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豪華な馬車での一時

 そして、まるで連れ去られる宇宙人の様に、両腕を第三騎士団団長のバジルと騎士に持たれて馬車の中まで連行された……

 いつの間にかスノーとアイビーは、馬車の中に戻っていた美少女令嬢の膝の上に寝転がり撫でられていた。

 そう言えばシルクが居ないな? 

 俺は【『眷属間テレパシー』】を発動して確認する。



『「ねえ、シルクは?」』

『「うにゃん」』



 俺がシルクの事を心配すると、スノーが馬車の天井を見ていた。

 成る程、馬車の上にいるのか。

 俺は未だに、騎士団長と騎士に両手を持たれている。

 自身の自由を確保するため、騎士団長に提案をする。



「えっと、騎士団の方々が倒された魔物の処理をしないといけないと思うのですが……」

「わしが部下にボブゴブリンとハイオークの処理を任せておるので安心致せ。其方が倒した魔物は消え失せたが故に処理する必要もない。それに、ハイオークの肉は食肉としてかなり貴重だ。但し、巨大であるが故に一体運ぶだけで一苦労するがな。まあ、苦労した分王国に持ち帰って豪華な食事になるのが今から楽しみだわい。勿論、報奨金も後でたんまりと渡すから、安心して王都迄馬車に乗るといいぞ。そうですな? お嬢様」


「ええ、勿論そうです。貴女への報奨金は王都で必ずお渡し致しますわ」

「有難うございます。もし、ハイオークの巨体を運ぶのが大変でしたら、私のアイテムボックスに入れましょうか?」



 俺の提案に、また騎士団長が――



「構わん、あの巨体を運ぶことで、騎士達を鍛えられるからな一石二鳥だわい」



 くっ、退路を断たれたか。

 魔物の処理をすると言って逃げ出そうと思っていたのだが、そうは問屋が卸さなかったようだ。

 まだ手を掴まれていた俺は、そこでようやく騎士達から解放された。

 馬車の中の豪華な椅子に座らされると、騎士団長は令嬢に一礼をして踵を返し馬車を退出した。

 騎士団長達が退出したところで、令嬢が――



「ごめんなさいね、バジル騎士団長達が手荒な真似をして……。私はフォレストムーン王国の第三王女、パープル・パンジー・フォレストムーンです」

「私はリリー・ヴァリーと申します。リリーとお呼びください。王女様の膝の上にいる子虎が、スノー・フレークです。私はスノーと呼んでいます。王女様の足元で丸まっている幼狼は、アイビーと言います」

「この二匹、凄く可愛いわね。貴女も、凄く可愛いわ」



 スノーとアイビーを交互に撫でる王女の姿は、とても美しく穏やかだった。

 うん、俺も後で二匹をモフモフして撫でてあげようと心に誓った。



「そうだ! バスケットに、良い物があったわ」



 王女様が手を叩くと、側付きメイドがバスケットを持ってきた。



「こちらをどうぞ、お嬢様」



 側付きメイドが器にお菓子を出して、王女様の前にあるテーブルにおいた。

 王女様はメイドに、



「ありがとう」



 と言って、器のお菓子を俺に渡してきた。



「これは貴女に、少しばかりの感謝とお礼よ」



 器から俺がお菓子を一つ頂くと、側付きメイドが説明をするべく少し前に出る。



「それは小麦粉と塩などで作った生地を小さく切って、茹でてから焼いたお菓子です。蜂蜜もたっぷりとかけてあるので、凄く美味しい高級なお菓子ですよ」

「王女様、有難うございます」



 俺は王女様にお礼を伝え、お菓子を三枚食べた。

 俺もお返しをしようと思い、徐にアイテムボックスに――そして小声で【【絶級料理変換】】。

 先ほど頂いたお菓子の代わりに、自身のスキルで作ったクッキーを是非食べてもらいたかったのだ。

 王女様なら、この国や他国にある様々なお菓子を食べているはず……。


 俺のスキルで作った料理が、この国の人や王女様の舌にも通用するものなのか知りたかったのだ。

 まあ、ちょっとした興味本位である。

 俺は、スキルで作ったクッキーをアイテムボックスから十枚取り出した。

 そして、持っていた妖精王の料理人から貰った装飾が施されている木製の美しい器に入れて第三王女に手渡す。



「王女様、有り難うございます。凄く、美味しかったです。私も秘伝のレシピで焼いたクッキーが有りますので、良かったらどうぞ」



 王女は、俺からクッキーを受け取ると徐に側付きメイド渡した。

 側付きメイドは皿を受け取り、クッキーを見て驚愕――美しく質感がよいクッキーの表面には、綺麗な紋様がデザインされており、手作りとは思えない高級感があった。

 側付きメイドが毒見をする為に一枚口に運び食べると、急に手が止まらなくなり結局全部食べてしまった。

 俺は思わず吹き出すと、側付きメイドは頬を赤らめていた。



「もっ、申し訳ありませんお嬢様。毒見のつもりが、止まりませんでした……」

「そんなにも美味でしたの?」

「はい。美しく質感がよいクッキーの表面には綺麗な紋様が施されて、適度な触感と舌触りで今まで口にした事の無い美味しさでした」



 側付きメイドが食べてしまったので、もう一度王女様に食べるか確認してみる。



「よかったら、美しい王女様も食べますか?」

「え? 美し……オホン。まだございましたら、私もぜひ食べてみたいです」



 王女様が食べてくれるようなので、折角だから飲み物もだすことにした。



「あっ、コップは無いですか? 飲み物も、有るので」



 俺の問いに側付きメイドが、



「はい、御座いますよ」



 と言って、すぐに対応してくれた。



「でしたら私と王女様、そして貴女にも是非飲んで頂けたらと思いますので三人分のコップをお願い致します」

「では、こちらのコップをどうぞ」



 俺はアイテムボックスに入っている木の皿を新たに二皿だし、クッキーを十枚ずつ取り出しそれぞれ三人分の木の皿にいれてテーブル上に置く。

 そして、貸してもらったコップにスキルで作った搾りたてで適温に冷えた果汁ジュースを装飾された木の容器から出すような素振りをしてそれぞれに注ぎテーブルの上に置いた。



「どうぞ、お召し上がりください」



 側付きメイドは、テーブルに置いてある自身のコップの果汁ジュースを毒見として一口啜る――そして一気に飲みほした。

 俺は再び吹き出しそうになって口を抑えたら、側付きメイドが恥ずかしそうに俯いた。



「果汁ジュースも、そんなに美味なの?」

「はいお嬢様。程よく冷えていて、王城で出されるどの飲み物よりも美味でした」

「え? 冷えて? では私も、クッキーを一つと飲み物を……」



 サクッ、ゴク! サクッ、ゴク、サクッ、ゴク、サクッ、ゴク……



「お、お嬢様?」

「ご、ご御免なさい。わっ、私も止まりませんでした。まさかこの世に、ここまで美味なお菓子と飲み物が有るなんて初めてです」



 俺は、空になった王女と側付きメイドのクッキーと果汁ジュースをもう一度だけ入れてあげた。

 そして、スノーとアイビー用の容器を出してミルクを注ぎ、スノーとアイビーにも飲ませてあげた。

 俺も食べ終わると、王女と側付きメイドはまだ物足りなさそうな顔をしていた……。

 が、これ以上王女様が食べると太るかもしれない事を懸念してなくなった事を告げた。


 とても残念そうな顔を、王女と側付きメイドがしてきた。……いや、十分食べたよね? 

 他愛のないやり取りをしていて、ふと窓の外を眺めるとシルクが泣きそうな顔でこちらを見ていた。

 あっ! ……完全に忘れてた。



「すみません、少し窓を開けても良いですか?」



 俺が窓を開けて良いか訪ねると側付きメイドが不思議そうな顔をする。



「どうされましたか?」

「連れの妖精の事を、忘れていました」

「え、妖精……様? は、はい! で、では窓をお開け致しますね」



 側付きメイドが動揺しているが、妖精は珍しいのかもな?

 自身で納得していると、シルクが多量の涙を流して俺のお腹辺りに頭から体当たりしてきた。

 さらに顔を埋めて、お腹をポカポカ叩いてくる……痛くないが、食べた物がチョット出ちゃいそうになる。



「うぷ、ぶっ。シルク、食べた物が出ちゃうけん。腹ば、くらさないで」

「うわーん。リリー、私の事忘れてたでしょ。リリーのバカー、エーン」

「シルク、本当に御免なさい。今回は、忘れていた私が悪かったから。ね、許して?」

「私だけ、ヒクッ、私だけ、外で一人寂しくしていたのよ。食べたいのも、ずっと、ヒクッ、ずっと、ヒクッ、ずっと、我慢して見ていたのよ。エーン、エン、エン」

「御免ね、シルク。あ、そうだ! 良い物があった。色々な果物が沢山のった美味しいタルトがあるの。それで機嫌なおして」

「え! 何それ、何それ? 美味しいの? 私食べたい! リリー出して、出して!」



 シルクの燥ぎようにアイビーが、



「ワン、クーン、クウーン……」

『リリー様、最後の涙は、シルクのお得意の嘘泣きですから……』



 アイビーが最後は嘘泣きと言っていた。

 しかし、初めは本気で泣いていたようで服がシルクの涙で表面だけがビチョビチョになっていた。

 ……後で、服交換しないと。

 俺は果物が沢山のった美味しいフルーツタルトをスキルで作り、人数分切り分けていった。

 そして、シルク専用のティーカップと普通のティーカップをそれぞれ取り出す――そこに、それぞれ丁度よい甘さの飲みやすい温かさのミルクティーを注ぐ。

 更に、王女とメイドの分も切り分け注ぐと、



「私達の分まで頂いても宜しいの?」

「折角ですので、どうぞ」

「嬉しいわ。ありがとう」



 フルーツタルトのおかげで、泣き止んだシルクの機嫌も良くなった。

 一通り皆に皿を配り終えたのを確認した時に、そう言えばシルクの事だけ紹介していない事に気が付いた。



「シルク、こちらはフォレストムーン王国第三王女パープル・パンジー・フォレストムーン様よ」



 シルクが急に真面目な顔になり、王侯貴族の様な姿勢で挨拶をしてきた。



「私は女神の住まう大森林を守護する、迷いの森の妖精王アラビアン・ジャスミンと王妃マダガスカル・ジャスミンの子、妖精の王女シルク・ジャスミンです。そして貴女の足元の幼狼は、迷いの森を守護する森の番人妖精狼(フェアリーウルフ)の王レッド・ゼラニウムと王妃リーヴズ・ゼラニウムの子。王亡き今は正統なる現王アイビー・ゼラニウムよ。っと言っても、今は二人とも、リリーの従者なんだけどね! あはっ!」



 王女様と側付きメイドの悲鳴ともいえる声音が重なった。



「「えっ、えぇぇぇぇぇぇ!」」



 王女とメイドが驚愕し、シルクとアイビーの前に跪き頭を垂れて挨拶した。

 慌ててシルクは二人に気にしなくて良いからと2人を起こして、まだ残っている自分のフルーツタルトを口にしだした。

 シルクの様子を確認した王女と側付きメイドも、シルクが進めるのでフルーツタルトとミルクティーを飲む事にした様だ。



「え? これも丁度飲みやすい温かさで、この美味しさは何? このフルーツタルトのシットリとして濃厚な味わいと、甘さも丁度よくフルーツの酸味がよく合うわ」

「お嬢様、私も信じられない美味しさだと思います」



 王女と側付きメイドがフルーツタルトとミルクティーの味にまたも驚愕していた。

 そして、フルーツタルトを口にしつつ2人してコソコソと『小声』で何か呟いている。



『お嬢様、我らが女神様の大聖堂に行きホワイトバイオレット様の病が早く治る様にお祈りをした後、偶然に女神様をお守りする妖精の王女と妖精狼(フェアリーウルフ)の王様達に会えたのは本当に僥倖です。フォレストムーン王国は400年前、女神様が御降臨された女神様が住まう大森林を守護する妖精王と妖精狼(フェアリーウルフ)の王に、嘗て先代が助けられた事で滅びを免れた王国です。そしてこの国の名の由来も、妖精が愛する【森林】と妖精狼(フェアリーウルフ)の始祖である【月狼】です』


『そうね、妖精の王女と妖精狼(フェアリーウルフ)の王様に逢えた事は本当に僥倖よ。でも、リリー様の従者って言っているわよ?』


『そこは、あの方達が来た方向が傍証しております。あの橋を越えて南側は、岩山の断崖絶壁の越えられぬ壁です。その奥は我らが立ち入ることが不可能な迷いの森であり、そこから来た事実。そして我らが神聖視している女神様の守護者である妖精の王女と妖精狼(フェアリーウルフ)の王が従者となる。導き出される答えは1つしか御座いません』


『え? では、リリー様が?』

『間違い御座いません。そういう事です』



 シルクが爆弾発言らしき事を言ったことで、王女と側付きメイドがコソコソと何か話しているが、俺にはよく聞き取れなかった。

 それより俺は――



「ワシャワシャ。クンクン。ハムハム。はうはうー、良い薫り。くぅぅぅぅぅぅー、モフモフ、ハッピィー・フェスティバール」



 スノーとアイビー二匹のお腹をワシャワシャ触り、顔を二匹のお腹や首筋に埋め匂いを嗅ぎ、耳や背中や尻尾をハムハムする方が忙しいのである。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。

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