冒険者ギルド3
「ではー、こちらにお名前、性別、得意なスキルと魔法が有ればー、その主なスキルを使用可能な職を書いて下さーい。例えばー、魔法が得意なら、魔法使いとかー。武器が得意ならー、戦士等でーす」
と言ってきた。
なので、俺は冒険者登録用の用紙を記載することにした。
得意なスキルや魔法? 職を変更するだけで、様々なスキルや魔法が使えるがどうしよう?
俺は名前と性別を書いた後に、勘考していた。
すると、ロベリアが俺が記載している名前を見て、
「貴女のお名前はー、リリー・ヴァリーちゃんと言うのねー。ふうーん」
そう言って、足元のスノーとアイビーが丸まっているのに気づき、
「リリーちゃんのお友達かなー? この子達、可愛いわねー。猫ちゃん、ワンちゃん。妖精ー?」
アイビーの上に乗っているシルクにも気づき、不思議そうにシルクの事を見る。
「私、妖精さん初めて見たかもー。ティアラとドレスも豪奢ねー。まるでお姫様みたーい」
ロベリアの言葉に、シルクが嬉しそうに鼻を鳴らす。
「ふっふーん! 貴女、見る目が有るわね。私は妖精の王女――」
シルクがまた言いかけたので、俺は『従者テレパシー』を使った。
『「シルク、それ以上言っちゃダメって言ったでしょ」』
「――妖精の王女に憧れている、妖精よ!」
シルクは御免ねと、舌を出してテヘッと俺に笑顔を向けて来た。
しかし、言い訳になってない気がする。
弁解する為か私に任せなさいと言わんばかりに、シルクが薄い胸を張る。
そして、ロベリアに俺の職を伝えだす。
「リリーはね、ある時は聖女。ある時は絶級シェフ。ある時は聖薬剤師。ある時は剣聖」
「♪♪~♪♪♪~♪♪♪♪……」
「そしてその実体は……」
「只の幼女よ」
「ちょっと、リリー最後まで言わせなさいよ! あのセリフ気持ちよかったのにぃ」
『「それ以上言うと、女神って言いかけたでしょ?」』
従者テレパシーを使用しているので、アイビーもシルクに伝えた内容を聞いている。
それ故に、アイビーがシルクに反省するように伝える。
「ワン、ワオーン、ワン!」
『リリー様の言う通り、バカシルクは後ろで反省!』
「くっ、くぅー」
とシルクが唸っているが、今回は女神とバレなかったので一安心だ。
俺は職の欄に、素早くシレっと幼女と記入した。
冒険者登録用紙は普通の所謂木を加工した紙ではなく、恐らく羊皮紙……いや違うな、魔物の素材を加工したものだろう。
手触りや書き心地が、俺の知るものとは全く違う。
それに、裏側には魔方陣のようなものが描かれていた。
ペンも鉛筆やボールペン等ではなく、万年筆のような形をしていた。
ペンにも一部、小さな魔方陣が描かれていた。
恐らく用紙やペンに、魔法的な嘘偽りが書けない何かが施されているのであろう。
まあ幼女というのは嘘偽りではないし、それ以外書きようも無いとも言えるのであるが……
用紙とペンに宿る微精霊さん、ありがとう。
俺がそう心の中で思っていると、どこからか小さな子の声が聞こえてきた気がした――「ご所望に添えて、何よりです」と。
記入後、ロベリアに登録用紙を渡しているとシルクが俺の耳元に来る。
「それにしてもなのだけど……ねえ、リリー? さっきの鼻歌はなに?」
「え? シルク、鼻歌って?」
「さっき、私が気持ちよく貴女の職を語っていた時のあの鼻歌よ。しかも、鼻歌なのに信じられないくらい上手だったし……」
――そう言えば、知らず知らずのうちに俺は鼻歌を歌っていたのか。
あの歌のフレーズ。その鼻歌を……でもこれ以上は――
「禁則事項です」
「何よ! 禁則事項って」
俺とシルクのやり取りに、ロベリアは笑顔で後ろに有る魔道具に羊皮紙を入れて少し待つように伝えて、
「只の幼女ってー。でも、色々な最上級職のスキル使えるのねー。正直驚いたわー。ギルマスが、A~Cの好きな冒険者ランク決めても良いって言うのも異例な事ですしねー」
と言った。
俺は待っている間、スノーの肉球とアイビーの肉球を見比べながらモニュモニュと触って楽しんでいた。
「それにー、通常ランクには必要な長年の経験実績が必要なのー。でも、経験実績無しでそう言ってくるのも当然と言えば当然よねー。リリーちゃん、魔道具で冒険者登録カードが作成されるまで、もう少し待っていてねー」
俺の願いは、【女神の身体を借りたので、出来る限り平和に暮らしたい】だ。
だから生計がある程度立てられる、小物の魔物を狩れる低ランクが出来ればいい。
あまり高ランクは必要ないから、ロベリアに必要最低限のランクを聞いてみる事にした。
「御姉様、毎日の生計ができる程度で小物の魔物を狩れる最低限のランクは幾つです?」
「フォレストムーン王国の南の森林には、角兎、大鼠、沼蛇、大牙猪、ゴブリン、オーク等が居るのー。だけどー、奥に行けば行くほど強い魔獣や魔物の大牙猪、ゴブリン、オーク等が出てくるわー。稀に、ゴブリンの上位種であるボブゴブリンが生まれる場合も有るけどねー。でもー、通常は一匹だけですしねー。その場合はー、ボブゴブリンを中心に村を形成して数十匹のゴブリンが存在している場合が多いのー。だからー、直ぐにDランク以上の冒険者を数パーティー集めて討伐依頼が出るわー。なのでー、その数より多くなる事はまず無いわねー」
ロベリアは顎に手を添えて考える素振りで、俺に伝えてきた。
「そうねー、角兎や大鼠の肉は人気ですしー需要も有るから生計は立てられる筈よー。だからー、狩れるランクはEランク冒険者パーティーからかなー」
「御姉様……私まだ実績も何も無いですし、色々と知らない事が多いの。なので、Eランク冒険者からお願いしたいです」
「えー? でもリリーちゃん、ギルマスはA~Cって言っていたわよー?」
もう一度言う事になるが――
俺の願いは、【女神の身体を借りたので、出来る限り平和に暮らしたい】である。
その事を隠すために……いや、まだ何も知らない事が多いのは事実だ。
それに、何かの拍子に女神サラ様の身体であっても死んでしまうかもしれない。
だから、あえてEランクからスタートして実績を積んでランクを上げて行く事をロベリアに伝えたのだ。
俺がそう切実に伝えると、ロベリアが自身の机の中をゴソゴソしだした。
そして、一枚のチラシを見せてくれた。
「これはねー、王国が設立して運営なさっている冒険者学校のチラシよー。この学校を卒業すると、色々メリットが有るのー。様々なー戦闘技術と知識が学べて入寮できるしー。王立だからー、寮代や食事代は無料で朝と夕出るのー。しかもー、卒業時にはC~Dの冒険者ランクを取得する事も出来るわー」
「初心者冒険者に、親切な待遇ですね」
「そうでしょー。それに、六ケ月に一度入学試験があるのだけどー。貴族にも人気がありすぎて、順番待ちが多いのが今の現状よー。でもねー、冒険者ギルドからの推薦状が有る人は優先的に入学試験に行く資格を得られるわー。それにー、見事合格すれば入学と入寮ができるはずよー」
ロベリアから良い情報を入手した。
冒険者学校で、この世界の事を学ぶのも一つの手かもしれない。
「二十日後にー、入学試験が有るからー。王様のー推薦状を貰える関係だったらー。一度ー王様に聞いてみると良いかもねー」
「有難う御座います。御姉様」
「あははー。御姉様ーって言われると、擽ったいわー。私の事はー、ロベリアで良いわよー」
俺とロベリアが話をしていると、丁度ギルドマスターが帰って来た。
事情を話すと、快く冒険者学校の推薦状を書いてくれた。
ロベリアから、Eランク冒険者の登録カードを受け取る。
カードは、マ○ナ○バーカードのように小さい。
ロベリアに小さいので無くしてしまわないか確認すると、実は小さな高性能魔道具であり普段はドッグタグのような形に変化し、ネックレスやチョーカーのようにも変化させることが出来るようだ。
ドッグタグの形も色々と変化できるようで、初めに登録すると良いらしい。
なので、俺は小さなハートのネックレスにした。
そして、ロベリアにお勧めのクエストである常時クエストを教えてもらったので、薬草採取や、兎、大鼠討伐のクエストを受注した。
情報によると、兎はモフモフで可愛いと言うことなので特別にクエストから外してもらった、
ロベリアの親切な説明が終わったので、今度はギルドマスターが持ち込んだ魔物の買い取り額を教えてくれた。
「うわー。何か凄い金貨ですねー」
俺の驚きにギルドマスターが答えてくれる。
「まあ、それだけ有れば当分遊んで暮らせるぞ」
ロベリアは俺を子供用の椅子から抱き上げ、膝の上に乗せて頭を撫でてお人形さんみたいねと呟く。
そして、ギルマスは笑いながら色々と教えてくれた。
正直ロベリアの胸が大きくて頭が重かったが、ギルマスの話を聞くことにした。
ギルドマスター曰く――通常ゴブリンは使える部位が少なく牙だけである。
一体討伐し、素材と魔石込みで小銀貨1枚だ。
大型のオークは食肉としてかなり人気があり、討伐と素材と魔石込みで一体辺りが金貨一枚らしい。
ただ、今回はボブゴブリンの骨と牙が素材として上質で、魔石も共に貴重であり、一体辺りが小金貨一枚であった。
ハイオークは、超高級食肉ではあるが数が少なく持ち込み自体皆無である。
しかも、数年に一体現れるかも不明であり討伐もかなり強い魔物であるため困難を極める。
市場に出ることも無く、買取り価格が不明である。そのため、かなり昔の買取り価格となった。
超上質な肉と素材、魔石も貴重で、通常オークの五倍の金額で一体辺り大金貨一枚であった。
今回の買取りは、ボブゴブリン二十体で白金貨一枚。
ハイオーク五体で、白金貨二枚と大金貨一枚。
合計白金貨三枚と大金貨一枚になった。
そのうち俺は、ハイオーク二体貰い受け他は売る事にした。
つまり、合計で白金貨二枚と大金貨一枚となったのだ。
ギルマス曰く――白金貨や大金貨は王国で買い物をする場合、金額的に使いにくいらしい。
なので、大金貨一枚を小金貨六枚、大銀貨十枚、銀貨十五枚、小銀貨二十五枚にしてもらった。
詳しく聞くと、元いた俺の世界の通貨に似通っている事が分かった。
白金貨一枚が百万円相当。大金貨一枚が五十万円相当。小金貨一枚が五万円相当。
大銀貨一枚が一万円相当。銀貨一枚が五千円相当。小銀貨一枚が千円相当らしい。
因みに小銭貨一円相当。銭貨五円相当。大銭貨十円相当。小銅貨五十円相当。銅貨百円相当。大銅貨五百円相当である。
非常に細かいが、日本の通貨に例えると覚えやすい。
ただ白金貨以上の流通は、通常貴族や商人が使用する事が多いらしい。
今回の様な異例は、フォレストムーン王国では今まで無かったそうだ。
それと今回の異常な事態に、先ほど王国より通達が冒険者ギルドにあったらしい。
王国騎士団とCランク以上の冒険者で、南の森の奥の調査が始まる事も教えてくれた。
そう言えば、王様に賜った王貨って幾ら位なんだろう?
……でもどうせ、白金貨以上は使わないだろうしアイテムボックスに入れておけばいいか。
色々と話しを聞いていると夕方近かくになったので、俺は二人にお礼を伝えた。
お礼序でに情報量として、ロベリアにはクッキー二十枚とフルーツタルト二切れをわたした。
ギルマスにはお酒の入れ物を持って来る様に伝えて、持って来た三つの容器にスキルで作った葡萄酒を入れて渡した。
お世話になったギルマス達に別れを告げて、俺達は冒険者ギルドを後にした。
「ねえ、シルク? もう夕方だし、お城を出てから食事もしていないよね? だから、パパッと宿でも探してそこで食べる?」
「リリー賛成よ! 私、もうお腹空きすぎ。ロベリアに渡したフルーツタルト見て涎が出そうだったんだから。……耐えるの、必死だったのよ!」
「あはは、じゃあ早く宿探さないとね。スノー、乗せてもらって良いかな?」
「うにゃん!」
「では、宿探しレッツらゴー!」
シルクがフラフラ飛んでるので、アイビーが気を利かせてシルクを自身の上に乗せる。
俺はスノーに乗り、陰ってきている夕日に気がつきアイビーを引き連れ急いで宿を探しだした。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。
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シルク「ねえ、リリー? ロベリアって受付の人、スノー様やアイビー
それに私にも気づくの遅かったわよね?」
リリー「そう言えば、そうね」
シルク「まさかとは思うけど、あの胸で下が見えないんじゃない?」
リリー「あははは、確かに私の頭の上に乗っていたロベリアさんの胸、
重かったかも……」
シルク「私も大人になったら、ロベリアみたいにバインバインになるわ。
そしてアイビーを見下ろすの」
アイビー『シルク、現実を見て……妖精の王妃様も美しいけれど、
スレンダーなんだから』
シルク「――――。――――。――――」
リリー「シルク、大丈夫。ちっぱいも、需要はあるからね」
シルク「五月蠅いわね! リリーもなんだから、少しは大きくなる方法
考えなさいよ」
リリーとシルク、二人して無言で胸を凝視するのであった……。




