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リリーvs巨大ゴーレム4

 スノーとアイビーにフレッシュキッスをしたと同時に――良い物を見つけたのだ。

 それをアイテムボックスから取り出し手にすると、錆が粉のように落ちてその姿を現した。

 それは、猛々しくも激甚な佇まいが感じられる。

 まるで、歴戦の猛者が自身の力と共に何度も繰り返し鍛え上げ、例え折れたとしても何度も溶かし繰り返し再生された名のある物のような――そんな確かな手応えが感じられた。



「これは……借りものだけど、致し方ないよね」



 俺はそれを握りしめ、巨大ゴーレムが完全に立ち上がるのを待つ。

 これは、それだけ余裕を見せる事が出来る代物である。

 浅はかな俺ではあるが、その俺でさえその醸し出される佇まいに舌を巻いた。

 そして、立ち上がると同時にそれを力の限り投げる。



「馳せろ! 神剣レーヴァティン!」



 シュッ。――――。――――。――――。――――。――――。――――。……



 一瞬の音と共に、音が消え去る。

 巨大ゴーレムの分厚い胸部を、一点の光りが過ぎ去る。

 すると、巨大ゴーレムの胴部分に穴を開け天井にも穴を開けた。

 次の瞬間、



 ギュォォォォォォ、ドギュルルゥゥゥゥゥゥ! ジュドォォォォォォ! 



 まるで、音を立てるのを忘れていたかの様に音が唸りをあげた。

 実は、冒険者ギルドで半分借パク【完全に存在事態を忘れていた】状態であった、中古の鉄の短剣があったのだ。

 その鉄の短剣は俺が手にすると、錆が消え去り、まるで鉄ではない代物へと変化し猛々しくも激甚な佇まいが感じらたのだ。

 短剣全体を覆う、神々しいまでの魔力が俺の握るその手にまで伝わってくる。

 それは、木の棒(コエダちやん)とは比べものにならない程の安心感や信頼感があった。

 しかし、自身の手に伝わる暖かさは木の棒(コエダちやん)の方が上であった。



「はうわぁー。大洞窟が崩れんで良かった……」



 凄まじい早さで突き抜けて行った為、大洞窟の地盤には影響は出なかったようだ。

 異質な鉱石で出来ている筈の天井から、光りが漏れていた。

 恐らく、外にまで貫通したのであろう。

 実は、天井の一部の防壁を思わず解除したのだ。

 もし跳ね返ってきたら、嫌だなと思って……。

 今は再び天井の防壁を展開させたが、ヒヤヒヤものだった。



【「リリー、危ないじゃない! 洞窟が崩れたら貴女は大丈夫かもしれないけど、か弱い私達は絶対に死んじゃうから、本当に気を付けなさいよね」】



 シルクがパーティー間スポット伝搬音で話してきた。

 俺は『従者テレパシー』でシルクに答える。



『「御免ね、シルク。今度から気を付けるね」』



 少し焦ったが、上手く行ったようだ。

 どうやら俺が手にした鉄の短剣の硬度は、木の棒(コエダちやん)の硬度を遥かに凌駕し強靭な物に変化させる事ができるようだ。

 それって、聖剣をすでに超えてるって事だよね? 

 恐らく、そんな芸当ができるのは女神サラや俺だけだと思うが。

 考えない事にしよう。女神だし……。


 その武器、今遙か彼方に飛んで行っちゃったけれど……まあ、数秒したら元の短剣に戻っているだろうし、どうなったかは不明である。

 実は絶剣無双の詳細をもっと詳しく読み進めていくと、一度手にした物は永久にと言うわけではなかった。

 まあ確かに俺が手にした全てが聖剣に変化するのであれば、聖剣が増産される事になる。

 それを、防ぐものなのだろう。手放してから、十秒で元に戻るらしい。


 もし一秒で戻っていたら、落として踏んづけた木の棒であれば折れていたからだ。

 ……勿論、木の棒(コエダちやん)は大切にしていたよ。

 でも、未だに何も無い所で転ぶんだよね。

 女神様の悪戯かな? ……嘘です。女神ジョークです。もう、何も言いません。

 巨大なゴーレムは再び立ち上がり、外装部がまた輝きだした。

 俺は皆の所に駆け寄り、三枚目の防壁を展開する。



「【【グレートダブルシールド】】」



 【システム エクストラダブルシールドが展開されました】


 巨大なゴーレムの胸部の穴が、ゆっくりと塞がっていく。

 攻撃ではないようだ。



「え? ちょっと待って」



 もしかして、コアの破壊に失敗した? 

 巨大ゴーレムのコアが再生するなんて、妖精の村を襲ったキメラより高位の存在? 

 でもあの時は、心臓部に澱みの魔石があって打ち砕いて倒せたよね? 

 えっ? ……コア? 澱みの魔石? 

 俺が勘考していると、スノーから『眷属テレパシー』が入った。



『「リリー様、巨大なゴーレムの胸部に穴をあけた事で判明しました。うにゃん」』

『「スノー、分かるように説明して」』

『「巨大ゴーレムのコアの破壊は成功しました。うにゃん。しかし、反対側に澱みの微粒子魔石が有りコアが再生したようです。うにゃん。それに、深刻なダメージを受けた場合は再び完全再生するようです。うにゃん」』

『「じゃあ右のコアと左の澱みの微粒子魔石、その両方を同時に打ち砕かない限りダメという事ね」』

『「リリー様、その通りです。うにゃん」』



 俺がスノーの説明を受けていると、再生が終わった巨大ゴーレムの全身に光りが収束しだした。

 え? 今までと違う反応。

 俺は更に四枚目の防壁をスノー達に展開させ、序でに広大な広場の壁と天井に防壁を展開させた。



「【【グレートダブルシールド】】」



 【システム エクストラダブルシールドが展開されました】



 次の瞬間、巨大なゴーレムの周囲を囲うように無数の光の矢が全方向に放たれた。



 ブウーン! ゴォォォォォォ! ドジュュュュュュ! 



 ――あの攻撃は危ない。

 巨大なゴーレムの周りが、俺の展開した防壁以外を全て薙ぎ払い防壁で反射したレーザーも合わせて地面が(エグ)れていた。

 俺はスノー達を呼び寄せ、スノーに小さくなるよう指示を出す。

 そして、シルクを胸元にインしてスノーとアイビーを抱き寄せた。



「クッ! 素早さの低下と、両手の攻撃手段を完全に封じられたわ。あのゴーレム、やるわね」



 シルクが俺の胸元から、顔だけをひょっこり出した。



「リリー、私達を離せばいいじゃない」

「そんな事はできないよ。だって私の大切な仲間なんだもん」

「そう言いつつ、スノー様とアイビーをモフモフして和んでいる人は誰よ!」

「はうぅー。だってね、私のモフモフチャージは必須事項なんだもん」

「可愛く言ったで無駄よ! そんな事より、あのゴーレムを早く何とかしなさいよね」



 ゴーレムが再び、活動を再開しだした。

 よく考えたら、シルクとコントしている余裕がある位、巨大ゴーレムはあの光を放った後停止する。

 つまり、その隙を狙えばいい。



「シルク、スノー、アイビー、再び巨大ゴーレムの隙が生まれるまで、あなた達の力を借りるわ」

「うにゃん」

「ワン!」

『はい』


「ただ、モフモフしたいだけじゃないでしょうね」

「ちっ、違うよぉー。すっ、隙を見ているだけだぉー」

「本当かしら? 最後噛んでたし」



 俺はシルク達を優しく抱いて、シルク達に強化魔法を多重展開させた。

 更に五枚目の防壁を展開し、シルク達に絶対衝撃が行かない様にする。

 そして、巨大ゴーレムを翻弄(ホンロウ)しつつ足を使って攻撃する。

 シルク達に、多重強化魔法や魔法防壁を張り続けているのには訳がある。

 素早さを低下させられたが、俺の異常な反応速度や攻撃速度、それに衝撃波等にシルク達が堪えられないと判断したからだ。


 俺は巨大ゴーレムの攻撃を何度も躱し、足で攻撃を繰り返す。

 すると、再び巨大なゴーレムの全身が輝きだし、今度は奇っ怪な黒い闇を取り込み、奇妙な闇の霧を纏う門からまた、スケルトンナイト、アイアンゴーレム、オーガゾンビが姿を現した。

 そして再び巨大化し、今はもう天井付近まで体躯が迫っていた。

 俺は、忘れていた地面に防壁を展開。



「【【グレートダブルシールド】】」



 【システム エクストラダブルシールドが展開されました】



 これで、全方位攻撃に対する防壁は完璧。大洞窟崩壊の危険性もなくなった。

 それに全力も、出し放題である。

 巨大ゴーレムのこれ以上の巨大化を阻止するために、残像と共に何度も現れる少し大きくなった紫電で、魔物の大群を目映い閃光が包み込む――



「花楓院流・役枝・民の型」



 キィ。――。キィ。――。キィ。――。キィ。――。キィ。――。キィ。――。……



 幾何学模様を描く短い無数の紫電が、魔物の大群を一瞬で消し去る。



「紫電・時を飛翔する少女の舞!」



 次の瞬間、巨大ゴーレムを囲うように、先ほどより更に凝縮された無数の光の矢が全方向に放たれた。

 やはり、コアが再生されたことでレーザー攻撃も強化されていたか――それに、魔物の大群を倒していて正解だった。

 もし倒していなければ、この大洞窟は――魔物の大群を取り込み巨大ゴーレムの更なる巨大化で、崩壊を起こしていただろう。

 それに、大洞窟の魔物が再び復活するまでの時間との闘いでもある。


 今回はマウスLV1を多用し、瞬間移動を多用した。

 左手でシルク達を支え、右手だけで攻撃した為、手数と威力低下が心配されたが、十二歳に変更したことで全体の力が増し、助走も殆ど必要としなかった。

 まあ、瞬間移動を多用した事でシルク達の負担を軽減したわけである。

 瞬間移動事態は負担なく別の場に行けるのだが、次の瞬間少しの助走で切り裂くので、その影響で目を回していたわけだが――強化魔法をかけて負担を少なくはしていたので、許容範囲であろう。

 


 ブウゥゥゥゥゥゥン! ゴォゴォゴォゴォゴォゴォ! ドォジュュュュュュ! 



 巨大ゴーレムが周囲を囲うように無数の光の矢が全方向に放たれた。

 今回は、光りの矢を反射しないように防壁に吸収させた。

 防壁で光りの矢を吸収出来ないと思っていたが、やってみたら何となく出来た。

 よし、今がチャンスだ! 



「スノー、シルクとアイビーを頼んだわ」

「うにゃん」



 スノーにシルク達の事を任せて、距離を取ってもらった。

 俺は先ほど、攻撃パターンが変わった時のために多重防壁を展開させた。

 あれだけの防壁は、流石に突破は無理だろう。

 一枚でも突破は無理だと思うが、アイビーがどうしても心配なのだ。

 普通の幼狼の身体(ウツワ)は創造できても、今の俺にはまだ王族の身体(ウツワ)は創造できない。

 幼狼を復活させた時、そうスノーに聞いたからだ。

 不安要素を取り除いた俺は、冒険者ギルドで半分借パク状態のもう一本を取り出した。

 ん? さっきの短剣より良い感じ。

 これなら――

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

シルク「リリーって物を投げても明後日の方向いくよね? でも何でさっき

    投げた武器ちゃんと当たったの?」

リリー「ああ! 私ね、戦闘モードになると何でも極限の域に達する事ができる

    の」

シルク「便利ねー。でも、何でいつもそうしないの?」

リリー「だって、何の気なしに寝返りを打った時に隣にシルクがいたり、何の気

    なしに、転倒してそこにシルクがいたら困るでしょ」

シルク「何で、全部私なのよ!」

    実は、誰よりも一番シルクが近くにいるからと言えなかったリリーで

    あった。

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