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それでもこの世界を愛そう  作者: じぇい
 第1章 ルナの娘 【アルバイノ】
1/11

01 『友人求め奈落の底へ』




「時刻は二時になりました。ニュースをお伝えします。今日で三崎市での行方不明者数は三十人となり、立ち入り禁止区域には決して近づかないよう、県警は数々の自治体に注意を促しています───」



 ───行方不明者が三十人。彼にとってその数字が二十八から増えたことは、強い空虚感共に、自分への憤りを感じさせた。



「じゃあ母さん、ちょっとコンビニ行ってくるよ」



 自宅の玄関で靴を履き終わると、廊下奥の台所へ声をかけた。



「シン!気をつけるんだよ!」



「あぁ」



 家を出てすぐ横に立てかけてある自転車に跨り、友人二人が消えた場所へと走りだした。



 綱島進。

 例えば彼の特徴と良い所を五個言えと人に言った時誰もが『良い人そう。』とだけ答えるような、そんな男。



 もう手をかけていない眉下まで伸びた黒い髪の毛も、入学当初は茶髪に染め上げたり、セットしたりと個性を出そうとしたが、それは個性ではなく量産型だと悟り自分を変えない方向にシフトしたのだ。



 そんな自分を大事にしているシンの学校生活での楽しみは、授業中にこっそりと読むSF小説と、所属している学校新聞部での活動だった。









 二日前の金曜日───。



「さてシン、ハルカ、今月に出す記事はホットだ!今話題の立ち入り禁止区域についてやろうと思う!」



「私それ知ってる!最近ニュースとかでやり始めたよね?」



「そんな物騒な場所、危ないからやめとけよ」

 


 明るい髪色をした能天気な男子生徒が今月の記事に関しての話題を切り出した。



「シン、これは誰もが気になる話題だよ。これでテレビが報道してる以上のことがわかれば学校中で人気者になれそうじゃないか!明日にでも調査に行こう!」



「悪いな、俺明日バイトだから。楽しい冒険なら二人で行ってくれよ」



「この陰湿なキャラクターめ。しょうがないハルカ、俺と二人で行こう」



「リクトと二人?はぁ...ホント不真面目な部員だよねシンって、凄いモノを見逃しても教えてあげないわよ??」



「それが真実か否か、それは銀河を統べるお方、フィリップ帝のみが知り得る事」



「なにそれ、もしかして面白いと思ってる?」



 中学から仲の良かった、長い黒髪を後頭部で団子結びにした女子生徒が彼に軽蔑の視線を送る。

 


「なんでそんな事言うのぉぉぉぉぉ」



「うわ近づかないで」










 ───その二人は、昨日でどこかへ消えてしまった。



 (あぁなんで...二人でどこに行ったんだよ...)



 シンに仲の良い友人はあの二人しかいないのだ。

 この先二人を失ったまま人生を送るくらいなら、いっそ地の果てまで追ってやると彼は思っていた。




「───ちょっと君、ここは立ち入り禁止区域だぞ。さぁ離れて」



 ハッとして腕時計に視線を落とすと、時刻は3時過ぎ。



 ここは住宅街から何キロも離れた人気のない場所、足元の古びたアスファルトを除けば、人工物は一切ない。

 


 シンは物思いにふける間にかなりの距離を移動していた。



「すいません。ここで何があったんです?」



 目の前には中年小太りの警備員と思しき男。

 その男の後ろには青々とした雑木林が太陽の光をチラつかせながら生い茂っている。



 この場所は気になって調べた事があるのだ。

 場所なら知っていた。



「若者がここで沢山亡くなってるんだ。いや、正しくは失踪だ。あまりにも行方不明者が出るもんだから政府から閉鎖命令が出たんだ」



「閉鎖?にしても遺体捜索も何もしている様に見えないんですが」



「あぁ...この話はここだけだぞ?警察は一切ここに立ち入った捜査をしていない。遅れてやって来たと思ったら立ち入り禁止テープを貼っていっただけ。行方不明者の遺族も遺体の捜索を強く訴えているそうだが───」




 シンは立ち入り禁止テープを押し除け、雑木林のあぜ道の先、二人が消えた場所へ走り出した。



「───おい!!まて!!ここに入ってはダメだ!」


 

「ここで友達が消えたんだ!!ここにいるはずなんだ!!!」



 地面の土を巻き上げながらシンは全力で走った。

 


 元陸上部の足の速さは伊達ではなく、警備員の男をみるみる内に引き離した。



「リクト!!!ハルカぁぁ!!」

 


 二人が返事をすることに淡い期待を込めて力一杯呼びかける。もちろん返事はない。



「おぉぉい!お前らど...」



 シンは地面を滑りながら慌てて足を止めた。

 


 そしてその目下の光景に肝が潰れそうになった。


 

「はぁッ...なんだよこれ...」



 足下には大型客船を軽く飲み込む程の大穴が広がっており、真っ暗で見えない大穴の奥底を覗くと、あまりの高さに足の力が抜けそうになる。



「おい君!!!今すぐ戻りなさい!!」



 警備員の男が腹をユサユサと揺らし、激しく息を切らしながらすぐ後ろまで走って来ている。



「おっさん!この場所はなんなんだよ!!なんでこんなモンがこの街に...」



「おっさんだとぉぉぉ!!!!!?」



 警備員の男が物凄い形相で走るスピードを上げ、タックルの構えをとりこちらへ突っ込んで来た。



「まてまてまてまてまておっさん!これを見ろって!おいおいおいおいおい!!!」



 シンは思うよりずっと力強いタックルを真正面からくらい、息をつくまもなく男と共に崖から放り出された。

 そこでようやく警備員の男も足下に地面が無いことに気づき、聞くに耐えない悲鳴を上げ始めた。



 ───シンは奈落の底へと落ちていく間に自分に抱きつく男の肩から、崖の上でこちらを見つめ佇む、月の如き銀色の目をした真っ白い女性が見えた気がした。




「「んあぁぁぁぁぁああぁぁぁ!!!!!!」」




 そして二人は共に真っ暗な奈落の底へと落ちて行った。


 










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