06 『ハルの瞳は琥珀色』
茶色がかったオレンジ色の瞳をした、身体に色素のない少女。
それにすれ違う人全員が目で追いそうな程に美人。と言うより言動が少し子供っぽいので可愛い系の方がしっくりくる。
彼女の髪は肩まで伸び、その色としなやかさはまるで質の良い絹を思わせた。
唯一残念なのは着衣が薄汚れている事くらいか。
やはり異世界と言うからにはこの様な種族や、魔物の類も当たり前に存在するのだろうか?
彼女がくれた食べ物にありつきながら物思いにふけるが、さっきから彼女の好奇の視線が気になりイマイチ食事に集中出来ず。
「あのさ、そんなに見つめないでくれよ。その見た目にその目は怖いというか...うん。それって夜光ったりすんの?」
「光るよ?」
「光るの?!」
「うん。真っ暗でなにも見えない部屋とか、顔から近い距離なら物が見えやすくなったり。あと夜は皆この目を怖がって逃げてくから、女1人で出歩いても安心だよ」
「へぇ...それは便利だなぁ。便利...」
彼女は可愛らしく微笑みながら答えてくれるものの、先程彼女は「人々は怖がり逃げる」と言った。
ということは彼女のような人種が当たり前にいるわけではなく、この世界で言う魔物の類ではないのかと思ってしまう。
仮に同族や仲間がいて、戻ってき次第それに殺されて食わよう物ならたまったものではない。
恐る恐る質問をしてみることにした。
「お前は、仲間とかいるのか?盗賊仲間的な」
彼女は肩を落とし、少しだけ表情が曇る。
「いないよ。一人だよ、ずっと一人」
少し気が引けてきたがまだ聞きたいことはある。
「一人って親とかは?ずっと一人でここに住んでるのか?」
その質問に彼女はクスっと笑った。
「少し違うよ、棲み着いてるの。誰も住んでなかったからね。親のことは...わかんないなぁ」
物悲し気に俯き、ミディアムの真っ白い髪の毛が彼女の顔を覆い隠す。
「あぁ...そうなのか」
かなり心地の悪い空気になってしまった。
この空気を払拭しようと頭の中でセリフを探していると、微妙な空気を察したのか彼女の方から話題を振って来た。
「そんなことより!なんでこの街に来たの??何か目的があって来たの??」
目的、もちろんある。人探しをするのだ。全く当ての無いゼロからの人探し。
シンはハルカとリクトを一刻も早く探し出さなくてはならないのだ。
「そうだね...俺は人さが───」
「───なにもないならさ!あたしのナカマになってよ!」
自分から聞いといて彼女はその答えを遮ってきたが、今この状況で仲良しこよしをしている暇など。
「いやあの、だから俺は...」
彼女は期待に満ち溢れた表情の中に、断られたらどうしようという心配からか、その琥珀色の瞳はどこか悲しげな一面を覗かせた。
考えてみれば、たった1人で見知らぬ場所で当ても無しに人探しなど無謀もいい所だ。
現にシンは彼女がいなければ早々に死んでいたかもしれないのだ。仲間がいるに越したことはない。
シンは彼女の真っ直ぐな気持ちに負け、呆れたようにため息をつく。
「わかったよ。でも俺にも目的があるからな」
すると彼女はワァっと満面の笑みを見せ、弾かれたように立ち上がったと思うと床で胡座をかくシンに片手を差し出しこう言った。
「今からナカマ!なにがあってもナカマ、ずっとナカマだよ!」
その小さい子供のような彼女の無邪気さにずっと続いていた胸のむかつきが少し引いたような気がした。
「あいあい、ナカマね、これからずっナカ...語呂悪いな。ナカマ...」
「ずっカマ」
「うん...まぁそれでいいか」
シンは彼女の手を掴むと床から立ち上がり、彼女の蘭々と輝く目を見つめ暑いハンドシェイクを交わした。
「そういえばお前、名前なんて言うんだ?俺はシン。どう?めっちゃ覚えやすいだろ?」
シンの自己紹介を受け、彼女はもどかしそうに悩む様な態度を見せると、シンに向かってはにかんだ。
「あたし名前ないんだよね。ねぇ、あたしに名前つけてよ!」
シンは行方不明になった親友の一人、ハルカのことを思い浮かべ、
「お、おぉ。それならじゃあ、ハル...」
「ハル!あたしハル!よろしくねシン!」
「...まぁそれでいいか」