王妃の膝は、幼女の椅子?
いつも思うのだが、食べ物の体積とシルクの大きさが噛み合っていない。
そこだけが、妖精の王女シルクの不思議である……。
俺達は冒険者学校の事を聞く為に、城に向かった。
城の門前に着くと、一人の歩哨が走ってこちらに駆け寄り跪く。
「女神リリー様でしょうか?」
「ごめんねー。髪の色が金髪だから、分からなかったでしょ?」
「いえ、女神リリー様の容姿は、神々しいので直ぐにわかります」
まあこんなに小さい幼女が、妖精や子猫のように小さい虎と子犬のように小さい狼を連れているのって、この国に俺しかいないんだよね。
少々髪の色が変わろうが、神々しくなかろうが分かっちゃうよね……
「たまに、私の気分で髪の色を変える事があるので許してね」
「滅相も御座いません。女神様どうぞ」
そして、俺達を門の中に案内する。
その一方で、もう一人が走って中に駆け出し騎士団副長に通達している。
恐らく、俺が来た事を誰かに報告しているのだろう。
俺達が王の謁見の間に向かっていると、先ほど城の中に駆けだしていった歩哨と騎士団副長が、第三王女のパープルを連れて慌ててこちらに走ってやって来た。
第三王女は俺の髪の色が金髪になっていようが、全く気にしていないようだ。
恐らく、事前に髪の色の事を聞いていたのであろう。
「リリーちゃん、シルク様、スノー様、アイビー様、ご機嫌麗しゅうございます。リリーちゃんのお蔭でお姉様の病気も完治し、以前より血色がよく活力が溢れていると報告が御座いました。何とお礼申し上げたら良いか分からないです。それと、沢山のお菓子の数々も有難うございました。あの、大変申し上げにくいのですが……。お姉様が帰って来る前に、美味しすぎてメイド達と共に食べてしまいました……。伝令の鳥にその旨を書いて送ると、伝令の鳥が折り返し帰ってきたので書状を確認すると、お姉様がご機嫌ナナメです。グスン」
「え? 一ヶ月あっても食べきれない量が、有ったと思うんだけど……」
「リリーちゃんの神聖なお菓子と聞き、メイド達だけでなく王国中の騎士達も挙って欲しがって、あっと言う間に無くなってしまいました」
フォレストムーン王国の王族は、アニメや漫画小説等にもよく有る普通に強欲な王族ではなく、騎士達にさえ分け隔てなく分け与えるなんて何て心の広い王族だなと正直驚いた。
しかし、強欲でない王族は強欲でないが故に歴史から姿を消すことが多い。
恐らくこの国が女神の住まう大森林や、その大森林を守護する妖精王と妖精狼の影響下であるが故にこの国が他国から滅ぼされずにすんでいるのではないかと勘考する。
もしくは、周りの臣下が優秀なのか……それとも、俺には予想もつかない何かがあるのかもしれない。
俺が勘考していると、俺が怒っていると勘違いしたのかパープル姫の双眸が潤んできた。
「ごめんね、少し考え事していたの。私が帰る前に食材を分けてくれたら、幾らでも作ってあげるから心配しないでね。そうそう、最近気づいたのだけれど……私が作った料理や飲み物は、誰かが蓋を開けたりして手をつけるまでは劣化しないみたいなの。なので、慌てて食べる必要もないからね。皆で、心ゆくまでお菓子や飲み物を楽しんでね」
「そうなんですね。リリーちゃん、本当に感謝致します」
メイド長率いるメイド親衛隊が、パープル王女の後ろにいつの間にか控えていた。
控えているが、メイド長達の眼が久しぶりに再開できたと訴えるように潤んでいる。
昨日の今日なのだけれど……
なので、少し気を引き締めるために貴族の令嬢の如き姿勢で、
「メイド長、メイドの皆様ごきげんよう」
と言った。
すると俺に倣うように、潤んでいた瞳をハンカチで拭き本来の城のメイドの姿で
「女神リリー様、ご機嫌麗しゅうございます。これより、私と親衛隊がお守り致します」
と言った。
やはり、騎士達では心配なのかな?
今は魅惑の着ぐるみではないので、大丈夫だとは思うのだけれど……
俺が騎士達をそういう眼で見つめメイド長を見ると、騎士の方を一瞬確認してから首を横に振った。
やはり、メイド長率いる親衛隊でどうしても守護したいようだ。
親身になっているメイド長達を無碍にはできないので、パープル王女と共にメイド長率いる親衛隊に守られる形で、俺達は王の謁見の間に到着した。
謁見の間の入り口には、俺を騎士達から守る様にメイド親衛隊が配置されていた。
謁見の間に入ると、王妃様が椅子から離れ駆けだす。そして――
「女神リリー様、黄金色に輝く美しい髪も本当にお似合いです。ああー、何て可愛らしいのかしら」
そう言って俺を抱きしめ、撫でて久しぶりに会った孫娘のように自身の思いの丈を示した。
一通り思いの丈を示した王妃は、謁見の間を離れ自ら大広間に案内してくれた。
そして俺の耳元で、
「女神リリー様、パープルから聞いたのですが……昨日パープルと騎士団総長と話していくうちに、仲睦まじくなったそうですね。私も……リリーちゃんとお呼びしても、差し支えないかしら?」
「王妃様、是非」
「リリーちゃん、ありがとう」
王妃様は大広間の大きな椅子に腰掛けて、俺を抱っこしたままだ。
なので、王妃様の気が済むまで俺は抱っこされたまま話を聞くことにした。
王様は昨日の夜に早馬で走り続け、無事ホワイトバイオレット王女の元へ着いたそうだ。
そして自らレインボーエリクサーを王女に飲ませた事で、第二王女の容体が激変し全快したと伝令の鳥により連絡が有ったそうだ。
伝令にはその他に、俺の願いは出来る限り何でも聞くようにと書かれていたそうだ。
俺が冒険者学校の件と、木材と鉄材の件を伝えると、王妃様が快く承知してくれた。
森の木は好きなだけ伐採してもらって構わないし、鉄材は城の資材庫から好きなだけ持って行っても構わないと言われた。
冒険者学校の件は試験を受けると言うと、免除すると言われたが断った。
その代り、学校の寮の件や施設等の件は任せて欲しいと言われたので了承した。
王妃様と話をしていると、第一騎士団長が駆け込んできた。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。
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リリー「シルク? 王妃様が私を抱っこしている時、アイビーの上に乗ったまま静かだったよね?」
シルク「リリー、私だって妖精の王女よ? 王妃様が、あんなに嬉しそうに貴女を抱っこしているの見たら五月蠅く出来ないわよ」
リリー「シルクも、五月蠅いの自覚していたんだ……」
シルク「アイビーみたいに、ワンワン吠えないだけ増しでしょ。リリーも感謝しなさいよね」
アイビー『僕は、シルクみたいに端なくお腹グウグウ鳴らさないもん』
シルク「アイビー五月蠅いわね。尻尾引っ張るわよ」
アイビー『リリー様、シルクが苛めるよ……』
リリー「クスッ……アイビー、こっちこんね。撫でちゃるけん」
喧嘩するほど仲が良いと、シルクとアイビーがいつも一緒に寝ている
二人の姿を思い出し一人和むリリーであった。




