第四話 鳳凰院式決闘〜小鳥遊ユウジVS鳳凰院アスカ 2〜
鳳凰院さんには炎の剣があるし、接近戦は俺の方が分が悪い。
だがそれでも俺は敢えて接近戦を選んだ。
「ふふっ、良いところあるじゃない!」
「そりゃあどうも!」
とりあえず、真上から振り下ろされる炎の剣を躱し、懐に潜り込む。
貰った!
「んんっ!」
「遅い!」
と、思ったんだが。
簡単に間合いを取られてしまった。
チッ、だめか。
なんつー反応速度してるんだよ、こいつ。
「ならプランBだな」
右手に石を引き寄せて、それを投げる。
「この期に及んでそれは効かないわ!」
「わかってらぁ!」
その一瞬を狙って、また接近する。
炎の剣を振るう隙を与えるな!
もう一度だ。右手に石を引き寄せて、今度は至近距離から投げる!
親指で弾かれた石は鳳凰院さんの一瞬の注意を引いた。
それが目の付近に当たってしまい、鳳凰院さんは目を閉じた。
(取った!!)
そう、思った時だ。
「まだだ!!」
「っ、そりゃねえだろ!」
ここに来て、鳳凰院さんの剣の速度が上がった。
炎の剣が頬を微かに掠めて、焼けてしまった。
だが、こうなれば真っ向勝負しかない!
「はあっ! やあ!」
またもや小鳥遊はすれすれで避けていた。いや、違う。
(剣が逸れた!?)
内心、鳳凰院は焦っていた。
完全に捉えたと思った剣が何度も身体すれすれで逸れている
今までにない感触だ。
だが、小鳥遊の異能力を知らない鳳凰院にそれを知る術は無かった。
(集中しろ集中しろ集中しろ集中しろ! 炎の剣を遠ざけろ!)
そう。小鳥遊ユウジの異能力は《物体を引き寄せ、遠ざける程度の能力》。石を引き寄せるだけではない。
炎の剣が振り下ろされるタイミングで、剣を身体ギリギリで遠ざける。
何度も。何度も。何度も。
何度もそれを繰り返していく内にお互いに疲れが出てきた。
俺も避ける速度が遅くなり、鳳凰院さんは大振りが多くなった。
だから俺も何歩か下がって、息を整えてから、こう言った。
「はーあ、やめだ」
両手を挙げて怠いですポーズ。
「…………は?」
「だから、もう終わりだ」
「っ、何を言ってーーーーヴアァッ!!?」
俺はずっと左手で引き寄せていたものが、鳳凰院の背中に直撃した。
「ま………さ、か…………!!?」
それは大剣だった。
正確には石蔵の大剣だ。
「わりぃな、助かった!」
「…………」
無視、ね。
まあ共謀作と取られてもおかしくない作戦だから、彼なりの肯定と受け取っておこう。
さて、と。
「これで決着は着いた。降参するか?」
「ま、まだよ…………っ!」
まだ、立つのか。
足をプルプルとさせながら、その眼に宿る闘志は一瞬の緩みもなく俺を睨みつけている。
炎の剣を再び出して、揺らぐ陽炎がまるで鳳凰院アスカを現しているようだ。
…………甘く見ていた。これだけやれば、負けを認めるだろうと思っていた。
「俺もここからは、殺す気でやる」
「ええ、来なさい!」
炎の剣は陽炎を揺らしながらも、俺に振われる。
だが……。
「当たらない!? どうして!!」
動揺している間に鳳凰院さんを押し倒す。そして、そのまま絞技に持っていく。
鳳凰院さんの右腕を持ち上げ、俺の右腕で頸動脈を締める様に左腕で反対側から手を結び固める。
こうなれば抜けられない。
鳳凰院さんにはひとつ、致命的な弱点がある。
あの炎の剣は確かに素晴らしい技の一つだが、それを可能をとしているのは非常に高い集中力と言える。
鳳凰院さんの弱点は、集中力を乱せば炎を操れなくなる所だ。
今、この状況も冷静さを欠かせるには十分だ。
このまま絞め落とす!
「、っ!」
どんなに暴れても無駄だよ、この技は解けない。
「〜〜ー!!」
炎の剣を作ろうとしてるのか?
だが、無理だろうね。
呼吸を止められて、冷静になんてなれないだろ。
やがて、鳳凰院さんから力が抜けて来る。暴れる力も残ってない様だ。
そして、完全に停止。
つまり!
「勝者、小鳥遊ユウジ」
「「「おおおおおおお!!!」」」
その日、一番の歓声が上がった。
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