自宅にカトレア先生をご招待2
俺達は、カトレア先生を引き連れて自宅に繋がっている通路を通って大浴場に向かうことにした。
大浴場の脱衣所に着くと、スミレちゃんは俺の家に慣れるという事でメイドが居ない状態で王族として初めて一人で着替えをして服を脱ごうと頑張っていた。
「んー。んー。――――」
しかし、スミレちゃんは服に縺れていた。
服に縺れるなんて器用な事をする人、俺初めて見たかも……
着物の様に長い帯や変わった服装なら分かるのだが、今日の服装は一般的な貴族が着る服装だ。
しかも、何でそんな所から頭を出したの?
「スミレちゃん? 一体どうしたら、そんなことに?」
「リリーちゃん、助けて……」
「うん……」
俺は首を傾げながら、ユグドラシルと共にスミレちゃんの側に行く。
「ユグちゃん、スミレちゃんの服のそちら持ってて」
「はい、リリー様……」
スミレちゃん一人で、服を脱がさせるのは早計に過ぎたようだ。
いや、危険と言ってもいいかもしれない。
手伝ってくれたユグドラシルも「ユグもそう思います」と言っている。
なぜなら、手を通す所から頭を何故か出していたからだ。
危うく、首が絞まって窒息するところだった。
慣れるまでは、俺か誰かが脱ぎ方を教えてあげないと危険だ……。
「リリーちゃん、手伝ってくれてありがとう。私、頑張って着替えを覚えるね」
「あははは。うん……」
スミレちゃんが脱いだ貴族服と下着は、洋服専用修復ボックスに入れて綺麗にしてから再び取り出し脱衣籠に入れ小剣と杖も一緒にその上に置いた。
カトレア先生は、布の少ない服と下着を丁寧にたたみ自身の武器と一緒に脱衣籠に置いていた。
ユグドラシルから、
「あの者も大浴場に入ってきたようです」
と心情が伝わってきた。なので
「みたいね。今の所敵意はないし……様子見かな?」
と心情で伝え合った。
大浴場の脱衣所から大浴場に入ると、カトレア先生が立ち止まって辺りを見渡していた。
「こ……これは、城の湯場かしら? 凄く巨大なんだけれど……。貴族のお風呂って、皆こんなにも大きい物なの?」
カトレア先生の問いに、スミレちゃんが答える。
「カトレア先生? 私もリリーちゃんの自宅のお風呂は初めてなのですけれど、キノット夫妻のホテルも同様ですが、城や貴族のお風呂でもここまで巨大なお風呂は無いですよ?」
俺は早速アイビーをボディーソープで泡モコにしていると、カトレア先生が口を開けた状態でスミレちゃんの話を聞いていた。
カトレア先生は、冒険者特有の引き締まった身体に、ライムお姉さんには及ばないものの王妃のあれは既に越えている……Gか。
俺は最近お風呂であれを見慣れてきたせいか、分かるようになってきたのだ。
カトレア先生は俺の側に来ると、アイビーの泡モコ姿をみて
「リリーちゃん? その泡どうすれば良いの?」
と聞いてきた。なので、
「カトレア先生、好きな香りのシャンプーとリンスで髪を洗って下さいね。何種類かあるので、身体もお好きな香りのボディシャンプーをお使いくださいね」
と、伝えたのだが、恥じるように
「私が知っているのは、水浴び位なのだけれど……それは、何をする物なの?」
この様子だと、冒険者学校にもお風呂が無いのだろう。
貴族が多い学校ならお風呂が有りカトレア先生なら知っていると思ったのだが、冒険者を育てる学校だけあって王立ではあるがお風呂を設置していないのだろう。
「今アイビーば洗うとるけん、終わったらカトレア先生にお勧めば教えるばい。スノーと葵は、スミレちゃんば手伝うてあげんしゃい」
「はい、リリー様ぅにゃん」
「リリー様のお身体を、葵は是非洗いとうございましたが賜わりましたの」
これか……葵が狙っていた悪巧み。
「スノー様、葵ちゃん、お手数をお掛け致します」
葵はレズっ子だと思っていたが、スミレちゃんには普通に対応していた。
まさか、葵の狙いは俺だけか?
ユグドラシルから「そうです」と「当然です」という心情が伝わってきた。
俺はアイビーを泡モコにして、自身の葵に対する不安な心をアイビーの泡と共に綺麗に洗い流した。
ぽっぷん!
俺の頭の中で、眼鏡をかけた女神サラの女教師バージョンが出てきた。
「私の説明が必要なようね」
今度は俺の頭の中で、子供の頃の俺が出てきた。
「先生おねがいしまーす」
「今日は【手伝うてあげんしゃい】について教えるわよ」
「はーい」
子供の俺が席に座ると、女教師バージョンの女神サラが説明する。
「【てつどうてあげんしゃい】とは【手伝ってあげてね】という意味。つまり【スミレちゃんを、手伝ってあげてね】と言う意味なの。分かったかなー?」
「はぁーい」
「説明は以上よ。また少し難しいと思われる方言が出たら説明するわね」
「はぁーい。先生ありがとーございまーす」
妄想説明劇場が終了し、現実に戻る。
アイビーの次は、カトレア先生の番である。
「カトレア先生、こちらに来てくれん?」
「うん」
そんなに頬を染めて俺の元に来られても困るのだけれど……。
「カトレア先生、髪を洗うとき髪を労っていますか?」
「えっ? 普通に、水で洗っているだけよ?」
カトレア先生の、長い髪がかなり痛んでいた。
恐らくこの時代で髪を労うリンスなどは、一般的ではない若しくは無いのかもしれない。
俺は、カトレア先生に良さそうな良い香りのするダメージケアシャンプーを手で泡立てる。
「これ、凄く良い薫りね」
シャンプーを泡立てていると、カトレア先生が振り向いた。
「リリーちゃん、私はこのまま座って眼を瞑ってたら良いの?」
「うん」
振り向きざまに、カトレア先生の大きすぎるあれが俺の眼前で揺れて弾んでワッショイ状態。
思わず、俺は双眸を瞑った。
「リリーちゃん? 眼を瞑ると、何もできないわよ?」
カトレア先生がそう言っていると、ユグドラシルが俺の頬を刺激する。
「リリー様、ユグがお手伝いします」
そう言って、カトレア先生には俺の目にシャンプーが入ったので目を瞑られています。と説明をしてくれた。
しかし、ユグドラシル君? カトレア先生に対抗しているのかは不明ですが、二つの膨らみで俺の頬を刺激するのは恥ずかしいのでよしてもらいたいです……。
「リリー様、ごめんなさい」
「ううん。いいの」
もしかして、このユグドラシルの行動……葵に似てきた?
ユグドラシルから「リリー様、違います!」と慌てたような心情が伝わってきた。
「リリーちゃんに洗って貰って、頭も凄く心地が良いわ」
薫りと頭皮のマッサージが心地よかったのか、カトレア先生が眼を開けたようだ。
ユグドラシルから「リリー様、先生が眼を瞑っていませんよ」と心情に伝わってきた。
「カトレア先生、髪ばお湯で流すんで目を瞑ってくれん?」
「リリーちゃん? 目を瞑っているのに見えているの?」
「ユグちゃんが、心情で教えてくれるの」
「そうなのねー」
カトレア先生はその後、髪を洗い流す間目を瞑り従ってくれた。
「ユグちゃん、ありがとう」
「お役に立てて、何よりです」
ユグドラシルの、嬉しい気持ちが伝わってきた。
ユグドラシルが心情で指示してくれたお陰で、俺はどうにかカトレア先生の洗髪を終了させた。
その後も、リンス、コンディショナー、リペアヘアパックと順に使ってカトレア先生の髪を整えてあげたが、俺は目を瞑ったままだったのでユグドラシルの指示に従ったのは言うまでもない。
カトレア先生の傷んだ髪も、これで元の美しさになるだろう。
しかし、流石に大人の女性であるカトレア先生の身体をアイビーの様に洗う訳にはいかない。
いや確かに以前の男の俺であれば、ドストライクであるカトレア先生の身体を洗えるのは、絶好の機会で喜ばしい……いえ、何でもないです。
「コホン! リリー様?」
「ユグちゃん、心情読まないでね。お願いだから」
「――――? リリーちゃん?」
「カトレア先生、何でもないです」
俺は、ほのかな香水の薫りがするボディソープを柔肌用のタオル生地を使った物で泡立ててから先生に渡す。
「カトレア先生、身体はこれで洗うてくれんね」
「え? リリーちゃんが、洗ってくれるのじゃないの?」
カトレア先生は頬を赤らめながら、俺が先生の身体を洗うのを待っていたようだ。
「先生、リリー様も身体を洗われますので、ここからはユグがご説明します」
「そう?」
泡立てたタオルを受け取ると、残念といった表情をしてユグドラシルの指示に従い身体を自身で洗いだした。
俺は身体を洗った後、いつものように外の温泉の奥の縁につかまりゆっくり浸かっていた。
すると、スノーがやって来た。
「リリー様、温泉でお寛ぎ中ですが少し良いですかぅにゃん?」
スノーの表情はあまり変わらないが、深刻そうな雰囲気が伝わってきた。
「うん、いいよ。スノーどうしたの? 大事な話なら、眷属間テレパシーを使うといいよ?」
「では、『眷属間個人テレパシー』でスノーとのみお願いしますぅにゃん」
『「うん」』
『「実は、先日派遣していたスノーの分隊が消息を絶ちましたぅにゃん」』
『「えっ?」』
女神サラの事が心配になり、俺が出てきた女神の住まう大森林にある大木から戻れるかスノーに確認を取った。
しかし、その道は既に何者かによって完全に閉鎖され戻る事が出来ないらしい。
ならば、唯一戻ることができるスノーに今は任せるしか方法は無い。
『「只今、分隊を再形成し調査を行っておりますぅにゃん」』
『「……スノー、無理しないでね。もし魔力が必要なら、私からどんどん持っていっても良いからね」』
『「はい、ありがとうございますぅにゃん」』
巨大ゴーレムから出てきた、あからさますぎるフィギュア……管理者達に一体何が起こっているのか?
しかし、今はスノーに調査をしてもらう他は俺にできる事は無い。
自身の無力を感じつつ、俺は温泉の縁につかまって外を眺め勘考していた。
すると、小波による津波注意報が発令。
小波であっても、小舟である俺にとっては十分に警戒する必要がある津波だ。
湯船の縁を掴む手に力を入れた次の瞬間、小波と大波による津波警報が発令された。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。
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シルク「リリー、どう?」
リリー「シルク? 裸で踊ってどうしたの?」
シルク「何言ってるのよ? これは、リリーが教えてくれたスノーダンス
でしょ?」
リリー「もしかして、練習していたの?」
シルク「うん。もう今では、スノー様、葵ちゃん、ユグちゃんも踊れるわよ」
リリー「じゃあ、後はスミレちゃんとアイビーね」
シルク「アイビーは、この動きできないでしょ? でも、レモンちゃんも
踊れるようになったわよ」
リリー「私を合わせて七名……そろそろ、アイドルグループでも立ち上げ
ようかな?」
密かな計画が、現実になりつつある事に笑みを浮かべるリリーであった。




