スキル マウス
村を目指して歩きながら、次はスキル【マウス】を使用する。
これならチャット欄の文字を見なくて良いので、歩いていても酔わないだろう。
「離れた地面にマウスポインターを合わせて、クリックっと」
クリックした刹那、クリックした場所に瞬時に移動した。
「えずかー。瞬間移動したばい! ……あーね。人がおる時、使用は控えた方がよかね」
ぽっぷん!
俺の頭の中で、眼鏡をかけた女神サラの女教師バージョンが出てきた。
「私の説明が必要なようね」
今度は俺の頭の中で、子供の頃の俺が出てきた。
「先生おねがいしまーす」
「今日は【えずか】と【あーね】など、少し難しいと思われる方言について教えるわよ」
「はーい」
子供の俺が席に座ると、女教師バージョンの女神サラが説明する。
「【えずー・えずか】とは、【怖い・恐ろしい】ことを表すわ」
「あーい」
「次に【あーね】とは【あー、なるほどね】や【あー、たしかにね】が基本よ。その他に、【へー・ふーん】など軽い相づちとしても使える便利な言葉よ」
「はーい」
「説明は以上よ。また少し難しいと思われる方言が出たら説明するわね」
「はぁーい。先生ありがとーございまーす」
妄想説明劇場が終了し、現実に戻る。
「うにゃにゃーん!」
遠くから、スノーが心配した顔で、慌ててこちらに走って来た。
「スノー、ごめんね。今度はスキル【マウス】の使用方法を確認しながら歩いているの」
「うにゃん」
俺はもう一つの可能性を見る為、恐る恐る遠くの木をスキル【マウス】を使用しクリック――何も起きなかった。
「大きすぎる物は、無理なのかな?」
「うにゃん?」
もしかしたら、小さな生き物をクリックしたら捕まえられるのでは?
そう思い、遠くにチョコチョコと現れる栗鼠の様な可愛い生き物が見えたのでクリックしてみた――何も起きなかった。
次の可能性として、今度はステータスを開く。
すると、自身の全体像が見える状態になっている。
「うん。自分で言うのも変だけど、相変わらずの幼さが残る超美少女ね」
「うにゃん?」
「いえ、何でもないの」
更に矢印をクリックする感覚で念じると詳細情報が表示された。
ステータス→基本情報→全体像→詳細情報と、開けていくと。
名前 性別 年齢 の他に、下の段に幾つかの項目が現れた。
職業【空欄】
魂 花楓院 鈴。
魂LV LV 0.9
その下に
身体 サラティー・L・ホワイト・M・ライラック
身体LV LV 10
更に下には
HP、MP、AP
+AP(封印)0.01%【サラティー・L・ホワイト・M・ライラック】
と続き、攻撃力・防御力・魔法力・魔法防御などが記載されていた。
これ数字が記載されていたら、ゲームのステータスと同じだよな。
しかし、肝心なステータスの数字が全て斜め線が引かれており数字が不明……
これでは、戦闘における攻撃力、防御、体力、知能、素早さ等が不明である。
職業欄も、空欄で不明だ。
せめて剣聖・聖女・賢者とかに変更出来たら、ファンタジー感があって楽しいのにな。
そう思い、そこをスキル【マウス】を使用してクリックしようと指を動かす――
その前に――俺は自信に言い訊かせるように訴える。
安易な考えを持つな!
人のステータスを、完全な形で数値化することは難しいだろ。
それに、職業も――今現在、生業としているのなら記載可能だ。
しかし、この職業欄は明らかに異質の香りがするじゃないか。
ならば――迂闊にクリックする前に、千思万考しろ俺!
確かに、異質な香りがする女神の身体の職業欄……
いや、身体は臭くないよ。寧ろ良い薫りだし。
この職業欄は――
魂に刻まれているかのような……いや、違うな。
恐らく、啓示や天命とされる――
神から与えられたものと同等……いや、それ以上か?
某アニメや漫画、小説等の知識から――
俺の揣摩臆測として……厨二病かっ!
自身で自身を突っ込んでいるが、眼前に元よりステータスとして存在している。
ならば、数値化され職業も存在しているのであろう。
それにステータスを眼前にして、マウスを持っていたなら――クリックしてみたくなる。
そう、誰もが一度は夢見る。チート三昧。俺、TUEEEEEE! である。
しかし既に、天啓や天命を授ける側である女神――しかも、上位神の身体を借りている。
その上位神の、ステータスや職業……
しかし、クリックも何も出来なかった。
結果、俺の指が攣りそうになっただけである。
次にスキル一覧から、パッシブスキルをスキル【マウス】を使用してクリック――
更にアクティブスキルも、スキル【マウス】を使用してクリックする。
スキル【キーボード】が有るのなら、スキル作成が可能なのでは?
と、淡い期待を込めてだったのだが……
やはり、クリックも何も出来ない。
「しまえとぉ!」
ぽっぷん!
俺の頭の中で、眼鏡をかけた女神サラの女教師バージョンが出てきた。
「私の説明が必要なようね」
今度は俺の頭の中で、子供の頃の俺が出てきた。
「先生おねがいしまーす」
「【しまえとぉ】とは、【つまらない】ことを表すわ」
「あーい」
「説明は以上よ。また少し難しいと思われる方言が出たら説明するわね」
「はぁーい。先生ありがとーございまーす」
妄想説明劇場が終了し、現実に戻る。
期待外れのスキル【マウス&キーボード】に頭を悩ませた。
でも、マウスの――
「瞬時に移動は、緊急時とか何かに使えるかもね」
「うにゃん?」
様々な使用可能スキルが有るが、不明瞭な点が多すぎる。
なので、残りの能力は後回しにして北東の小さな村にスノーと足早で向かう事にした。
「スノー、お腹すいたね。何か食べ物とか、スノー持ってないかな?」
実は、お腹はそこまで空いていない。
ただ森林の美しさと雰囲気が、俺の中でピクニック気分を盛り上げてくれる。
ピクニックといえば、俺の中ではダントツにお弁当だ。
田舎にある母方祖父母の実家に行った時、よくお弁当を持って山の頂上までかけのぼったっけ。
そして、澄み切った空気の美味しさとお弁当をよく楽しんだものだ。
「リリー様、ごめんなさい。持ってないです。うにゃん」
「そっかー残念。でも、気にしないで。大きな森林だし、木の実とか何か食べ物が有るはずよ。何か無いか探しながら、行きましょ」
「うにゃん!」
俺は美しい森林を見上げて、何か木の実とか食べ物が無いか探しつつ歩いていた。
木の実を見つけたが、この世界の木の実は様々な色をしており食べれるのかは不明である。
スノーに幾つか食べられる木の実を教えてもらったが、食べられる木の実は高い位置にあり背が届かない。
木登りを試みるが、滑って登ることが出来なかった。
つまり、見た目通りの儚くか弱い美少女であったため何も取れなかったのだ。
「私の二の腕の筋肉は、スノーを抱っこするためのものなのね……」
「うにゃん?」
赤い光点を示す、敵対意思がある魔物や魔獣のアラートはまだ無い。
しかし、頭の中で【戦闘になった場合は、どうするか?】と勘考していた。
そして石も引っかかりも何もない所で、盛大に前のめりに転んだ。
そう、お約束である。
「えっ? ワァー、キャー。飛び、飛びー、飛びすぎっちゃー……」
不思議と怖くはないが、一瞬驚きはあった。
そして、冷静に女の子はキャーと叫ぶものだと考え叫んだ。
しかし、奇天烈なほどに飛びすぎる。
いくら前のめりになって転んでも、ここまで飛ぶことはない。
低空姿勢のまま地面スレスレで、突っ込んだ。
ボフッ!
そこは、大量の落ち葉が舞い散る落ち葉溜まりだった。
ふぅー、やれやれ。どうやら、落ち葉がクッションになって助かったみたいだ。
予想以上に遠くまで飛ぶように転んだ所で、慌てて走って来ている愛らしいスノーが見えた。
「痛、いたたた」
痛くないけど呟いた。
俺の痛いという言葉にスノーが心配しいる――滅茶苦茶可愛い。
スノーが駆け寄り、側に来ると――俺は座ったまま、主人思いのスノーを思わず抱っこしてお腹に顔を埋める。
そして、クンクン――
「はうー、良い薫り」
スノーはなぜか、獣の匂いがしない。
寧ろ、仄かに良い薫りがするのだ。
スノーのお腹の薫りに癒やされ、心の高ぶりが湧き上がる――
「モフモフ、ハッピィー・フェスティバール」
頗る気分が良くなり、モフモフとの触れ合いの言葉を発したあとスノーにお礼を伝える。
「スノー、心配して来てくれてありがとっ。スノーのフカフカなお腹、癒されるー。超幸せ!」
「うにゃん」
スノーのお腹を一通り堪能して、モフモフエネルギーをチャージ完了!
スノーを抱えたまま立ち上がろうと片膝を立てた所で、急に地面が崩れた。
そして、大量の落ち葉と共に下にお尻から落っこちる――
「嘘! え、うわぁぁぁぁぁぁ……」
「うにゃにゃうにゃーん……」
最後までお読み頂き、ありがとうございます。




