氷眼のサイクロプス? 3
【リリーSIDE】
転移魔法陣の前に着くと、魔法陣から巨大なモフモフでフワフワな白い何かがあった。
それを見た俺は
「ふにゃー! モフモフゥー! フワフワァー! ポカポカァー」
と一頻り堪能した後、あまりの気持ちよさに眠った。
「――――」
※ ◇ ※
【カトレアSIDE】
両腕……だけじゃない? 氷の腕が更に四本増えた……。
「何なのよあいつ足が大腿部から再生しないからって、何で手を新たに増やすのよ?」
「カトレア! つべこべ言ってないで、もう一度連携行くぞ!」
「ええ、分かったわ。リカステ、行くわよ! 疾風迅雷! 捻り蓮華!」
「おうよ! 食らいやがれ、大戦斧回転!」
ジュッゴォ! ブゥウォー!
「「烈火ぁぁぁぁぁぁ!」」
ゴォォォォォォ!
グギャガギャー!
私とリカステの合わせ技を食らった変形型氷眼のサイクロプスは、烈火の炎に包まれ大岩に激突し氷の屑と石の残骸を打ちまけた。
胸から上が砕け散った変形型氷眼のサイクロプスは、青黒いドロドロとした物を失った上半分に纏わりつかせるとその姿を変えだした。
「リカステ? ……あいつ本当に、氷眼のサイクロプスなの?」
「ちぃっ! 最悪だな……氷獄の破壊者とまで謳われた奴がやけに柔く体躯の割りには軽いと思ったらそういう事か。あれは取り込んだものに擬態し、その能力を使用するS級危険種の中でも特に厄介な相手、氷獄の悪魔ドッペルゲンガーだ。不味いぞ、カトレア……奴は聖属性しか効果が無い」
私とリカステが、氷獄の悪魔ドッペルゲンガーに対峙しているとスミレちゃんが風のように現れた。
「カトレア先生、もしかして苦戦しています?」
「スミレちゃん、出てきたら危ないわよ?」
「ひよっこは危ないから、引っ込んでいろ!」
リカステは何も知らないからスミレちゃんにきつく言っているけれど、王族にそんな言い方したら本来なら貴方――不敬罪で、死刑にされちゃうわよ。
スミレちゃんに、秘密にするよう言われているから言えないけれど……。
「リカステさん、そんな怖い顔で凄まないで下さい」
「凄んでなんかいねえよ」
ほっ……スミレちゃん、大人の対応して冗談言ってくれているわ。
ん? 冗談じゃなくて本気で怖い顔って思っている?
あはは、確かに見慣れないとそう思うわよね。
実際、私も話している内容から読み取るのだけれどね。
「スミレちゃん、これがリカステが優しく言っているときの顔よ?」
「カトレア先生、よく分かりますね?」
「私も分からないけれど、話している内容から判断してスミレちゃんを心配しての事だから……」
あは、思わず言っちゃった。
「カトレア、お前もうるせえよ!」
私達が話していると、ユグちゃんが私の頬を突いてきた。
「カトレア様、良いですか?」
「グヘッ! 人形が、動いて喋った。カトレア、一体何なんだ。その人形は? もう一体も、生きているのか? うへー、もう一体も手を振ってやがる」
ぷっ! 強面のリカステの顔が面白い事になっているわ。
でも、ユグちゃんの話が聞きたいから……
「リカステ、ユグちゃんと話しているから貴方は喋らないで!」
「うっ……おっ、おう」
私がリカステを睨むと、ユグちゃんが話し出す。
「カトレア様、ユグとディーネはリリー様から戦闘に関する補助を賜りました。ですので戦闘に介入は致しませんが、補助に関する事をお伝え致します。その武器に付いている花弁の紋章は六つあり、その内の一つである炎華の花弁が現在咲いて火属性付与がなされています。ですが、リリー様は特殊と仰っていたのをお忘れでしょうか?」
ユグちゃん、そんなこと言われても見たことも聞いたこともない補助魔法よ?
でも、何かしら? 六つの花弁のうち、一つだけが赤い花弁のようね。
他の花弁に、形はあるけれど色は付いていないわ。
それに、少し魔力を注ぐように花弁に触れると、色が変わるようね。
赤、青、緑、黄、白、黒、六つ全部色が付いちゃった。
もう一度触れていくと、消えていくわね。
赤い花弁が、確か炎華で火属性の攻撃ができたわ……それに、リリーちゃんが華の文様が付いていたらユグちゃんの力で増幅?
ユグちゃんは、花の中偉聖霊第一王女……華? 花? ――――。
「えっ? もしかしてユグちゃん? この花弁には意味があって、他に五つ属性があるの? それに、私の技の威力が上がったのはその名前に蓮華の名が付いていたから?」
「はい、その通りです。カトレア様、正解です」
ユグちゃん誇らしげに言ったけれど……
何なの? この付与魔法と花の名前で技の威力が増すって?
常識から、逸脱しているわ。
入学試験の時も感じたけれど、常識から逸脱している魔法や剣技……既に、リリーちゃんとスミレちゃんはSランク冒険者の能力に到達しているかもしれないわ。
S級危険種を見て、スミレちゃんはこの調子だもの。
確かに、ユグちゃんはSSS級指定されている中偉聖霊王女様だしディーネちゃんもSS級指定されている大精霊様だものね……私まで感覚がおかしくなっちゃうわ。
私が勘考していると、スミレちゃんが顔を覗き込んできた。
「ユグちゃん、普通は分からないと思うよ? 私も、リリーちゃんから前に説明聞いてなかったら分からなかったもん」
「スミレ様は、自身で属性魔法を付与できるので、リリー様のその特殊な付与魔法を使用しなくても良いのでは?」
えっ? ……スミレちゃんも、自信で属性魔法を付与できるの?
私も、力を向上させ、回避と素早さを急激に向上させる事ができる自信専用の固有魔法――疾風迅雷を使用できるけれど、属性なんて無理よ?
それに、突然付与されたから考える暇すら無くて気にしていなかったけれど、リリーちゃんも他人の武器に付与できるなんて大賢者様じゃあるまいしね?
「私今回は、リリーちゃんに魔法と剣技の使用を禁止されているんだよ? それに、リリーちゃんの付与魔法の方が良いよ。だって、今は火属性だけだけど、水華・風華・土華・光華・闇華の花弁を一つ一つ点灯させていくと最大で六属性の攻撃が出来るんだよー。凄くない?」
「おい、ちょっとまてひよっこ。俺達の武器の属性をもしかして光りに変えられるのか?」
「リカステさん、当然です。それに、ひよっこじゃなくてスミレだよ。カトレア先生、リカステさんの顔が怖いよ」
「うるせえ! っていうか、それなら勝機があるなカトレア?」
「そうね……取り込んだ別の魔物に変化出来ない事と、腰から下が再生しない所を見ると、何か障害が生じているようね。氷眼のサイクロプスの弱点である炎華と、氷獄の悪魔ドッペルゲンガーの弱点である光華を作動させれば、奴を倒せるかもしれないわ。スミレちゃん、協力してくれる?」
「うん」
「おいおい、冗談だろ? ひよっこをS級危険種相手に、戦闘に参加させようとするなんて……カトレア、お前正気の沙汰じゃないぞ?」
「貴方は知らないからそう言うけれど、リリーちゃんとスミレちゃんは入学試験で、Aランクの私ですら驚く力を見せたのよ。貴方もリリーちゃんには心当たりが有るんじゃない?」
「ぐっ……カトレアに見透かされたか。確かに、リリーちゃんの能力は冒険者ギルドで見た中でも常識を逸脱していた。木の棒で、なぜ離れた所にある巨大な隕鉄が切れるんだって驚かされたからな」
「あっ! それ、分かるー。そっちでも、リリーちゃんやらかしてたんだ」
「えっと、私はリリーちゃんみたいな逸脱した力はないですよ?」
「何言っているの、スミレちゃん? 貴女も、勇者の剣技や魔法を私の前で見せたでしょ? 正直、眼を疑ったわよ? 私より強い子達が何で冒険者学校に入学してくるのって……だから、リカステ心配ないわよ」
「はぁー? お前ら一体、何者だ」
「スミレは、リリーちゃんの使徒だよ?」
「いや、そう言われても俺には分からん」
「リカステ、もうその話は良いから前を向いて! 相変わらず大腿部から下は再生していないようだけれど、上半身はまた擬態した氷眼のサイクロプスに回復して戻ったようよ。氷獄の悪魔ドッペルゲンガー……ややこしいわね」
「だな……でも、これで奴の正体が分かった。それに、この付与魔法が付いた武器で倒せるぞ」
「そうね。あっ! リカステ? 貴方の大戦斧の技に花の名前がついた物は無いの?」
私の蓮華であの威力だったから、元々威力があるリカステの技に花の名前が付く物があれば凄い大技になるのに……。
「カトレア、そんな物はねえよ。女じゃあるまいし、俺が付ける訳がねえだろ?」
「リカステ様、付け焼き刃で今思いついた物でもユグの力を発揮できますよ? それに、考える時間をユグとディーネなら簡単に稼ぐことができます。あのように……」
「うげっ! 氷獄の悪魔ドッペルゲンガーが、何も出来ずに茨と水のような塊に押さえ込まれとる」
ユグちゃん、見事な合いの手よ。
もしかしたら、リカステも花の名前が付いた技を考えるかも。
でも、強面の顔に、花の技……プッ!
『「カトレア様、リカステ様の顔はこの際関係無しで……プッ」』
ユグちゃんが『小声』でそう言っているけれど、ユグちゃんも笑っていたわよ。
『「カトレア様、ユグちゃん先輩、ディーネも笑ってしまいそうになりますから二人とも……ププッ」』
あっ、ユグちゃんと同じようにディーネちゃんも笑いを堪え切れていないわ。
「カトレア先生、ユグちゃん、ディーネちゃんも……ププ、プププッ。スミレも、キャハハハハ。笑っちゃった」
スミレちゃんに至ってはもう大笑いしているし……。
「そうなのか? っておい! お前ら、何で笑ってるんだ? 俺が考えを巡らせているのに、まったく……うーん、昔習得しようとして一度だけ成功した技がある。大戦斧を自身ごと縦に回転させる大技。確かに、横から見ると大輪の花の様に見えるが……」
『「カトレア様、こしょこしょこしょ」』
ユグちゃんに耳元で、大輪の花と花言葉を教えて貰った。
「リカステ、牡丹が良いのじゃない? 牡丹は百花の王とも呼ばれるしね」
「百花の王か……大技だし丁度良いか。よっしゃー! じゃー、決まりだな。大戦斧花王牡丹斬でいくか」
クスッ! ユグちゃんに色々と説明を聞いたけれど、牡丹って王者の風格、富貴、高貴の他に、恥じらい、はにかみ、思いやりもあるらしいわね。
それに、立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花という位に、女性の美しさを形容する言葉としても用いられる花らしいわ。
リカステには勿体ない花だけれど、私のことを疾風迅雷の人形姫って揶揄うから、言い返しに強面紳士では少し弱いと思っていたから、私が揶揄うのに牡丹は丁度良いかも。
「リカステ、いいんじゃない」
「おうよ。カトレア、俺の大戦斧花王牡丹斬とお前の捻り蓮華突き、それにスミレちゃんの合わせ技でいくか」
「ええ、リカステ了解よ! スミレちゃんも、準備は良い?」
「うん」
私達は、確認するように頷き合った。
「ユグちゃん、ディーネちゃん、補助はお願いね」
「カトレア様、ユグに」
「ディーネに」
「「任せて下さい」」
と、リリーちゃんの召喚ちゃん達も声を合わせて頷いてくれた。
私とリカステの新連携合わせ技、それにスミレちゃんの飛び跳ねてからの上段攻撃から繰り出した斜めに切る斬撃で、核を破壊された氷獄の悪魔ドッペルゲンガーは溶けていき大きな魔石だけが残った。
「カトレア、その魔石素手で絶対に触るなよ。その魔石は特殊で、最後に擬態した物の特性を持つ魔石になるんだ。恐らく、氷眼のサイクロプスの魔石のように凍らされるぞ。リリーちゃんに言って後で取りに来て貰おう」
「ええ、それしかないわね。リカステ、そう言えばリリーちゃんどこ行ったのかしら?」
「俺も、分からん。野暮用って言っていたが……」
「カトレア先生、知らないの? リリーちゃん、もう一体の氷眼のサイクロプスと別の魔法陣を破壊しに向かったよ?」
「スミレ様?」
「え? ユグちゃん、どうしたの?」
「リリー様が、秘密にと……」
「あっ……言っちゃった。ユグちゃんごめんね」
「いえ、スミレ様お気になさらずに……」
私達は召喚の力で通じているユグちゃんとディーネちゃんに、リリーちゃんの居場所を案内して貰う事で、その目的地である別の魔法陣へと急ぎ駆けだした。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。
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リリー「シルク、アイビーと何しているの?」
シルク「合わせ技よ! 合わせ技って格好がいいでしょ」
リリー「うん。でもシルク? 何で合わせ技なのにお菓子の皿を
並べているの?」
シルク「そんなの決まっているわよ。アイビーを走らせて私がお皿のお菓子
を残さずに食べる合わせ技だからよ」
アイビー『ねえ、シルク? また、僕走るの?』
シルク「アイビー、もう一度チャレンジよ!」
一体何の訓練をしているか謎の、シルクであった。




