1人目発見!
「やあ!朝だよ。起きなさーい!」
その騒がしい声で俺の安眠は妨げられた。
うっすら開けた目で時間を確認すると、朝5時と時計の針は示しており、俺の目覚まし時計に設定してあるアラームよりも1時間以上早かった。
「どう?起きた?」
「ああ、朝女の子に起こして貰えるなんて、こんな時間じゃなきゃ最高だったかもな」
少女は、ほっぺをプクッと膨らまして、不満そうにしながらそっぽを向き、いつもはこの時間のはずなんだけどなぁと小さい声で呟いていたが、俺はそんなこと身に覚えがないのでよく分からなかった。
そういえば、なぜ朝からこの子がいるのかと疑問に思っている人もいるだろう。
その理由は、昨日の続きにある。
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「紆余曲折あったけど、全て理解してもらったというわけで、夕食でも食べますか!」
「おい、お前。なんでまだここにいるつもりなんだ。とりあえず事情は分かったから今日のところは帰ってくれ」
少女は、とても驚いた様子で目をパチクリとしているが、そうしたいのはこっちの方だ。
「いやいや、ここ俺の家だし。そんな顔されても泊めるわけにはいかない」
「そんな冷たいこと言わないでくださいよ。それに泊めてもらう以上、お金は払いますよ?」
ッッッ…!!!!
「そういう大事なことは早く言えよ。今晩はハンバーグだ!ほらお前、一緒に買いに行くぞ!」
「え?あ、はい!あと私の名前はお前じゃなくて、桃花です!」
「そうか、じゃあ桃花。買い出しに行くぞ、もちろん桃花のおごりで!」
「は、はぁ……」
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てなわけで俺もノリノリでOKを出してしまった。
どうせ巻き込まれるのを防げた自信はないので、貰えるものは貰っておこうと思ったが、こう毎日朝早く起こされるんじゃたまったもんではない。
「とにかく、起こしてくれるのはありがたいが、もう少し遅めで頼む」
「わかりました。私も悪意はなかったので許してください。でもまあ、今日はもう起きてしまったということなので、この時間を利用して、鍵の探知機、ひいてはハートロックオンについて話そうと思います」
そう言って桃花が取り出したのは、よくある普通の眼鏡だった。
「これがハートロックオンです。使い方は簡単。かけるだけですね。鍵の所有者が視界に入ると、自動で探知して教えてくれます。あと、鍵には順番があるので一回確認したからといって絶対に所有者ではないという保証はないのでご注意を。見つけることができた後は、拓真さんの頑張り次第ってとこです!」
「なるほど、大体わかった。ようは、これをかけて生活してれば所有者を見つけられるってことか。」
「そんなとこですね」
学校で初日につけてなかった眼鏡を、突然2日目からかけて行くのはちょっと嫌だったけれど、見た目は普通の眼鏡なので問題はないだろう。
俺が支度を終えて家を出ようとすると、桃花が見送ってくれた。
「拓真さん、よろしくお願いしますね!必要であれば、私もお手伝いさせていただきますので遠慮なく。」
高校生になってから、朝誰かに見送ってもらうのは久しぶりだったので、とても嬉しい気持ちがして手を振って返した。
学校へ着くと、クラスにはまだ俺のことを覚えていない人の方が多く、俺の想像より眼鏡は目立たなかった、2人を除いて。
「あれ〜拓真その眼鏡どうしたの?2年生になったからイメチェン?」
「似合ってないわけではないけど、私はつけてない方が好きね」
そう、柚月と優佳だ。
流石にこの2人には突っ込まれるのを回避できなかったので、それっぽい適当な理由を考える。
「最近少し視力が悪くなってきたからな。もしも黒板の字が見えないなんてなると困るから、一応かけてきたんだよ」
「そんなに目が悪かったかしら?まあいいわ」
「そうだねー」
2人は納得したようで、話題は別のものに変わっていった。
どうやらやり過ごせたようだ。
安心して緊張が解けたのか、急にトイレへ行きたくなったので、まだ朝のホームルームまで時間があることを確認し、2人に断ってから教室を出る。
早足で階段を下って用を足し、すっきりとした気分で教室に戻ろうとすると、ばったり懐かしい顔に出会った。
「あれ?せんぱーい?お久しぶりですね」
「真冬?久しぶりだな。中学以来だから1年ぶりくらいになるのか。まさかこの高校に進学してるとは知らなかったよ。」
「覚えててくれたんですか!まあ、こんな可愛い後輩のこと、忘れようにも忘れられませんよね。せーんぱい!」
楪真冬、俺の中学時代からの1つ下の後輩だ。
自分でも謳っているだけあって、容姿に関しては申し分のない可愛さをしている。
そのあざとい性格も合わせてかなり男にモテていたが、同性の一部からは疎まれていたりもした。
俺はそれが気になって何度かやめるように言ったが、一向にやめる気配が無かったので諦めたのを覚えている。
「どうしたんですか?せっかく久しぶりにこんな可愛い後輩に会えたんですからもっと喜んでもいいんですよ!」
「真冬、まだそんな感じなのか。やめとけって俺言ってただろ?」
「やめるったって、私はこれが素なんですよ。
そ・れ・よ・り、なんで度が入ってない眼鏡なんてかけてるんです?」
見破られてしまっていた。
これでは先程の言い訳が通用しない。
どう説明するか、、、、
「イメチェンだよ、イメチェン。こういうのもいいかなって思ったんだ」
真冬は、品定めするかのようにジッと眉を潜めた後、上目遣いでニコッと笑いながら口の横に人差し指を当てる。
「前の方が私はカッコイイと思いますけど、これはこれでカッコイイですね!」
そう言い残して、真冬は嵐のように去っていった。
いくら慣れてるとはいえ、最後のはやばかった。
俺も男だ、あんなのを日常的にされるとうっかり勘違いしてしまいそうになる。
気をつけなきゃなと思いながら、スマホで時間を確認すると、ホームルームまで残り時間が僅かとなっていたので少し急いで教室へ戻った。
ホームルームを終えると、今日から授業が始まった。
1限は数学で、先生の自己紹介やシラバスを配った後、今日は関数について〜〜〜〜と話し始める。
俺の席は幸運にも窓側の一番後ろという、誰もが羨むような場所にあったので、窓から校庭を見て体育をしている生徒や、クラスの人間を自然に確認できる。
今日は雲一つない晴れた空で、鳥たちは元気に飛び回り、気持ちのいい日差しが届いてくる。
俺は桃花の影響もあってすでに眠いが、1回目から寝てしまうと先生からの心象が悪くなってしまうのもあり、気合で起きた。
内容が頭には全く入ってこなかったので、後で優佳にでも助けてもらおう。
休憩を挟み、2限目の世界史で俺はようやく仕事を始めるとした。
(さてと、取り敢えずクラスの連中から確認するとしますかね〜〜〜
え………ちょっと待ってくれ。これ壊れてないよな?まじかよ、勘弁してくれ …………)
そう、俺は1人目の所有者を早速発見してしまったのだ。いや、それ自体はいい。だが、相手が問題だった。
(いや、それは無理だって………)
そう、1人目の所有者は、学校でも1.2を争うような美少女、九重夏鈴その人だった。
できるだけ早く更新できるように頑張ります!