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それでもこの世界を愛そう  作者: じぇい
 第1章 ルナの娘 【アルバイノ】
5/11

05 『生きねば。』

 



 あの中年夫婦からかなり離れた所で適当な路地裏へと入り、壁にもたれながら上がった息を整える。路地裏は太陽が遮られていてとても涼しい。



 走ってしまったことで喉の渇きも限界に達し、なにかないかと辺りを見回すが、建物の壁ばかりでもちろんそれらしき物はない。



「はぁ、はぁ、きつい...倒れそう」



 それもそのはずで、シンはもう長い間パサついた缶詰パンしか食べていない。

 水すらまともに飲めていなく、人生で初めて気を失って倒れそうになっている。

 まず最初に体調を回復させないことには人探しが出来るわけもない。



「いっその事ぶっ倒れて病院に運ばれた方がいいか?」



 そう思いながらも壁に手を当て先へと進み出す。

 ここの医療体制がどうなっているのかわからない以上、下手にそれに頼ろうとするのは良くないはずだ。



 もしも病人は隔離されて野垂れ死にさせられるような世界なら、このまま誰かに情けをかけられ拾ってもらうなどした方がいいに決まっている。



 ここは医療体制が万全な日本ではないのだ。

第一に医療費なんて払えないし、わずかばかり持っている日本円などゴミ同然だろう。



「早く飯を...せめて残飯か何かでも」



 今までなに不自由なく育ってきたというのに、いきなりその辺の残飯を探し求める羽目になるなんて万一にも思っていなかった。

 母親のスパゲティが恋しい。

 


 徐々に徐々に足が石のように重く、動かなくなっていく。



「やばい、やばい、足が動かくなってきた」



 思うように動いてくれない足を引きずりながら進んでいると、道の奥に廃墟同然な見た目をした木造の建物を発見した。

 


 二階建てのようだが二階の部分には大穴が空いており、そこから覗く屋内もグチャグチャに散らかっている。一体なにが起こればこうなるのだろう。



 シンは元居たあの廃村にも食品があったことを思い出し、目の前のボロ家を物色してみることにした。



「ドアは半自動か」



 ドアは少し力をかけただけで独りでに空いていく。

 


 家の内部はやはりモロ廃墟で、埃っぽい。5、6人ほど座れるカウンターとその奥に酒棚があることからバーだった場所だろうか。



 少し不自然なのは、埃を被ったカウンターテーブルに比較的新しい人の手形があることや、カウンターの裏にボロマットがあることだ。

 あの集落と違い、人が住んでいるような気がするのだ。しかし今は危機的状況、こんな状況に陥ってまで善人ぶる余裕など今の自分にはない。



「申し訳ないないけど、ここの食料をもらっていくか。トマトスープに、りんご!そして、パンの缶詰...」



 ボロマットの側、カウンターテーブルの裏の収納部分にしまわれていた食料を一部頂戴し、手持ちのショルダーバッグに詰め込んだ。

 建物入り口へと向かい、ドアに手をかける。

 そしてゆっくりと差し込んでくる外の光。



「よし。これならまだ死ぬことは一応ないだろ。さてと、住人がもどる前にずらかるか───」





 ───目の前には籠を持ちローブを着た住人らしき人。




「あぁ、その、これはですね」



 コソ泥のような独り言を完全に聞かれたシンは言い逃れ出来るわけもなく、その人を突き飛ばし逃げようとしたが抵抗も虚しくその人に床へと押し倒された。



「すいません!!俺、これがなきゃ明日生きてられるかわかんないんです!ここは1つ、1つだけでいいんで食べ物を譲ってもらえませんか!!」



 シンを床に押し倒した事でローブのフードがはだけ、その人の顔が露わになる。



 女だ───。



 白い、とにかく白い。髪から肌まで。

 思い出されるあの女性。しかしあの女性と違う所がある。

 あの女性の目は深い銀色だったが、この女の目は濁りのない黄褐色をしている。



「ンッ!ンッ!!ンーーーー!!」



 女はシンに馬乗りになり、唸り声と共にギョロっと見開かれた目をグイグイとシンに近づけてくる。彼女の真っ白な髪がシンの頬に触れる。



「なッ!なんでしょうか!?」



「んん?」



「え?」



 彼女はなにやら納得のいかないような顔を見せた。



「なんでぇ?なんで怖がって逃げないの?こうすれば大抵の人は逃げてくのに...って!誰君!あたしの食べ物を盗もうってわけ!?」



 唸り声から変わって普通に喋ったことに少しばかり裏切られた。そして物凄い勢いで彼女に胸ぐらを掴まれる。



「すいませんホントに!不法侵入を誤ります!人が住んでるなんて思わなかったんですよ!」



「コソ泥コソ泥!缶詰泥棒!無事に明日を生きれると思うなよ!聞いた事ないの??デュセールの白い盗賊とはあたしのこと!」



「お前もコソ泥じゃないか!自ら盗賊と名乗るなんてバカめ!お前なんぞ警察にチクってくれるわ!しかしここはお互いの明日の為に平和協定を」



 彼女に和解を求めたが、今もまだこちらの胸ぐらを掴みブンブンと揺さぶってくる。



「ここは...どうか平和に...あぁ、気持ち悪いぃ...」



 まるでステロイドでもキメているかの如き彼女の怪力による揺さぶりは、今にも気を失いそうな程にシンの脳髄にガツンとくる。



「やめてぇ...死んでしまう」



「君何者?どこから来たの?」



 みるみる顔が青白くなったシンに後ろめたさを感じたのか彼女の揺さぶりが止む。



「出身はニホ...」



 (なに真面目に答えてるんだ?こんなバカ力盗賊女に俺の出身地を言った所で。ていうか見た目の割になんでこんなに力強いんだよ?)



「ニホ?そんな場所あったんだ。にしてもすごい痩せてるね。このまま死なれても困るし、これ少しあげるよ」



 そう言って食品の沢山入った籠を見せてきた。

 どうやら彼女があのひったくりの犯人らしい。



「すいません、ありがとうございます...」



 盗んだ物を手渡されて感謝するのも嫌な感じだが今自分は危機的状況なのだ。生きねば。



「そんな言葉遣いやめてよ。歳は同じくらいでしょ。それ食べなよ?死にそうだよ?」



「あぁ、そうだな。ありがとう。じゃあ俺から降りてくれ」



「あぁ、ごめん」


 






 



 


 


 










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