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その17 平和な日

 一晩明けて。

 次の日は大きな障害にぶつかることなく、平和に作業を進めることができた。

 ここに、一日の流れをざっくりと記しておく。



午前 5:00~

 兄弟揃って、明るくなると同時に起床。

 豪姫と亮平の二人で、家の前で転がっている”ゾンビ”を片付ける。

 とりあえず死骸は、近所の公園に捨ててきた。何かの病原菌の温床になられても困るから、余裕がある時に燃やしてしまいたい。



午前 6:00~

 フルーツサンドによる簡単な朝食。

 その後、武装した豪姫と亮平で、セブンイレブンと我が家の往復作業。賞味期限が近いものから順に冷蔵庫へ。

 一応、蓄電池に余裕が出てきたので、冷蔵庫を起動しておく。

 食べ物はどうやら、僕の能力の生命線らしい。これまでもそうだったが、これからはもっと大切にしていかなければならない。



午前 7:00~

 往復作業中、”ゾンビ”三体ほどに遭遇。

 特筆すべきこともなく、その殲滅に成功する。

 使った武器はショベル。昨日、亮平が夜なべして先端を研ぎ、刃物状に改良しておいてくれたものだ。

 この威力はすさまじく、容易く”ゾンビ”の頭蓋を貫通してくれた。

 弟は昔から手先が器用なため、こういう時に良い仕事をする。


 僕にはない才能だ。



午前9:00~

 セブンイレブンから持ってきた食品でキッチンが埋め尽くされた。

 これで最悪のことが起こっても、一から戦線を立て直すことができるだろう。

 もちろん、そんな事態にはならないようにすべきだが。



午前11:00~

 早めの昼食。

 公園での食事中、亮平たちが”ゾンビ”の襲撃に遭う。数は六体。

 とはいえ我々も慣れたもので、対処は難しくない。

 亮平が敵を惹きつけている間に、僕が背後から仕留める……。連中には、そんな連携の練習台になってもらった。

 とはいえ、昨日のように不規則な動きをする”ゾンビ”がいる以上、亮平を囮に使うような真似は可能な限り避けたい。

 コンビニ内の必要な物資は全て我が家に収納した。もはやあそこに価値はない。



午後2:00~

 食糧はもう十分手に入ったので、ついでに防護ゴーグルやマスクなども手に入れておく。

 もちろん、消毒スプレーやウェットティッシュなどを始めとする衛生周りのグッズも山ほど必要だ。



午後3:00~

 ここでいったん、弟を休ませておく。

 亮平が泥のように眠っている間、豪姫以外にも、なるべく損傷の少ない”ゾンビ”を集めることに。



午後6:00~

 たっぷり時間をかけて吟味した結果、例の斥候用の女”ゾンビ”を含めて、支配下に置いた個体は、五つ。

 一応、全員に名前をつけておいた。

 その方が彼らと仲良くやっていける気がしたのだ。


○マッチョくん

 生前は土木作業員だったと思しき、体付きのがっしりした男。

 損傷箇所は、右の二の腕の噛み傷。あと恐らくだが首の骨が折れている。

 傷は服で隠せるが、首が据わっていないせいで”ゾンビ”かどうかが実にわかりやすい。力は強いようなので、役に立つかどうかは使い方次第か。


○ココアちゃん

 黒人女性。

 腹筋が六つに割れてる女の人で、マッチョくんの次に力が強い。

 損傷箇所はお腹の刺し傷。どうやら人間に刺され、そこから感染したらしい。

 包帯を巻いてやることで血は止まったが、時々厭な臭いがするのが難。

 美人だが、よほど苦しい死に様だったらしく、少し不機嫌そうな表情なのが玉に瑕だ。


○ミントちゃん

 ココアとは対照的に、赤んぼうのように安らかな死に顔の少女。

 豪姫と同じく損傷箇所はなく、恐らくは彼女も”ゾンビ”の血を呷ったのだと思われる。豪姫と決定的に違うのは、あまり筋肉がついていない点だろうか。


○サクラちゃん

 印象の薄い顔つきの少女。歳は高校生ぐらい。

 なんの特徴もないところが特徴と言えるだろうか。

 少し目を離せば、あっという間に忘れてしまいそうな顔だ。

 つまり、人混みに紛れるのに長けているとも言える。

 損傷箇所は左肩。少し目立つ箇所だが、厚着すればなんとか。

 なお、支配下においた”ゾンビ”たちの中では、彼女のみ本名である。

 学生証を持ち歩いていたので、生前の名前を知ることができたのだ。


○ツバキちゃん

 最初に斥候役を担ってくれた”ゾンビ”。

 適当に選んだつもりだったが、意外にも使い勝手が良いのでしばらく役に立ってもらう予定。

 生前は恐らく、身体を使う仕事をしていたのだろう。足腰が強い。

 無駄に大きい乳が邪魔をして、少し戦いが不得手なところだけが欠点か。


 ……と、これに狩場豪姫を加えた六人が、いま僕の支配下にある”ゾンビ”軍団である。


 ちなみに、豪姫を除く五人は全員、お隣の松本さん家に住まわせることにした。

 家主である松本夫妻はすでに、今日始末した”ゾンビ”の中にその死に顔を見つけている。

 あの家の所有権を主張されることは恐らく、もうないだろう。



午後7:00~

 暗い部屋の中、明かりを節約しながら明日以降の予定を組む。

 明日はできれば、軍団の武器の充実化を行いたい。

 地図を見て、我が家から半径10キロ圏内をチェック。


 とりあえず、所沢市全域はカバーできそうだ。


 その後、しばらくあれこれと考えた結果、――明日の目標を、市内にある大型のホームセンターに決める。

 ここから3キロほど離れた位置にあるため、ちょっとした冒険になるだろうが……無事に帰還を果たすことができれば、大型の鎌にスコップ、鉈、そしてハンマーなどを一気に手に入れられるだろう。



午後9:00~

 今さらになって、弟が起きてくる。

 退屈すぎてかなわんというので、久しぶりにカードゲームで相手になってやる。


 十回ほど勝負して、全勝してやったら不貞腐れて自室に帰っていった。

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