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リリーvs巨大ゴーレム1

 そして、念のために俺達を囲うようにして強力な対物理と対魔法の両方を防ぐ防壁魔法を展開し、異常に強力になっているファイアーダガーを唱えることにした。



「【【グレートダブルシールド】】」



 【システム エクストラダブルシールドが展開されました】



「【【ファイアーダガー】】」



 【システム エクストラファイアーダガーが放たれました】



 ヴォーォォォォォォ! キィン! ヴォーォォォォォォ! 



 俺は巨大なゴーレムに、ファイアーダガーを放ったが跳ね返ってきた。



「くっ! 魔法耐性ではなくて、魔法反射なの?」



 反射された魔法を見ると、先ほど俺が放ったファイアーダガーと威力は同じように思える。

 元いた世界のアニメやゲームでは、こういった反射の場合、自身の魔力を合わせることで威力が倍以上に向上された魔法が反射さる事が多いからだ。



「キャー! リリーのバカ、こっちに跳ね返って来たじゃない! どうするのよ?」



 ある意味俺が放った威力のままで反射されたのは幸運だとも思えるが、しかし……

 俺は再び無詠唱で、ファイアーダガーを放つ。



「【【ファイアーダガー】】」



 【システム エクストラファイアーダガーが放たれました】



 ヴォーォォォォォォ! ドゴォォォォォォ! ゴオォォォォォォ! 



 異常な威力のファイアーダガーは、相殺と同時に爆炎を伴う衝撃を辺りにまき散らした。

 しまった、相殺じゃ無くて反射された魔法を吸収もしくは解除させたら良かった……

 俺達は防壁を張っているので無傷だが、異質の鉱石でできているにも拘わらず壁に少し亀裂が走り暫く炎が辺りを燃やしていた。

 反射能力があるのは、あの巨大なゴーレムの装甲だけか――ある意味、助かった。

 もし天井や壁それに地面にも反射があると、かなり厄介だった。


 砕け散ったエクストラファイアーダガーの破片が反射し続け、吸収もしくは解除する他は無かったからである。

 まあ、初めからそうすれば良かったのだが……。

 辺りの空気が無くなり、一瞬真空状態で入口から爆風とも思われる異常な気流の渦があった。

 しかし、どうやら真空状態もこの広大な部屋であったが故に辺りに空気が行きわたるのも早かったようだ。


 まあ、この戦闘が終結するまでは防壁を解くつもりはないので俺達は安全なのだが――

 巨大なゴーレムは動きもせず、中央にただ鎮座するだけだった。

 それに、異常な気流の渦で地下四階にいたはずのオーガゾンビ数十体分と思われる破片が入り口に散らばっていた。

 しかし、それも不思議と地面の異質な鉱石に吸収され黒い霧となって、あの巨大ゴーレムの中に消えていった。


 恐らくだが、この巨大ゴーレムの影響下でどこかから、この大洞窟の地下三階以降にいたアイアンゴーレム、スケルトンナイト、オーガゾンビは呼び寄せられたのかもしれない。

 つまり、この現況は巨大ゴーレムを倒せば恐らく……

 これらの事で分かったのは――魔法で巨大ゴーレムの分厚い胸部に、無理矢理穴をあけようとしたが、貫通力と威力が格段に向上しているはずの魔法が跳ね返って来たという事だ。

 成る程、魔法反射能力が有るが故に魔法による攻撃は攻撃と見なさずにただ鎮座していると……

 俺が達観していると、



 ぽむ、ぽむぽむぽむ、ぽむ、ぽむぽむぽむ、ばし、ばしばしばし……



「ひぃー!」



 この何とも言えないリズム感と、思いやりの無い叩き方に思わず叫んでしまった。



「ちょっと、シルク? そんな所叩かないでよ」

「だって、スノー様やアイビーと違って、全然気づいてくれないのだもの」



 シルクは、スノーとアイビーがいつも俺を現実世界へと引き戻すために優しく前足で触れてくれている、あのまだ主張するほどでもない膨らみを、初めは優しくしていたようだが叩いてきたのだ。



「で、シルクどうしたの?」

「あのゴーレム巨大だけど、初めより大きくなったよね?」

「えっ?」



 俺は、目を擦り瞬きをして確かめる。

 そう言えば、少し大きくなった? 様な? 気がする? 

 俺は小首を右に左に傾けさせて、巨大ゴーレムを確かめてみる。



「うーん、よく分かんない」



 元々、このゴーレムは巨大だった。

 なので、微妙に大きくなったとしても俺では判断がつかなかったのだ。



「私達妖精はね、大きい物や大きくなった物に特に敏感なの」

「だから、ロベリアさんやライムお姉さんのあれ(・・)とシルク自身のちっぱ……」

「五月蠅いわね! リリーもでしょ!」



 俺が言い切る前に、シルクに遮られた。

 成る程、妖精は小さいが故に大きい物への危機管理が高い。

 つまり、妖精族の特質というわけか。

 ならば、シルクの言っている事は信憑性が高い。

 それに、オーガゾンビ数十体分と思われる破片が異質な鉱石に吸収され黒い霧となって巨大ゴーレムにの中に消えたいった。



「シルク、教えてくれてありがとっ」

「ねえ、リリー? 私とアイビーは、何か手伝えることはない?」

「え? シルクだけ戦闘に参加するの?」

「リリー、どう見ても無理って分かるでしょ? こんなにも小さくて可憐で可愛い妖精が、あんなにも巨大なゴーレムに……魔法放っても効かないし、さっきみたいに反射されるだけだし……。それに、アイビーのことは言わないで、どうして私だけなのよ!」


「えっと、じゃあ戦闘が始まったら出来るだけ距離をおく?」

「でも、さっきみたいな反射が有ったら?」

「今からは、攻撃魔法は放たないようにするから大丈夫?」

「リリー、疑問形で言うのやめなさいよね」

「だって、戦ってみないと分からないし……」

「確かにそうよね……」



 俺とシルクも黙り込んだが、分析不能な巨大ゴーレムは未曾有の魔物である。

 今までの方法で、倒せるとは限らないからだ。



「さっきから、巨大ゴーレムを色々と分析してはいるのだけれど……【魔法は反射する】と【倒された魔物を吸収して大きくなる】その二つ意外は今の所何も分からないの。だから、シルク臨機応変にするしかないのよ」

「リリー、了解……」



 俺とシルクが話し終わると、スノーが側に来た。



「スノー? 何か分析できた?」

「リリー様、物理攻撃も効きにくく反射能力がある事から考えて――あのゴーレムの外装は、ミスリルと異質鉱石が混合されている可能性があります。うにゃん」



 スノー曰、巨大ゴーレムの外装は魔法を付与したり魔法の性能を上げたり反射機能を付与する事に適しているミスリルが主であり、この世界に存在しない異質鉱石との混合物で出来ていると分かった。

 そして、巨大ゴーレムには有効な魔法が無い可能性が高いと言ってきた。

 恐らく、俺の職を賢者に変更し限界突破で獲得した反射無効魔法を放てば倒せると思うが、魔力を調節して最低限にしたとしても、この洞窟自体が堪えられないだろう。

 俺は引き続きスノーに弱点の分析を依頼して、巨大ゴーレムを達観する。

 あの巨大なゴーレムが、もし張りぼてなら力でどうにか出来ると思うのだが――遅い動きと、重量が異常すぎるのか、異質の鉱石で出来た地面が窪んでいた。

 つまり、張りぼてでは無く全てがミスリルと未知の鉱石であると言うことだ。



「皆、幸い巨大なゴーレムの動きは遅いから、この大きな広場を活かして有効な攻撃が有るか確かめてみるね」



 俺は安心させるため、笑顔で皆の顔を確かめた。



「リリー様、ご武運を。うにゃん」

「ワン、ワン、クウーン」

『はい、リリー様。気をつけ下さい」

「リリー、無理しないでね」

「スノー、アイビー、シルク。皆、ありがとう」



 俺は、皆から勇気をもらえた。ならば、絶対に負けられない戦いだ。

 俺は途中で落ちていた手に馴染む木の棒を、アイテムボックスから取り出した。

 この木の棒は冒険者ギルドで落ちていた木の棒より、俺の手に馴染んで不思議と温かみがあるのだ。

 お気に入りになったので、コエダちゃんと命名しようと思う。

 戦闘が終わったら、正式に命名してあげようと思うリリーであった。

 お気に入りのコエダちゃんを使うべく、自身が気にいっている言葉を口にする。



「敵影確認! 緊急警報発令! 一般職員は、各シェルターに避難して下さい。モフモフ戦略部隊は各個指示を待て」

「うにゃん?」

「ワフ?」



 俺の言葉に、スノーとアイビーが反応した。



「スノー、アイビー、ごめんね。気にしないで……」



 俺は、スノーとアイビーに危険な目にはあってほしくない。

 しかし、スノーとアイビーが俺に期待するように可愛い双眸を向けてくる。



「はぅー、スノーとアイビーの潤んでいる双眸愛らしいばい」



 ならば、スノー達の期待に応えねばならないだろう。

 しかし、戦闘には参加させられない。

 自身のモフモフを触りたい心を、振り払うように顔をふり――



「スノーは、コードネーム雪花(セッカ)。私の号令後に、遠方より巨大ゴーレムの鑑定と解析をお願いするわ」

「うにゃん」

「アイビーは、コードネーム灰花(ヒバナ)。私の号令後に、スノーと合流し遠方で待機よ」

「ワン」

『はい』



 では、改めて……



「敵影確認! 緊急警報発令! モフモフ戦略部隊は各個指示を待て」

「うにゃん!」

「ワン!」

『はい!』



 俺はセリフを、更に続ける。



「敵影を視認できる距離まで到達! 前方に遮蔽物なし。コードネーム雪花(セッカ)発艦」

「うにゃん」



 スノーが、安全な後方に走って行く。

 続けて――



「敵影を視認できる距離まで到達! 前方に遮蔽物なし。コードネーム灰花(ヒバナ)発艦」

「ワン。ワン」

『はい。リリー様』



 アイビーも俺の指示に従い、スノーのもとへ行った。

 俺のセリフはまだ続く――



「敵影分析により適正職種を確認! 剣聖と断定! 剣聖用装備を装着」

「落ちてた、ただの棒でしょ」



 シルクが突っ込みを入れてくるが、俺はセリフを続けていく――



「マウスシステムスタンバイ。女神システム作動! モフモフシステム感度良好です。」

「リリー、貴女(アナタ)さっきから、何言ってるのよ?」

「前方に遮蔽物なし。コードネーム幼女(リトル)戦乙女(バルキリー)発艦!」

「リリー馬鹿なこと言ってないで、さっさと行きなさい」

「リリー・ヴァリー、コードネーム幼女(リトル)戦乙女(バルキリー)いっくよー」



 その場から俺が走りだした事で、シルクも慌ててスノー達の元へ向かう。

 シルクが安全なスノー達の所まで行ったことが確認できたので――

 セリフを最後まで聞いてくれたシルクに感謝しつつ、スキル【キーボード&マウスLV1】を発動する。

 そして、巨大なゴーレムに近接する為に【マウスLV1】を使用して瞬間移動を行い、一気に肉薄――ジャンプして途中で上下を反転させ、上空に賢者の魔法で足場を作り、逆さまの状態で巨大なゴーレムの右足の付け根を叩き切った。

 しかし、叩き切ると同時に木の棒(コエダちやん)が衝撃に耐えきれずに粉々に砕けてしまった。



「うそでしょ? 木の棒(コエダちやん)が砕けた……」

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

リリー「グスッ……」

シルク「リリー、泪なんて流してどうしたの?」

リリー「お墓作ってたの……」

シルク「……コエダのお墓? リリー、コエダって?」

リリー「私が大切に使っていたでしょ? 手に馴染んで、お気に入りだったのに」

シルク「いや……あれ、大洞窟の入り口で拾った木の棒だったでしょ?」

リリー「名前も付けたんだ。コエダちゃんって……」

シルク「はいはい……じゃあー、今度お土産屋さんで木刀買ってあげるからね。

    それまで、我慢しなさい」

リリー「うん」

    リリーの寝言のせいで、変な知識が増えていくシルクであった。

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