ホテルのカフェバー&レストランが大賑わい
俺が皆を連れて説明して回るのに昼過ぎまでかかったため、ロビーで休憩していると豪奢な馬車がホテルの前に止まった。
そう言えば、立て看板にお昼過ぎからパンケーキの販売を開始する事を書いた事を思いだした。
「あっ! お昼からパンケーキ販売だったわ。スノー、葵、人に変化してお客様を招き入れるのを手伝ってくれるかな?」
「はい、リリー様ぅにゃん」
スノーは練習の成果もあり、自然に振る舞いつつ可愛い仕草と語尾で俺に応えた。
「承知致しましたの……ぅにゃん」
葵もスノーに負けじと可愛い仕草をしたが、語尾が恥ずかしかったのか語尾がぎこちなかった。
確かに、お嬢様の様な口調にこの口調は難易度が高いかもしれない。
というか、無理に真似をしなくても良いのだが……。
「スノー、仕草も凄く良い感じよ。葵はそのままでも可愛いから、スノーの語尾真似しなくてもいいわよ?」
「はい、ですの。でも、仕草が可愛いので仕草は真似しても?」
「うん、葵にまかせるね」
「はい、ですの」
スノーと葵は、前の宿屋とは大きさからして違い、良い意味で変貌を遂げたホテルの入口に向かいお客様の向かい入れをしだした。
「シルクとアイビーはキノットさん達にパンケーキの準備をお願いしてきてね」
「任せなさい」
「ワン」
『はい』
シルクはアイビーに乗って、キノットさん達がいるカフェバー&レストランに向かった。
『「お客様の分のパンケーキ食べないでね」』
俺は心配になって『従者間テレパシー』を行った。
従者間テレパシーも、管理者レベルが上がった事で双方で通信できるようになったのだ。
『「――――。――――」』
『「はい。僕がシルクを管理して食べそうだったら止めますので、リリー様ご安心を」』
『「ちょっと、アイビー? 私の決心が固まる前に言わないでよ」』
『「アイビー、シルクの事お願いね。頼りにしているわ」』
『「はい」』
『「ちょっと、リリーとアイビーだけで話を纏めないでよ」』
俺はシルクの話が長くなる前に『従者間テレパシー』を終了させた。
そう言えば、ユグドラシルは花の精霊だ。
ならば、リラクゼーション施設のように花の薫りでお客様を入口からもてなすのも悪くないのではないだろうか?
俺がそう勘考していると、ユグドラシルから出来ますよという心情が伝わってきた。
「じゃー、ユグちゃん。良い花の薫りを、ホテルのフロアーや周辺にお願いできるかな?」
俺がそう言うと
「はい、リリー様」
と、言ってユグドラシルが姿を現し、辺りに仄かな花の薫りが漂いだした。
「うん、良い薫り。これなら、パンケーキや朝の食事にも差しつけえ無い薫りだわ。ユグちゃん、ありがとっ」
「ユグも、お役に立てて嬉しいです」
と言って、俺の左肩に腰掛けた。
ユグドラシルは、花の精霊の中でも一際美しくて可愛い。
なので、マスコットみたいに俺の左肩にいても問題は無い。
それに、シルクも俺の右肩によく腰掛けたりしているので違和感もないのだ。
勿論、シルクも美しくて可愛いのでマスコットとしても問題は無い。
但し、大食らいではあるが……。
「じゃー、ユグちゃん。私達も、お客様を招きに行きましょ」
「はい」
そう言って外に出ると、護衛騎士の騎馬隊達に守られた他の馬車より一際豪奢で大きな馬車から王妃と王女がメイド長に支えられ降りてきた。
そして、普通の馬車からはメイド達が数名降りてきてメイド長の後ろについた。
「リリーちゃん夕方まで待てなくて、お母様と一緒に来ちゃいました」
「リリーちゃん、ごめんね。私も待ちきれなくて、パープルについて来てしまったわ」
パンケーキを楽しみにして来ていた貴族夫人達が驚く中、王妃と王女が俺の側に来た。
俺も混乱が起こらないよう、王妃達に小声で
「ようこそ、王妃様、パープルちゃん。本日、私が建築創造したホテルにようこそ」
と言った。すると、
「……リリーちゃんが、創造されましたの?」
と、小声であったが王妃様の声が若干震えていた。
震える声音には、驚きと歓喜が入り交じっていたが他のお客様達に迷惑がかからないように早く入口に案内しなければならない。そんな中パープルちゃんが、
「えっ? リリーちゃんが作ったの?」
と言って大声を上げた。
他の貴族夫人達は、王族が現れた事で驚いていたがスノーと葵が上手くお客様達を案内していたので貴族夫人達も驚いているものの中へ入っていったようだ。
「しぃー! パープルちゃん、声が大きいって」
「あっ、ごめんねリリーちゃん」
俺が王妃と王女を入口に案内すると、後ろにはメイド長率いるメイド達と騎士達が一緒についてきた。
入口で待っていたお客様達を、案内していたスノーと葵が手が空いたようなので、面識があるスノーに変化を解いてもらい王妃達に紹介することにした。
「この子は人に変化しているスノーです」
「王妃様、王女様、ご機嫌麗しゅうございますぅにゃん」
「まあ、スノー様だったのですね」
「リリーちゃん、スノー様可愛いです」
「スノー、変化を解いてみて」
ポン!
「うにゃん」
「やっぱり私達には、スノー様はこの姿の方が見慣れているわね」
「そうですね、お母様。キャー、スノー様小さくて可愛い」
王妃と王女は、スノーの変化に少し驚いていたものの直ぐに元に戻った。
再びスノーに人の姿に変化してもらい
「スノー、暫く王妃様達を任せるね」
と言って、スノーに王妃達のことを任た。
「はい、リリー様ぅにゃん」
「王妃様、パープルちゃん、スノーとロビーで少し待っていてね。大型の馬車を止める場所を騎士に教えてくるから」
「「はい」」
王妃と王女と付き添い達に少し待つように伝え、馬車を管理していた騎士に一階の自動シャッターの前まで案内した。
「リリー様、お手を煩わせて済みません」
「いいの。気にしないで」
そして、馬車駐車場と馬の管理施設に案内してから騎士と共にロビーに戻って来た。
実は、他の貴族の馬車はモフモフな子虎と子狐と子狼の警備ゴーレムに任せられたのだが、思っていたより王妃達が乗ってきた馬車が巨大だったのだ。
なので、大型の馬車が止められる所に自ら案内した訳だ。
どうやら、大型の馬車が止められる駐車場もモフモフ警備達に教える必要がありそうだ。
ふー、やれやれ。
まさか、大型二階建てバスみたいに縦も横も高さも大きな馬車で来るとは思わなかった。
俺が戻って来ると、王妃と王女が挙ってロビーにある絨毯やソファー等の豪奢な家具や絵画に目を奪われていた。
「まあ、素敵な椅子だわ。王室に有るどの家具より洗練されていて、何もかもが豪奢だわ」
「そうですね、お母様」
帰って来ると、スノーは人型から幼虎になって王妃と王女に撫でられていた。
まあ、その姿の方がどちらも落ち着くよね。
「王妃様、パープルちゃん、騎士様、メイドの皆様、お待たせ致しました」
俺はキノットさん夫妻に、王妃の相手をするので一階のにあるカフェバー&レストランのことを任せることにした。
「キノットさん、ライムお姉さん、レモンちゃん、手伝えなくてごめんね」
「いや、シルクちゃんとアイビーちゃんが、手伝ってくれてるから助かるよ」
「そうよ、リリーちゃん。なので、王妃様と王女様は、お任せするわね」
「はい」
「リリーちゃん、レモンが給仕頑張るから大丈夫!」
「レモンちゃん頼りにしているわ」
「うん」
お昼からのパンケーキを、既にキノットさんが作ってお客様に提供していたが、念のために口の肥えたお客様用に一部俺が作った百皿分をライムお姉さんに渡した。
「ライムお姉さん、もしもお客様に口が肥えたお客様がいたらこれを」
「リリーちゃん、ありがとう。助かるわ」
「ライムお姉さん、王妃様と王女様を最上階に案内してくるね」
「うん、ありがとう」
俺はライムお姉さん達と別れて『眷属、従者テレパシー』を使用する。
『「シルク、アイビー、そちらはどう? 大丈夫?」』
『「凄い人数が来ているわ。私とアイビーが注文係をしているけれど、ライムさんとレモンちゃんでは給仕係が少し足りないわね。パンケーキを運べない分、注文係は引き続き私達が行うけれど……」』
『「僕も、シルクを乗せて走ってます」』
『「シルク、アイビー、ありがとう。でも、大丈夫?」』
『「任せなさい」』
『「頑張ります」』
シルクとアイビーにお願いしていると、
『「リリー様、私が給仕係を致しますわ」』
『「葵、給仕できるの?」』
『「リリー様、私はアニメで何度もメイドのお仕事を見て日々研究を行い、いつか鈴様に美少女メイドの愛情オムライスを食べて頂こうと日々努力していましたの。なので、お任せ下さいまし」』
『「えっと、葵? アニメとは違うから、ドジっ子メイドとか人に迷惑がかかることは禁止ね」』
『「えっ? ……」』
『「えっ? じゃないから! 絶対よ?」』
『「はい……ですの」』
葵、大丈夫かな?
『「リリー様、スノーも給仕をお手伝い致しますぅにゃん」』
『「ごめんね、スノー。それと、葵が変なことをしないように見張っていてね」』
『「はい、リリー様ぅにゃん」』
『「リリー様、質問ですの」』
『「葵、どうしたの?」』
『「私には、メイドとしてゆずれない給仕の思いがありますの」』
『「葵、言ってみてくれる?」』
『「葵の愛が入ったおまじないを、パンケーキにかけても良いですわよね?」』
『「まあ、それくらいは……ね」』
『「感謝致しますの!」』
俺はスノー達にパンケーキと朝の朝食の事を任せて、王妃様と王女様と付き添い達を一階奥の専用エレベーターから六階のラグジュアリーVIPルームに案内した。
王妃達を案内すると、メイド長が声をかけてくる。
「怖れながら、リリー様。この上下に動く大きな箱といい、先ほどのロビーと言われる場所でさえ、もう既に王城に有るどの豪華な部屋さえも超越していたのですが……」
「そうなの? まあでも、皆座る所が一杯有るので好きな所に座っても良いからね。私のフワモコスペシャルパンケーキとロイヤルミルクティーを直ぐに作るから、少し待っててね」
「リリーちゃんの、フワフワモコモコスペシャルパンケーキ楽しみ。ねえ、お母様」
「そうね、私もそれが楽しみで来たのだけれど、ここはもう既に別のお城みたいだわ」
俺は王妃と王女を、一番座り心地が良い席に座ってもらった。
そして王妃と王女とは少し離れた別の場所に、護衛騎士達とメイド達を座らせようとする。
しかし、騎士達とメイド達は流石に座るわけにはいかないと言ってきた。
が、王妃と王女が
「女神様が言っているのだから、貴方達素直に従いなさい」
と言われたので俺の言葉に従ってくれたようだ。
まあ、騎士やメイド達の気持ちは分かるから何も言えないけれどね。
俺と王妃達が、パンケーキ等を食べながら世間話をしていると夕方近くになった。
なので、王妃達に少し待ってもらいキノットさん達に城に向かう事を伝え夕食の新しいレシピ等を伝授した。
すると、シルクとアイビーが来た。
「シルク、アイビー、お疲れ様。ごめんね、手伝えなくて」
「いいわよ。こんな時くらい、私も従者なんだから手伝うわよ」
「ワンワン、クウーン?」
『シルクは、僕の上で注文聞いていただけだよね?』
「アイビー、その注文が大事なのよ。ワンワンでは分からないでしょ!」
「ワン、クウーン」
『リリー様、シルクが苛めるよー』
「アイビー、撫でちゃるけん。こっち来んさい」
俺がアイビーを撫でていると、スノーと葵もやって来た。
「リリー様、片付け終わりましたぅにゃん」
「スノー、お疲れ様」
「リリー様、私のおまじない好評でしたのよ。それに、スノー様もあの表情であの仕草が男性客にかなり人気があったようですの」
「葵も、お疲れ様。そうなのね、二人ともよかったわね」
「はい、ですの」
「はいぅにゃん」
「今からお城に行くことになったのだけど、疲れているだろうから皆最上階で休んでいて。そこに貴女達の分の料理も置いているから」
「リリー様、スノーも参りましょうか? ぅにゃん?」
「スノー様が行くなら、私も参りますの」
「いいのよ。皆今日は疲れているだろうから、休んでいて。ほら、あそこでお腹空かしている妖精がいるから……」
スノーと葵が振り返ると、アイビーの上でグッタリしているシルクの姿があった。
「だから、シルク達のこと、スノーと葵にお願いするね」
「はいぅにゃん」
「はい、ですの」
俺は、スノー達とキノットさん達にも明日の朝に王城から帰って来る事を告げて、待たせていた王妃達の元に向かう。
「ユグちゃんも、良い薫りを届けてくれてありがと」
「いいえ、リリー様に喜んで頂くだけで嬉しいです」
「ユグちゃんは私について来ることになっちゃうけれど、大丈夫? 疲れていない?」
「はい、ユグはリリー様の魔力を供給して頂けるので大丈夫なのです」
「そうなんだ。よかった」
「はい」
俺はユグドラシルを左肩に乗せ、王妃達と共に馬車で城に向かう事にした。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。
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シルク「リリー、色々と服を引っ張り出してどうしたの?」
リリー「実はね、どれがカフェバー&レストランで給仕する時似合うかなーと
思って……あっ! ごめんねシルク?」
シルク「いいわよ。ドレス毎日綺麗にしてもらってるから」
リリー「でも、同じドレスだと飽きるでしょ? 描く方々には優しいけど……」
シルク「そんな人達の事は知らないけれど、この前商店街で綺麗な布が有ったの」
リリー「シルク、もしかして布で服作れるの?」
シルク「私が、そんなに器用に見える?」
アイビー「食いしん坊には見えるよ」
シルク「アイビー、五月蠅いわね!」
ユグドラシル「シルク様は、魔力で服を作れないのですか?」
シルク「お母様もそんなことを仰っていたわ」
リリー「やっぱりできたんだ」
アイビー「シルク、不器用だからね……」
シルク「五月蠅いわね」
リリー「ユグちゃん、何とかできないの?」
ユグドラシル「それが、シルク様の魔力がお腹の辺りで変なのです……」
やはり、何か有るのか? シルクのお腹? 皆してシルクの
お腹の不思議を考えるリリー一行であった。




