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それでもこの世界を愛そう  作者: じぇい
 第1章 ルナの娘 【アルバイノ】
4/11

04『デュセールって街』




「お前を見てると思い出すなぁ。昔のお前を」



「あたり前じゃない。私だもの」



「あの時みたく若返ってやくれないもんかね」



「なに言ってるのよ?今もまだ現役、街の男が私を見ればイチコロよ」



「そりゃないな。お前を愛し乗りこなせるのはこのオ・レ、だけさ」



「ヤだもっっ!!」



 この中年夫婦の後ろで荷台に無銭乗車しているシンは、この会話と、ある事も気がかりだった。



 一体あの真っ白な女はなんだったのだろう。



 大穴に落ちた時、崖の上に立っていたあの女───。



 髪から肌まで全てが白粉を被ったかのように真っ白なあの女───。



 崖から落ちて以降の記憶がどうしても思い出せない。というか、存在しないのだ。



 警備員と共に崖から落ち、死んだと思ったら廃村で目覚めた。

 考えれば考える程訳がわからなかった。



「あんた、デュセールが見えてきたわよ」



 シンは体を起こして荷台から夫婦越しに馬車の前方を覗き込むと、石で出来た障壁が何十メートルも左右に広がっているのが見えた。



 左右の障壁との間には、運送トラック一台が通れそうなサイズの木でできた両開きの門があり、その上には左右の障壁間を行き来できる物見台がある。



 映画でしか見たことのない石の障壁に魅入られている間に、気づけば門が目の前に見えるほどに近づいていた。



「門が閉じてるな。どうすりゃいいんだ?」



「読んだら門番が顔出すんじゃないかしら?」



「おっ、そうだな。おおぉぉぉい!!!」



 シンはその男のかなりの声量に驚き、慌てて体勢を低くした。

 すると物見台の方からなにやら気怠そうな男の声が聞こえてくる。



「...ったく。はぁぁい!はい!こちらデュセール門番。何用で?」



 物見台の影から出てきたのは、寝癖のついた茶髪を生やした痩せ型の男、汚れた白いTシャツのような物を身につけている。



 門番といえばもっと顔の見えない鉄兜、コテコテの鎧に槍。のイメージだったが大分ラフだ。

 しかし石の障壁に門番の時点で十分に現代日本ではありえない光景だ。



(はぁ...やっぱり日本じゃないな。というかあの門番、ラフだな...)



「あんたが門番か?大分ラフだな。門を開けてくれ!この街に用があって来たんだ!」



 どうやらこのおっさんも自分と同じ事を感じているようだ。



「いやぁ、いきなり入れてくれって言われても。今なにかと物騒ですからねぇぇぇぇぇぇぇ。盗賊に人さらい、奇人に変人、それに...吸血族とかね」



「お前さんは馬車に乗ったこの中年夫婦がそう見えるのか?交渉があってわざわざ遠い村からここまで来たんだ。早く通してくれ」



「いやぁ、だからね、身元の知れない人間は通さないようにって言われてるわけですよ。王国の方からチュロス団が来るってのもまだ先だし...お宅、チュロス団?」 



「だから中年夫婦がそう見えるのかお前は??ほれ、そんなに怪しむなら荷台に積んでる物でも確認したらどうだ?牧草ロール以外は積んでない!」



 (...いや、1人積まれてます)



 シンはそこで姿勢を低くしたままバッグから缶詰を取り出し中身を食べ出した。とんだ陰湿見物客だ。



「はぁぁぁぁぁぁ...。確認しに行った所をなにかしようってんですか?身元不明者は通せないんだって。せっかく気持ちよく昼寝してたのにさ。諦めなよおっさん」



「おっさん...だとぉぉぉぉぉぉ!!??」



 そのゴタゴタを聞きつけたのか物見台の奥からさらにもう1人が小走りでやってきた。



「おい!なにを揉めているんんだ!」



 先程からの物臭な門番と違い、上等な鎧に身を包んだその男はどうやら上司らしく、物臭な門番はその男が現れると、鼻をほじるのをやめ、物凄い勢いで鎧の男に敬礼した。



「ジャック隊長!先程から門を開けてくれとの輩がおりまして...」



「ん?そちらのお二方!何用でデュセールに!」



 丸く刈り上げられた頭をした隊長と呼ばれる男の勇ましい声が、林の中に反響する。



「おぉあんたは隊長殿か!ここには村開発の交渉に来たんだ!そのヒョロついた男が難癖をつけて門を開けてくれんのだ!どうにかならんか!」



 中年夫婦の夫がやってきた経緯を説明すると、隊長と呼ばれる鎧の男は横で敬礼している門番の頭を力強くはたいた。



「馬鹿者!お前にはこの夫婦が危険人物に見えるのか!急いで門を開けてこい!」



 門番がフラフラと物見台から消え、ほんの数秒で門が重たい音を立てながらゆっくりと開いていく。



「いやぁお二方!申し訳ない!あいつは命令を真に受け過ぎるのだ!普段は仕事熱心な奴なのだが!」



(それは違うと思う...)



「それは違うと思うぞ隊長殿!!」



 門をくぐるとその先には、横幅の広い石の道を馬車や人々が往来し、道の脇には、木と赤レンガの建物が所狭しと建っていた。



(こんなの函館でしか見たことない...)



 所々に建てかけの建造物があることから、この街もまだ発展途上の様に感じられた。



 食材を入れた籠を持った女性が多いということは今は昼時だろうか。



「すげぇな...オレホントに、別の世界、異世界に来ちゃったんだな───」




「───ちょっと!!誰か!!あいつを止めて!!」




 女性の叫び声が聞こえた方を見ると、食べ物籠を何者かに引ったくられたのか、必死に助けを求める女性を尻目に、籠を持ち全力疾走で逃げていく薄汚れたローブを身につけた者。



 そして異様に速い。明らかに速い。



「おぉぉ?!誰か荷台に乗ってるぞ!?」



 シンはここで初めて夫婦に無銭乗車がバレた。



「ハッ...ヤベぇ!」



 驚き慌てた夫婦でグラグラと揺れる馬車から急いで飛び降り、街の路地裏へと走り出した。



「お、おい!」



 シンは中年夫婦に申し訳なく思いながらも、心からニ人に感謝した。



「ありがとうございました!!この恩はいつか!」



 夫婦は訳がわからずポカンと空いた口が塞がらないようだった。









 


 






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