自宅にカトレア先生をご招待1
俺とスミレちゃんは、カトレア先生を強引に自宅に引っ張っていった。
先ほどから自宅と何度も言っているのだが、実はキノットさんのホテルの事では無い。
以前買取りした学校の直ぐ裏の空き地で、キノットさんの元宿の裏でもあった空き地はかなり広大で、ホテルを建てたのだがまだまだ空き地があるのだ。
なので折角ならと、以前大洞窟で建築した豪奢な二階建ての家を再建築し、更にキノットさんの宿の裏に以前建築しアイテムボックスに収納していた温泉付き大浴場も、その豪奢な二階建ての家と繋げるようにして再建築したのだ。
再建築と聞くと大げさに感じるだろうが、アイテムボックスから――「今日の献立は、二階建ての屋敷と大浴場温泉付きの合わせ丼です」みたいな感じで「ポン!」と「ポン!」と出して神級建築士の能力で組み合わせて、合成建築でハイできあがりです。っと、三分もかからないので即席ラーメンより早く出来て簡単なのだ。
そして学校の寮の真裏にある巨大な壁に、予め王様から許可を貰って扉を作り通れるように魔改装した。
それに、キノットさんに作ったホテルも俺の自宅と特殊な鍵付きエレベーターと繋がっており、ホテルとも自由に行き来可能である。
魔改装した壁や特殊な鍵付きエレベーターは、どちらも通常では見えないようになっており、魔方陣を常に稼働させ俺が認めた者以外は魔方陣すら見えないように隠蔽されているのだ。
そして、隠蔽された魔方陣を解除できるのは俺を含め俺の魔法認識で認識されたキノットさんの家族、スノー、葵、ユグドラシル、シルク、アイビーだけなんだよね。
今日からは、そのメンバーにスミレちゃんが加わることになる。
今回はカトレア先生をお客様として招待するので、魔方陣を見えるようにさせている。
「カトレア先生、ここです」
「え? 学校の壁に、こんな魔法陣有ったかしら?」
俺は魔方陣の封印を解除して扉を出現させ、扉の鍵を魔方陣キーに手を翳す事で解除させた。
この魔方陣と鍵の組み合わせ、安全や防犯上には良いのだが、通るまでに時間が数秒かかってしまう。
もう少し、改良の余地が有るかもしれない。
「カトレア先生、スミレちゃん、中に入ってくださいね」
「えっ? ええ」
「リリーちゃん、入ったよ」
俺達が壁の中を通り過ぎると、再び壁と魔方陣となり魔方陣の隠蔽が再び行われる。
壁から更に通路があるので、通路を抜けると再び扉が有る。
「リリーちゃん? ここ、何か封印されているの? 厳重すぎると思うのだけれど……まるで、天災級の魔物が封印されていたり、国宝級の宝が守られているような……」
「えっ? カトレア先生、大げさですよ。ただ、私の自宅に行くまでの通路ですよ?」
扉の封印を解除し、魔方陣の描かれたカードキーで解除すると自宅の扉を開くことができるのだ。
「……いえ、これ絶対何かが封印されている扉よ」
俺は、怯えるように最後尾にいるカトレア先生に苦笑いを浮かべ自宅の扉を開けた。
中に入ると、スノー達もカフェバー&レストランのお手伝いを終えて自宅に戻っていたようだ。
「リリー様、ユグちゃん、おかえりなさいぅにゃん」
「リリー様、ユグちゃん、お勤めご苦労様ですの」
「スノー、葵、ただいまー」
「スノー様、葵様、ユグも只今戻りました」
スノーと葵は、カフェバー&レストランで給仕のお手伝いをしているので寝るとき以外は最近人型に変化している事の方が多い。
スノーと葵の声に、シルクとアイビーが振り向き、俺の前まで一緒にきた。
「リリー、ユグちゃんおかえりぃ。私、もうお腹ペコペコよ」
「ワン、ワオーン。ワフ? ワン、クウーン?」
『リリー様、ユグちゃん、お帰りなさい。あれ? シルク、さっき何か食べてなかった?』
「バカ犬は、わんわん五月蝿いわね」
「シルク、アイビー、ただいま」
「シルク様、アイビー様、ユグも只今戻りました」
シルクが、俺の後ろにいるスミレちゃんに気がついた。
「あれ? パープルちゃん学校側から来てどうしたの?」
シルクは、スミレちゃんが入口からではなく裏口の冒険者学校側から来たことを不思議に思ったようだ。
「スノー様、葵ちゃん、シルクちゃん、アイビーちゃん、本日よりパープル・パンジー・フォレストムーン改め、リリーちゃんより命名を受けた事でリリーちゃんの使徒となりましたスミレです。今日からリリーちゃんの自宅でお世話になります」
スミレちゃんの返答に、シルクが俺にジト目を向ける。
「リリー? 最近美少女を増やしすぎよねー」
またもシルクが、スミレちゃんの後ろにいる人物に気がついたようだ。
「で……後ろにいる、大きなあれを持つスレンダー美女は誰?」
シルクの目線が、カトレア先生のあれに集中している事が気になるが……
カトレア先生が、少し戸惑うように自宅の中に入ってきた。
「えっと……私は冒険者学校の教師をしている、カトレアと申します。リリーちゃんとスミレちゃんに拉致されてきました」
いや確かに、少し強引ではあったが
「先生拉致って……」
「だって、無理やり私をリリーちゃんとスミレちゃんが引っ張って来たから……」
話していると、シルクの腹の音がグウグウと響き渡った。
朝の入学試験で、もうすでにお昼を過ぎている。
それに、キノットさんのカフェバー&レストランで手伝いをしてお腹が空いたのだろう。
ホテルに行って、キノットさんにパンケーキを作って貰おうと思っていたのだが、シルクのお腹が鳴る様子からして俺がこの場で直ぐに作った方がよさそうだ。
俺はテーブルの上に、フワフワモコモコスペシャルパンケーキと、ロイヤルミルクティーを器に入れて出した。
カトレア先生が俺がその場で出したパンケーキに驚いていたが、今朝作って貰ってアイテムボックスに収納していた物ですと伝えると、収納魔法が使えることにも驚愕をしていた。
なので、パンケーキにカトレア先生の興味が行くようにと、スノーの子虎バージョン、アイビーの子狼バージョン、それに葵の子狐バージョンの姿をしたものを出してあげた。
キノットさんは、まだこのキャラクターパンケーキの技術に到達していないので、カフェバー&レストランでは提供していないが致し方ないだろう。
それらを皆に振る舞い、今日の試験の事などを皆で話した。
俺が思っていたとおり、魔法を学べる環境である裕福な者や冒険者の中でも魔法を習得している師がいる者だけが魔法を使用でき、普通に生活する者は魔法を使用できないとの事だ。
やはり、魔法が一般的ではない事から魔法を習得している者であっても理解するのに時間がかかり、そこまで強力な魔法を放てない原因なのだろう。
カトレア先生は、周りの豪奢な家具、絨毯、絵画等が有る事に目を泳がせていた。
が、パンケーキを一口頬張ると蕩ける様な笑顔を見せて子供の様に燥いで食べていた。
女性が甘味好きなのは、異世界であろうとどこの世界もやはり万国共通のようだ。
アイビーが、俺の足下に来て尻尾で合図してきた。
「ひゃっ! アイビーこそばゆいけん」
「ワン、クウーン」
「リリー様、皆汗をかかれているようです」
確かに、朝から皆それぞれ試験を受けに行ったり、試験官になったり、給仕をしたり、注文係をしてかなり汗をかいている筈だ。
「アイビー、ごめんね。私匂った?」
「ワフ、ワン、ワン、ワン、ワン、ワオーン。クウーン……」
『いえ、リリー様、スノー様、葵様、ユグちゃんは匂いません。ですが、シルク……』
「アイビー? それ以上は、言っちゃダメよ」
「ワン」
『はい』
アイビーは狼で鼻が良い。しかも、悪意がない。
でも正直すぎて、女の子に対して少し繊細な心遣いが足りないんだよね。
特に、シルクに対して……今でも、シルクの匂いを嗅ぎにいっている。
シルクはシルクで匂いを嗅ぎに来られたことを怒っているが、満更でもないようだ。
カトレア先生とスミレちゃんの所に、アイビーが行く前に対処しないと……
「カトレア先生、朝から大変で汗もかかれているでしょ? 一緒にお風呂でも如何ですか?」
「そうねー……朝から嫌な冷や汗は何度もかいたけれど、お風呂って本当に有るの? 確かに、ここは貴族の屋敷を彷彿とさせる豪奢な屋敷ですけれどね」
俺とカトレア先生が話をしていると、葵が眼を光らせた。
「ここのお風呂は、女性なら特にお勧めですのよ。外の温泉の効果には、美肌効果、肩こり、腰痛、神経痛、肌荒れ改善など各種健康にも良いんですのよ。うふっ」
葵が、また良からぬ事を考えていなければ良いのだが……
ユグドラシルが「リリー様は、ユグがお守りします」と葵に対抗心を向けていた。
「リリーちゃん? 私も、ここの温泉は初めてなので今から楽しみです」
スミレちゃんは俺の自宅に何度も来ているが、護衛やメイドそれに王族の誰かが必ず一緒について来る。
王妃と第二王女が一番多いのだが、時に王や王子も一緒に来るのでキノットさんのホテルのラグジュアリーVIPルームを借りている。
そして、ラグジュアリーVIPルーム専用の大浴場を使ってもらっているのだ。
キノットさんのホテルにも、一般大浴場の外に有る温泉には同じ効果は有る。
しかし、流石に王族に一般の大浴場の温泉はね……なので、スミレちゃんは温泉が初めてなのだ。
「スミレちゃんが前入ったのは、私が作ったキノットさんのホテルのラグジュアリーVIPルーム専用大浴場だったからね。今日の大浴場は、外にも温泉が有るの。その温泉がお勧めよ」
「今度、お母様も連れて来ても良いかな?」
「ラグジュアリーVIPルームでなくていいなら、王妃様とホワイトバイオレット王女も連れて来ると良いよ」
「お母様、今は心配事も無くなったらしいけど。以前は心配事で眠れなくて、よく肌が荒れるって言ってたから……」
恐らく、王妃様の心配事は第二王女の病の件だったのだろう。
ホワイトバイオレット王女の病も全快したし、もう心配はないから安心だ。
それにしても、この気配とワールドマップが示す黄色い光点……俺が冒険者学校側から自宅の扉を解錠すると同時に侵入してきた。
今の所敵意は無いし、スノーや葵、それにユグドラシルも感じているようだが俺のように様子をみているようだ。
魔力量も俺……比べる対象が俺では酷か?
感づいている者の中で、一番魔力量の低いユグドラシルよりも遥かに魔力量も小さいし放置していても問題ないだろう。
まあ、今はそんな事よりも温泉だ。
カトレア先生を引き連れて自宅に繋がっている通路を通って大浴場に向かうことにした。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。
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シルク「リリー、後ろを振り返ってどうしたの?」
リリー「別に、何でもないよ?」
シルク「ほら、また振り返った……もしかして黒い悪魔?」
リリー「この家にそんなものはいないよ?」
シルク「いえ、あの黒い悪魔はどこにでもいるわ」
リリー「シルクのお家に、いたの?」
シルク「食べ物の有るところには、どこにでもいるの。私達はあの黒い悪魔が
現れると、軍隊で討伐にあたるの」
リリー「確かに、シルク達にとっては大きいものね」
シルク「だから、私達は黒い悪魔に対して、日々訓練を怠らないわ。今もこう
して、私は食料を守りながら自信の技量を磨いているのよ」
アイビー『シルク? 僕の背中でお菓子食べて、尻尾で遊ばないでよ』
リリー「アイビーの尻尾、愛らしいばい」
シルクと一緒に、アイビーの尻尾で遊ぶリリーであった。




