氷眼のサイクロプス? 1
【リリーSIDE】
うーん……所々で魔物が集団で固まっているな。
散けて再復活させるために、狩りながら行くか。
角兎……モフモフしていてちかっぱ愛らしいばい。
この子達は、無理。絶対に、狩れない。
「モフモフしているから、狩りの対象外決定!」
大鼠はモフモフしてないけれど、お目々が可愛い。この子も、狩れない。
「えへへ、角兎と大鼠が戯れてくるわ。攻撃してきてるとも言うけれど、痛くないし。あっ! 諦めて、逃げていった。あはは、まてー! はっ! こんなことしている場合じゃなかった」
俺は、テケテケと奥に向かう。あら、中層に入ったから角兎と大鼠が居なくなった。
「しょぼん」
おっ! ゴブリンの群れだ。
これは、悪さをするしモフモフしてないし狩りの対象だ。
「ほっほ、ほいの、ほいっと。ふみゅ、ふみゅ。五十体倒したから、再復活は疎らになるかなー?」
今度は、オークを見つけた!
良い食材になるんだよねこの魔物。なので、
「やっ! たぁー! とぉー! てやー! っと……」
うん、こんなものだね。三十二体、討伐完了!
それにしても、転移魔法陣から錯乱した様に逃げ出した氷眼のサイクロプス? と取り巻き? が散らばって南東に向かったのはどうしてなんだろう?
転移魔法陣にある不思議な光点から逃げたようだけれど、転移魔法陣の光点は敵意を示す赤ではないし移動はしていない。
これ以上転移魔法陣から魔物が移動してこない所を見ると、不思議な光点が転移魔法陣から出てこようとしてくる魔物をこちらに来させないようにしているのか?
「じゃあ、転移魔法陣の光点は後回しにして、逃げた魔物の対処を優先にした方が良さそうね。先ずは、森の入口に近い東の奥よ」
俺は、途中で固まっているゴブリンを狩りながら疎らに散らばった魔物の元へ向かう事にした。
※ ◇ ※
【カトレアSIDE】
私達は、氷眼のサイクロプスを討伐するため南西の奥地に進んでいた。
「カトレア、お前防寒用の服はどうした?」
「えっ? そんな服着ていたら素早く動けないでしょ」
リカステ、強面の顔でこっちを睨まないでよ。
スミレちゃんとユグちゃん達が、怯えるでしょ。
「カトレア様、リカステ様は心配されてこちらを見たようですよ」
「あら、そうだったの? ユグちゃんは、心情を読み取れるのね」
「はい」
それにしても、布団のお化けみたいな服でリカステ動きづらくないのかしら?
先頭を歩いているリカステが、再び振り向いた。
「カトレア、お前寒くないのか?」
「リカステ、私は魔法を使用して防寒対策しているから寒くないわよ? 貴方もAランク冒険者なんだから、少しは魔法を使って防寒対策しなさいよ」
「俺は魔法も武器も得意なお前みたいに、器用じゃねえんだよ」
リカステも、少しは魔法使えるくせに昔から何でも馬鹿力で解決しようとするし……。
「クスッ」
「ユグちゃん? 私の心情読んで、笑わないでよ。恥ずかしいから。……あれ? ディーネちゃんは、なぜ頬を染めて踏ん張っているの?」
「ディーネも、ユグちゃん先輩のように心情を読む訓練をしているのですー」
「大精霊でも得意不得意が有りますが、ユグの様に水の大精霊であるディーネも心情を読める筈なのですが、なぜか読めないようです」
ユグちゃんの話に
「そうなんだー」
と、頷き返して周りの様子を窺う。
「……それにしても、寒さが異常なようね。ここに生息している魔物達が凍っているわ」
「だな……ううっ、さむっ。見ているだけで、寒く感じるぜ」
リカステが周りの様子を見て、身体を震わせた。
「スミレちゃんは、大丈夫?」
「はい。私は耐性が有るので……それに、ユグちゃんが春の結界を私達の周りに張っていますので耐性無しでも凍えない筈なのですが?」
「えっ? そう言われたらそうねー。私の魔法では、ここまでの凍てつく冷気は防げないわ」
「道理で、暑いはずだ。カトレア? お前人形姫なんだから、その人形の能力で凍てつく冷気を防げるのなら、初めから俺にもその事教えろよ。はぁー、この服は無駄だったのか……」
プッ! あの馬鹿、ユグちゃん達を人形だと思っているのね。
ユグちゃんが、私の耳元で囁く。
「そのようですね」
あれ? スミレちゃんは?
「カトレア様の、後方にある木の上を見て下さい」
「えっ? ユグちゃん、どこどこ? あっ、いた」
「言いつけを守られて、距離を置いて付いてくるようです」
「そうなんだ……ってやっぱり、リリーちゃんの?」
「ユグは、何も言っていません」
「ディーネも……」
「はいはい。分かりました」
ユグちゃん、ディーネちゃん、二人ともリリーちゃんに似て可愛らしい所あるわね。
そう思っていると、前方にいるリカステが姿勢を低くするように手で合図を送ってきた。
姿勢を低くして、ゆっくり近づくとリカステが
「カトレア、あれを見ろ。奴は自身の傷を氷で塞いで、背を大岩に預けて体力と魔力を回復させる為か寝ているようだ。むっ……近くでゴブリンが再復活した」
ドーン!
ギャ……
「おいおいおい。目を瞑っているのに、奴は寝ているんじゃないのか?」
リカステ、急に振り向かないで。
貴方の驚いた顔の方が、氷眼のサイクロプスより怖いわよ。
強面紳士の、名の通りね。私が、付けたのだけれど……クスッ。
それにしても大きいわね……座って大岩にもたれ掛かっているけれど、二階建ての家を越えているわ。
馬鹿力だけなら私の素早さで翻弄できるのだけれど、一説では氷の息吹を放ち眼と眼が合った物を氷付けにするらしいから迂闊には手を出せないわ。
「無意識で、自身の手の届く範囲に再復活した魔物を攻撃しているようね。地面の至る所に窪みが出来ているもの」
両大腿部から下が消え失せているけれど、凍らせて出血を止めたようね。
あの天空を覆っていた目映い光りに傷を負わされたのだと思うけれど……王様の言い訳は、一体何だったのかしら?
私達を守ってくれた光りだったから、別に良いのだけれどね……。
「カトレア、奇襲をかけるぞ。弱っているとは言え、氷眼のサイクロプスはS級の危険種だ。正攻法では、絶対に倒せん。奴が息を多量に吸い込んだら、直ぐに距離をおき奴の正面に立つな。それに……絶対に奴と眼を合わせるな。凍らされるぞ。俺は、あの大岩を裏から登って配置につく。お前は合図を待て」
「ええ……」
リカステが、大岩に向かって動き出した。
※ ◇ ※
【スミレSIDE】
先生達、コソコソしているよ……。
リリーちゃんは先生達の戦い方を学んでって言っていたけれど……あの魔物、両足を無くしているから動けないし、体躯だけが大きい木偶の坊なんだからサッと行ってバサッと切り裂いて倒しちゃえばいいのに。
ユグちゃんの春の結界が有ればこんな寒さもへっちゃらだし、ディーネちゃんの水壁が有れば氷柱の攻撃すらも止められて効かないのに、何を先生達そんなに慎重になっているのだろう。
私は魔法と必殺の剣技を、リリーちゃんに禁止されているから普通に攻撃だけしか出来ない。
でも、リリーちゃんから教えてもらった【炎帝の夜桜】とかだと、真っ暗な闇さえも照らす炎の桜であんな魔物でも一撃で燃やし尽くして倒せるのに……。
それに、直線上にある全てのものを切り裂き燃やし尽くす必殺の剣技……【炎撃の華道】これも、通った後を炎の華が咲き乱れるのが綺麗なんだよね。
まあ確かにどちらも、私の制御が甘いせいでリリーちゃんの障壁がないと辺り諸共燃やし尽くしちゃうけれど……。
いくらAランク冒険者の戦い方を学べるって言っても、私既に勇者のスキルを全部使えるんだよね……制御は、まだまだだけれど。
※ ◇ ※
【リカステSIDE】
氷眼のサイクロプス……流石は、S危険種に指定されているだけは有る。
俺の長年の感が、警笛を鳴らしている。奴は危険だと。
クソッ! ひよっこを連れてきた、カトレアの精神を疑うぜ。
俺なら、絶対連れてこねえ。
カトレアの両肩に乗せている人形が気になるが、以前から戦う時には首から可愛い人形を下げていたからな……。
あれがカトレアの、戦闘姿勢なのだろう。意味は分からんが……。
格好を付けて断っちまったが、リリーちゃんの凄さはこの眼で見たから知っている。
しかし、今は野暮用でどこかにいっちまった。クソッ! 頼りにしたかったのに……。
あの剣技を放てば、遠距離から自在に攻撃できる。
しかも、本気を出していない状態であの威力だったからな……。
しかし、今はそんな事を悔やんでも仕方がない。
頼りになるのは、俺のこの豪腕とカトレアの疾風迅雷の剣技だけだ。
俺が大岩から飛び降りて、氷眼のサイクロプスの頭をかち割り、カトレアが止めを刺す。
それしか、方法が思いつかねえ!
クソッ! この国にもっと、高ランク冒険者がいてくれれば良かったんだが……。
失敗して対処出来なくなったら、俺が盾になって必ずカトレアとひよっこを逃がしてやる。
※ ◇ ※
【リリーSIDE】
「一体、見つけた!」
氷柱は持っていないけれど、一つ目で体躯が大きい。
普通の、サイクロプスかな?
「あっ! あっちにも、いる」
そして、サイクロプスから逃げるようにオークとゴブリンの集団が移動している。
オークとゴブリンを纏めて討伐しつつ、サイクロプスを一体ずつ倒す必要があるな。
「面倒ね。でもこんな時は、ワールドマップを開いて近接表示されている森の東半分の赤い光点を示す標的に標識を付ける。そうすれば、位置を特定できるよね」
でも、不思議な敵対を示さない光点と、敵対を示す大きな赤い光点は直接識別に行くので標識を外す。うん、これで良いかな。
詠唱しなくても放てるけれど、詠唱している方が異世界で魔法を放っているという実感がする。
でも、森を燃やさないように水魔法を唱えた方が良いだろうな。
今は周りに誰もいないし、容姿を十五歳にしてもいい。
服装は和服よりだから、狐のケモミミと尻尾が付いた巫女みたいな感じである。
ならば、巫女さんみたいに祝詞を唱えるとケモミミ巫女美少女になれる。
それに、厨二病的表現で詠唱を行って無詠唱で魔法を放てば格好が良いのだ。
よしでは、
「コホン! ……きゃるるん! 美少女リリー、中学生バージョンよ。てへっ、変身しちゃった」
いつもは、キノットさんのカフェバー&レストランで青いロリメイド服を着て給仕を手伝っているので和服姿は新鮮なのだ。
それに青いロリメイド服の時は髪の色を、ライトブルー、ゴールド、プラチナにしている事が多いが今回はブラックにしてみた。
全体像で見ても、頗る似合っている。
ではここで、神社でみかける神主や女性の神主が使う言葉を思い浮かべる。
うん、こんな感じだな。
「祓え給い、清め給え、ディーネちゃんかむながら守り給い、ワールドマップ近接表示に示され、我に仇なす、オーク、ゴブリン、サイクロプスを打ち払い給え」
そう言って祝詞を唱えると、至る所に居る水の微精霊や精霊達が姿を現し数え切れない程の魔法陣を前に構えた。
「あれ? 自身で魔法を発動させる前に、もしかして私やちゃった?」
刹那、無数の光線の様な水が誘導され、ワールドマップの近接表示に示されたゴブリンとオークの集団、それに、サイクロプス十体を撃ち抜きアイテムボックスに光りとなって収納された。
でも、これで残りは転移魔法陣の所にいる不思議な敵対を示さない光点と、敵対を示す大きな赤い光点だけだ。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。
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シルク「リリー何しているの?」
リリー「シルク、モフモフな兎さんと遊んでいたの」
シルク「げっ! それって、魔物の角兎でしょ?」
リリー「うん。でも、モフモフしてて可愛いよ? それに、ツンツンしてくるの」
シルク「角兎の、角が危ないのよ!」
リリー「じゃー、折っちゃう? 折って刺さらないようにすると、シルクでも
触れるよ。ほら見てみて、甘噛みしてる」
シルク「いやそれ、噛みついて攻撃しているのよ。もう、モフモフしてる子
だからって、何でも拾ってこないで元のところに捨ててきなさい。
ほら、自宅が角兎でいっぱいになってるわ」
リリー「うぅー……シルク、飼ったらダメ?」
シルク「ダメ! ほら、リリー早く捨ててきて」
捨て犬や捨て猫を拾ってきて、怒られた幼少の頃を思い出した
リリーであった。




