けるその笑みの影に、どのような感情が秘められているのか。

 ……付き合いの長いダニエルにも、それはいまだに分からない。


「これも一つの愛の形なんだよ、ダニエル。獅子の王は我が子を谷に突き落とすが、そこに愛が無いのだとは言えまい? ああして歩み寄る愛もあれば……こうして突き落とす愛もあるというだけさ。君も家庭を持てば、分かる時が来る」


 言いたいことは全て言った、と。

 壮年の男は「さて」と、背を預けていた壁からゆっくりと離れた。


「今夜も仕事だ、ダニエル。まずはあの者達から、情報を引き出さないと。まったく、アリの巣穴は細かくていけない。我等が王も常、国民の安寧を脅かされお嘆きになっている。その憂いは晴らさないとね?」

「……アナタハ、決シテイイ大人デハナイノデショウネ」

「言葉を選んでくれてありがとう。いいんだよ? 『人でなし』と言ってくれてもね。亡き妻も、今の妻も私なりに愛してはいるが……それは事実だ」


 娘に煌びやかで夢のある魔法を見せた、魔法の杖。

 それに──無法者を罰するための紫電をバチリと纏わせた男は、得意気にクイッと帽子を上げるのだった。


「──なにせ私は、“フェアリー・ゴッドファーザー”だからね。妖精だなんて名のつくモノは、大概がロクでもないものさ」

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