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それから10年が過ぎて

あの不思議な出来事が起きてから10年の月日が流れて、数々の偉大な記録を打ち立てた白鵬は現役を退いた。圧倒的な実力を持った横綱が居なくなってしまうのは、何だかんだ言っても寂しいことだった。僕は同世代のスターである照ノ富士が、少しでも長く現役を続けられることを願っている。


それから僕は会社で働くようになり、相撲好きの上司とも何人か出会うことになった。昼休みの時間に相撲の話題が出た時、僕は彼らにそれとなく聞いてみた。昔、朝青龍の時代に国技館に来ていた少女のことを覚えていませんかと。でも彼女のことを覚えていた上司は一人としていなかった。それはよく考えてみれば実におかしな話だった。あれだけ異彩を放っていた少女のことを相撲ファンが誰も覚えていないなんて、そんな事あり得るだろうか。


最近になって僕はまた家族と一緒に相撲を見るようになった。国技館から中継があると、たまに画面の中に彼女を探してしまうことがある。だけどまだその姿を見つけられたことはない。恐らくこれから先も、彼女が僕らの前に現れることはもうないのだろう。根拠はないのだけれどそんな気がする。あるいは彼女がテレビに映らなくなった原因は、ネットが発達し過ぎてしまった今の時代そのものなのかも知れない。


そして僕はこんな風にも思うのだ。相撲中継をぼんやりと眺めながら。

彼女はきっと、国技館の妖精だったのだと。

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― 新着の感想 ―
[一言] なんてロマンチック……! 日常の中の少し不思議なお話、その匙加減が絶妙だなと思いました。彼女のいたはずの場所に蝶がいるというのもとても素敵ですね。きっと彼女は主人公だけに見える妖精だったので…
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