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女の子は甘いものと可愛いものが好き

 各生徒が寮に荷物を置きに行く中、俺はカトレア先生を呼び止めて確認する。



「カトレア先生、私は推薦状に書かれてある通りに自宅からで良いですか?」

「ええ、本来は遼で生活するのが望ましいのですけれどね。学校の直ぐ裏ですし、国王様の指示が有るので自宅で構わないわよ」



 カトレア先生が、笑顔で答えてくれた。

 いくら国王の指示があるとは言え、この冒険者学校では上下関係を王命により禁止し罰則を設けており、色々と議論が起こったはずだ。

 ならば、それを誰がこの短時間でまとめ上げたのか? 

 恐らく、状況からしてカトレア先生が便宜を図ってくれたのだろう。

 俺とスミレちゃんの実技試験……今まで俺が体験した事柄に比べると、大した事では無い。

 しかし、改めて考えると担当してくれたカトレア先生にはかなり迷惑をかけたのではなかろうか? 

 まあ、その受験生の引き起こした行為も担当者が対処しなけらばならない案件ではあるのだが……

 俺が勘考していると、先ほどまで姿を消していたユグドラシルが姿を現した。



「リリー様……こしょこしょこしょ」



 因みに、ユグドラシルが俺の耳元で色々と話をしてくれているのであって擽っているのではない。

 しかし、最近ユグドラシルは葵の影響を受けた。



 ぽよん! ぽよん! 



「ひゃい! ユグちゃん、ごめんね」

「リリー様、お気になさらないで下さい」



 俺が顔を少し横に向けると、ユグドラシルの大きく主張する膨らみであるあれ(・・)が頬に当たるのだ。

 精霊で肉体が無いのにも拘わらず、最近俺の側で姿を現す場合は、わざわざ肉体と実体を魔力で形成する。

 元々仲間意識が強いユグドラシルは、召喚仲間としてスノーと葵にも懐いている。

 懐いているが故に、俺に対して葵の変な行動が許せなかった。

 葵が俺に悪戯をしようとすると、わざわざ肉体と実体を魔法で形成してから姿を現し俺を葵の魔の手から守護するようになったのだ。

 つまり、葵のせいでユグドラシルが側で出現している時は必ず肉体と実体を魔力で形成するようになったわけだ。

 その弊害とも言える……男であれば最高の場面が、ユグドラシルが姿を現している場合に何度も発生するようになったのだ。



「え? ユグちゃん、自宅に? カトレア先生を?」

「はい」



 俺とユグドラシルが話をしていると、カトレア先生がそれを見据えていた。



「ねえ、ヴァリーさん?」



 ……ヴァリーさん? あっ! 俺のことか。

 今まで、リリーちゃんとしか呼ばれていなかったので一瞬分からなかった。



「はい?」

「凄く良い薫りが、その子からしてくるのだけれど……その子は?」

「ああー、ユグちゃんね」



 いつもは俺が説明していたが、ユグドラシルに説明してもらった方がいいかな。



「ユグちゃん、よろしくね」

「はい、リリー様。私は、花の中位精霊王女ユグドラシルです。リリー様に召喚され、ここに存在しております。カトレア先生、是非ユグちゃんとお呼び下さい」

「ユグちゃん説明ありがと」

「いいえ」



 カトレア先生が、口を開け閉めしていたが言葉が出てこない。



「カトレア先生、どうしたの?」



 俺が小首を傾けて、カトレア先生を見上げると



「ヴァリーさん? ユグドラシルさん……」



 ユグドラシルが、カトレア先生に「ユグちゃん」と言ってほしいと眼で訴えているようだ。



「えっと、ユグちゃん? は、中位精霊ってリリーちゃん本当なの?」

「ユグちゃんが、そう言っているからそうと思いますよ?」



 カトレア先生が、真剣な目差しで俺を見据える。



「中位精霊って精霊の中でいうと、ヴァリーさんどの位か分かる?」

「いえ? 私は、知らないです」

「はぁー……。そう言う私も、詳しくは知らないのだけれど……確か、大精霊より上の存在の筈よ?」

「ふぇ?」



 中位精霊って大、中、小とあった場合、大精霊の一つ下ただと俺は思っていた。



「リリー様、ユグがご説明致します」

「うん……ユグちゃん、お願いね」

「はい。大精霊は小位精霊の一番上の存在です。微精霊や精霊はその小位精霊の下位部類に入ります。私は中位精霊の中でも上の存在、第一王女です。それに……」



 ユグドラシルから『心情』が伝わってきた。



『「中位や精霊とリリー様の中では、翻訳され理解されていると思います。ですが、本来ユグの正式な文字は中位や精霊ではなく、中偉や聖霊です」』

『「えっ? 誤字変換?」』

『「いえ、リリー様の世界の翻訳として適当なものを【文字言語自動変換LV2】が選ぶ際に、天使の例え、精霊の例え、聖霊の例え、などが曖昧に変換されたがために起こったものだとユグは判断します」』

『「じゃあ、私だけ花の中位精霊王女ユグドラシルと見えていたけれど、本来は花の中偉聖霊王女ユグドラシルなの?」」

『「リリー様には変換が曖昧になるため、正式なものがやはり伝えられませんが偉も少し違った意味合いがあります。異世界における優劣も含まれます」』

『「じゃあ、なんとなくの例えとして俺の世界の軍のように――」』


「細かくではなく、本当に大まかな位で例えると、上から将官として大将、中将、少将、それに佐官として、大佐、中佐、少佐、それに尉官として、大尉、中尉、小尉などがあるのだけれど」


『「もしかして、ユグドラシルは……」』


「リリー様、完全ではございませんが……考え方としてその様なお考えと言って良いと思われます。ユグの場合はその中でしたら大佐になります。大精霊は、その中では大尉ですね。一般的な精霊や微精霊達は、その中には含まれない下位の存在となります」


『「だから、ユグドラシルは急激な成長を遂げて、一時期魔力が不安定になったんだ」』


「リリー様、その通りです」

「カトレア先生……だそうです」

「ヴァリーさん? 途中で、私の知らない事や、貴女達だけで納得している事が沢山出てきたので分からないのだけれど……」

「カトレア先生? つまり、私のユグちゃんは可愛い聖霊さんなのです。それと、ヴァリーではなくてリリーと呼んで下さい。ヴァリーと呼ばれるのは、慣れていないので……」

「私には貴女の説明がよく理解できないのだけれど、兎に角リリーちゃんは凄いと言うことは分かったわ」

 ユグドラシルから「リリー様、パンケーキの話題を」と心情が伝わってきた。

 そう言えば、先ほどユグドラシルとこしょこしょ話し合っていたんだった。



「カトレア先生、今話題のパンケーキ屋さん知っています?」

「知っているわよ! でも良い物は高いし、一般向けは人気がありすぎて私では手が出せない高嶺の花なのよ」



 実は、俺が色々とカトレア先生に迷惑をかけたかもしれないと勘考しているとユグドラシルから提案があったのだ。



「リリー様、女性は皆甘いものと可愛いものが大好きな方が多いのです。そう言うユグも甘いものと、可愛いリリー様が大好きです」

「私も、ユグちゃん大好き」

「えへへ、ユグ嬉しいです。……話が脱線しましたが、先ほどリリー様がお悩みになっていた件について、ユグからご提案があります。色々とカトレア先生のお手を煩わらせたお詫びに自宅に招かれてパンケーキをご馳走しては如何でしょうか?」



 と言われたのだ。

 いや、途中でユグドラシルと相思相愛になっていたけれど、それは置いといて……。

 なのでカトレア先生に



「もし良かったら、パンケーキ屋さんは自宅のすぐ裏ですし知り合いが作っているので食べられますよ? それに、お風呂もあるので入れますよ?」

「そお? って、えっ、えー? 私? 私、大人気のパンケーキ食べられるの? それに、貴族位しか入れないお風呂も入れるの?」



 ユグドラシルが、こしょこしょ話してくれた通りカトレア先生が食いついた。

 実はキノットさん夫妻がパンケーキを作れるようになってから、貴族や裕福な人達だけではなく一般の人達にも食べて頂けるように低価格のパンケーキも提供するようになったのだ。

 すると連日満員御礼でてんやわんや状態になり、レモンちゃんが俺達に手助けを求めてきた。

 なので新しく給仕人を雇うまでは、毎日俺やスノーそれに葵が給仕をして注文係をシルクとアイビーがするようになったのだ。

 しかし、今度は給仕人や注文係が可愛いという噂が噂を呼び今では行列が凄いことになっている。

 今日は俺が冒険者学校の試験を受けに行くということで、スノー達に手伝いに行ってもらっているのだ。

 カトレア先生を自宅に誘っていると、スミレちゃんが側に来て腰を落とし俺を見据える。



「リリーちゃん、お願い聞いてくれるかな?」



 スミレちゃんも、パンケーキが食べたくなったのだろうか? 



「スミレちゃん、どうしたの?」

「私も自宅からじゃなくて、リリーちゃんと一緒に住みたいの」



 スミレちゃんの言葉に、カトレア先生が反応する。



「そう言えば、確かスミレちゃんも自宅からと書状に書いて有ったわね?」



 カトレア先生が、俺とスミレちゃんの顔を見据えているので良い機会だと思い



「カトレア先生? スミレちゃんの顔を、よく見てもらえますか?」

「リリーちゃん? シーって、言ってるでしょ?」



 スミレちゃんが、シーと言って立ち上がった。



「だって、いずれ知られる事ですし……カトレア先生は、知っておいた方が良いと思うの」



 カトレア先生が、目をこらしてスミレちゃんを見据える。



「――――。――――」



 俺は背伸びをして……届かないので、



「スミレちゃん、もう一度屈んでくれるかな?」

「うん……?」



 スミレちゃんに屈んでもらい、後ろに回り髪を触る。



「リリーちゃん、どうしたの?」



 と、不思議な顔をしていたが



「ほら、髪型をこう変えると……」



 流石にカトレア先生も分かったようで



「王女殿下!」



 と言って、佇まいを正して跪いた。

 スミレちゃんが



「カトレア先生、他の人には内緒にしてね」



 と言って、カトレア先生の手を引いて立たせた。



「もお、リリーちゃん? 内緒にしていたのに……だから、一緒に住んでもいい?」



 スミレちゃんは、口実が出来たと喜んで俺に問い質した。

 まあ最近殆どスミレちゃんは、俺の自宅に入り浸っているし恐らく問題はないだろう。

 だって王様や王妃、それに王子や第二王女まで遊びに来るのだからね。



「いいよ、部屋も一杯有るし。足りなければ、別亭を作るから。側付きメイドも、一緒に暮らしてもらってお世話してもらうと良いよ。うちの皆も居るから、喜ぶと思うしね」



 俺とスミレちゃんが話していると、カトレア先生が疑問を問いかけてきた。



「えっ? 護衛騎士の方々は、どうされるのですか?」

「お父様によると、リリーちゃんが一人いるだけで、精鋭王国騎士団一千人以上に匹敵するんですって。だから送り向かい以外は必要ないそうよ?」



 カトレア先生が、呆然としていたが……仕方がない。

 俺も信用されているとは言え、騎士の数名は護衛として来てもらいたいものだ。

 そう言う意味でも、スミレちゃんを勇者にして良かったと思う。

 恐らく、既に護衛騎士達でさえスミレちゃんに攻撃されたら為す術が無いと思う。

 今日はこれで解散らしいので、スミレちゃんとカトレア先生を自宅に招待する事にした。



「カトレア先生も、一緒に来てね」



 俺がカトレア先生を見上げて小首を傾けると



「わっ、私は良いわよ。殿下と一緒だ何て、恐れ多いしですし」



 カトレア先生が躊躇(チュウチョ)していると、スミレちゃんが笑顔を向ける。



「先生、今度から殿下は禁止ですよ。私のことはスミレちゃんと呼んで下さいね」

「えっと……スミレちゃん? それは、王女様のご命令ですか?」



 カトレア先生が困った顔で、スミレちゃんに尋ねている。



「カトレア先生が聞き入れてくれなかったら、それでもいいですよ」



 スミレちゃんが、少し怖い事を言っているが気にしないでおこう。

 気を取り直すために、俺はカトレア先生にもう一度声をかける。



「ほら、カトレア先生。青い顔してないで、私の家に行きますよ」



 俺とスミレちゃんは、カトレア先生を強引に自宅に引っ張っていった。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

レモン「シルクちゃん、これ着てみて」

ライム「レモン、いいの? この子の、お気に入りなのに」

シルク「レモンちゃん、良いの?」

レモン「私、シルクちゃんも大好きだから」

シルク「レモンちゃん、ありがとう」


リリー「シルク、ニヤニヤしてどうしたの?」

シルク「リリー、見てみてー! レモンちゃんが、お気に入りのお人形さんの

    服をくれたの。それをね、ライムさんが少し手直してくれたのよ」

リリー「へー……」

シルク「うふ。可愛いでしょー」

リリー「うん……」

    中綿が、洋服の胸の辺りに沢山詰まっていた事を見て見ぬふりをする

    リリーであった。

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