第一話
第一話《物体を引き寄せたり、遠ざける程度の能力》
雪が溶け、始まりの季節がやってきた。
俺、小鳥遊ユウジは今日から高校生だ。新品の制服に身を包んで通学路を歩く。田舎だから都会と違って高層ビルなどがない分、開放感があり気持ちのいい朝だ。
さて、そんな俺だが。俺は高校からは爽やかキャラで行こうと思ってるんだ。
「フッ……(ギラァンッ!)」
爽やかな春風が吹き、俺の爽やかな笑顔も爽やかになってる。
いやあ、凄く爽やかな朝だなぁ。
「む? あれは……?」
幼児が何やら、空に手を伸ばしてぴょんぴょん跳ねている。
どうしたんだろう?
「どうしたんだ?」
「あ、あのね、風船が………」
「風船? あぁ……」
上を見ると風船が飛んでいた。
手を離してしまったんだろうな。
もう、ざっと20mは地面から離れてる。距離はギリギリだが、まあ風船は軽いから行けるだろ。
「《引力》」
風船に向けて右手を向ける。
すると俺の能力が発動し、風船がこちらに引き寄せられる。
「はい、どうぞ」
「わあっ! ありがとう、お兄ちゃん!」
うんうん。
おっと、忘れてた。
今年の俺は爽やかで行くんだった。
対して長くもない前髪をファサ!とやって、キメ顔を作る。
「どうだい、爽やかだろ?」
「ううん、全然!」
「ぜ、全然?」
「うん!」
「ほ、ほんとに……?」
「全く爽やかじゃないよ!」
「ぐふっ……。そ、そうか、分かった……」
「ありがとう、お兄ちゃん!」
「あはは、次は離すなよ〜」
決めた。爽やか、もう辞めよう。
世界中で突然、異能力者が発生してから三十年が経った。
そこから世界の勢力図は大きく変わり、戦争の道具は兵器から人へと変わり、量よりも質が重要視される様になった。
日本では優秀な異能力者が多く生まれ、アメリカと並ぶほどの《自衛力》を持った大国となった。
もちろん、昔の政治家達の努力もあるが、異能力者のおかげということは明白だ。
だから日本政府は異能力者の保護を重要視し、いくつかの学校を設立した。
その一つが、俺が今日から通う【私立武田学院】だ。異能力者の「格付」のためにクラスを六つに分けている。
そして、俺はと言うとーーーー。
「Fクラスか」
まあ、そうだろうな。
俺の異能力【物体を引き寄せたり、遠ざける程度の能力】は、それこそ物体の重さや距離によって制限が出てくるし、対象に直接ダメージを与えられる異能力でもない。せいぜいがさっきみたいに風船を取ったり、家で遠くにあるリモコンを取れる程度の能力なのだ。
だから政府の評価数値も【レベル1】。
レベルとは五段階まであって、レベルが上がるほど重要度が増す異能力になっていく。
単純に戦闘力が高い異能力の場合もあれば、治癒系だったりサポート系だったり、要するに実用性のある異能力がレベルを上げることが出来るのだ。
「なーなー! 君もFクラスなのか!?」
茶髪っぽい男子生徒が話しかけてきた。
「ああ、そうだけど」
「俺もFクラスなんだ! 校舎まで一緒に行こうぜ!」
「勿論だ」
「やあ、僕もFクラスなんだけど、ご一緒してもいいかい?」
「おう! いいぜ!」
「俺もいいよ」
話しかけて来たのは小柄な少年だった。まだ幼さも残っててなんというか、ショタって感じだ。
校舎に一緒に行きたいと言う話だったので、断る理由もないので了承した。
「俺は瓦井リョウだ、よろしく頼むぜ!」
「俺は小鳥遊ユウジ。よろしく」
「僕は郡レイキ、末永く仲良くしてほしいな」
こうして、入学早々、友達が出来たのだった。
これは幸先いいぞ! そう思っていた矢先にまさか、こんな事になるなんて…………。
初めまして、【ジャイアントキリング 〜俺達は無能のFクラス〜】連載開始です!
基本的な投稿は朝の8時としますが、今日は12時、17時にも投稿します!
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