表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
なにかが少しずつ変わりはじめる  作者: ゴルゴンゾーラ
3/61

言葉づかいが独特な派遣さんについて

澪から電話が来たことは、翌週にはもう忘れてしまっていた。


月曜日、出社して、午前中はオンラインでのミーティング。

午後からは事務作業が待っていた。


会社での俺は、入社6年目の中堅社員といったところか。

仕事の要領は良いほうで、いままで大きな失敗をしたことがない。

でも派手な手柄を立てたこともないから、出世できるのかと聞かれれば自信がないけど。


「青山さ~ん」

背後から甲高い声が聞こえてきた。

加賀山さんの声だろう。


「まじでその声、アタマに響くわ」

俺は眉間をもみながら、声の方に振り返る。


「青山さん、また酔いどれなんスカ?」

「酔いどれってなんだよ。二日酔いのこと?違うよ。目が疲れて頭痛がするんだよね」


営業なので、普段は外を飛び回っているけれど、その日は経費の精算や見積もりの作成などが溜まりに溜まっていて一日内勤の予定だった。

たまにこうして、パソコンを使い続けると体が拒否反応を起こす。

俺はじっとしているのも苦手だしなぁ。


「青山さんがいると、女性たちが穏やかで仕事がやりやすいんスよ」

「へーなんでだろ。俺は早く外回り行きたい。加賀山さんのキンキン声から逃げたい」


加賀山さんは、半年位前にきた派遣さんで、22歳。

若くて可愛い子が来た!って社内では彼女に対する注目度も高かった。


しかし、残念なことに加賀山さんは声がキンキンする上に、かなり口が悪い。

体育会系なのか?言葉遣いが独特だった。


こないだは、本当にみんな驚いた。


加賀山さんは、突然椅子から立ち上がると

「ちょっと、しょんべんいってくらぁ」

と大きめの声で宣言したからだ。


俺の所属する営業チームで着席していた人間は、全員、シーンとなった。

PCから顔を上げて加賀山さんを二度見する先輩。

お茶を吹き出しそうになるマネージャー。


しょ、しょんべんって。

いまどき男でも言わないと思うけど。


一体どういう育ちなのか。

しかし

「見た目の可愛さと、言葉遣いのギャップがいいよなぁ」

といっている俺の後輩社員もいたっけ。

「しょんべんいってくらぁ」

という彼女の言葉を聞いても、果たしてそう思えるのか?


加賀山さんは俺のデスクの周りをウロウロしたあと、

「やっぱり無いっすね~、うーんこの辺で落としたと思うんだけど」

なにか探しものをしているようだった。

「なんか落としたの?」

「はい。コレなんスけど」


差し出されたのはスマホの裏側。

色とりどりの宝石?のようなつぶつぶがたくさんついていた。


「この青いストーン、この辺に落ちてなかったッスか」

「落ちてなかったっす」俺も加賀山さんの口調を真似る。

というか一緒にいると口調がうつりそうで怖い。


「スマホの裏側にいっぱいくっついているんだから、一粒くらい無くなっても問題ないんじゃない?っていうか、逆によく一粒無くなったのに気づいたよね」


「アザーッス!青山さんにお褒めの言葉頂きました!今週はコレで乗り切れる」


わけわからないことを言いながら、加賀山さんは、ようやく俺の側から去ってくれた。

加賀山さんと話していると、独特な彼女のペースに巻き込まれてしまい疲れる。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ