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06 脱落者

非常に遅れましたがリアル含め様々なこともあり、モチベーションも時間も中々確保できませんでした。新しい生活になり、書く暇が極端に減りましたが新たな価値観を持ってがんばります!

 三日目……既に皆の体はボロボロで、昨日の疲れが取れていない者も多数出ていた。それでも昨日と同じように走らされ、前回以上の人が訓練中に倒れた。

その日の夜、各部屋から聞こえてくるのは呻き声やら啜り泣く声。俺の部屋からは啜り泣きどころかおうおうと泣く声が響く。当然、ガエルのものだ。今日はマックスも何処にも行っていない。というよりも動けないほどにボロボロで、ジョンも同様に疲労から自由時間になったら即座に寝てしまった。よって今、ガエルをなだめる仕事は俺しかできないのだ。ガエルもボロボロだろうに泣くものだから寝れないのだ。


「なあ、頑張ろうぜ? まだ始まったばかりじゃんか」


「うぅ……リアム………お前慰めるの下手だな」


励まそうとしてる対象に少し心にくることを言われた。事実なんの慰めにもなってないかもしれないが俺にはどうすればいいかわからない。


「とりあえず泣いてても仕方ないし、羊でも数えて寝ようぜ。早く寝とかないと明日が辛いぞ」


「う、うん……そうするよ」


 十分もしないうちに、俺が先に寝てしまった。俺も疲れているのだ。朝、目覚めると涙の乾いた跡がくっきりと残るガエルがいた。いつまで泣いていたかはわからないが目に隈もできておりどこかげっそりしていた。

 そんな状態で過酷な訓練に耐えられるはずもなく、昨日よりも早くガエルは倒れた。ガエルだけじゃない。教育隊の一割近くがぶっ倒れた。さすがに怒りで教官を殴りそうになったが、自分の意思でかろうじてその拳を鎮めた。


「すまないみんなぁ! 俺がグズだから……みんなに迷惑かけて……」


「ガエルだけじゃねぇよ……俺もマックスも倒れたし、この部屋じゃリアムぐらいしかまともに訓練に着いてこれてねぇ」


部屋でガエルが俺達に謝っているのをジョンが止めるが、ガエルはまた泣き出してしまう。そして俺もちょっとばかし本音をこぼしてしまう。


「俺達ここでやらされてるのって走らされて筋トレして、座学でちょっと軍隊っぽいこと教わってるだけで……こう剣を使ったりとかそれらしいことさせてもらえてないしな」


「そんなの基礎ができてからに決まってるじゃないか。剣はおもちゃじゃないんだよ? 」


またソフィアが入り口に突然現れて会話のなかに入ってきた。


「数か月後あるいは、僕達が今の訓練に着いてこれるようにならないと無理だと思うよ。僕の知り合いからそう聞いてる」


「そういえばソフィアってどんな家の人なんだ? 色々知ってるし」


ふと気になって俺はそう尋ねた。そうしたら、ソフィアはふふっと小さく笑ってから


「名字通り、ちょっとした町の司書の娘さ。ちょっとだけ良いとこのね」


そんな人がなんでこんなところに来たのか気になったが後はまだ秘密だと言って帰ってしまった。一体何をしに来たのだろうか? 俺にはわからなかった。

 ソフィアが俺達の部屋に来たのは俺の様子を見に来ただけのようだが、俺は最後までそんなことわからずにいた。ソフィアが部屋に戻ると、いつも一緒にいるアンネにこの事を話していた。


「もしかしたら一波乱起きるかもね。どうも彼、頭の出来はよくはないようだし」


「対策はないのか?」


「対策をしたところで、結局教官側が無理矢理引き起こすさ。ここはそういう場所だから」



──翌朝、俺は視界に入った光景に絶句した。


「お、おいガエル! なにやってんだよガエル! 」


ガエルが首を吊っていた。


「いいから早く下ろせ! 」


ジョンがそう言って紐をほどきガエルの脈を計るが、やはり死んでいた……




 



「貴様等ぁ! 何故気付かなかった! 」


俺達はこの事を速やかに教官に報告した。そしたら総員グラウンドに集められ、この怒号である。同室の俺達は普段教官が立つ朝礼台にたたされ立たされ、何故寝ているときに自殺したガエルの動きに気付かなかったのか、沈黙する俺達に何度も何度も怒鳴って問い質した。他の同期に対する晒し者状態である。俺は俯いたまま拳を強く握って怒りを堪えていたが、遂に不満が抑えられなくなった。


「──あんたが殺したようなもんだろ」


「あぁん? リアム、今なんていった? 」


「ここ来ていきなりあんなメチャクチャな量の訓練させて、皆吐いてまで動かされた! こんなのされたら死んだ方がマシだって思う奴が出ても仕方ねぇだろうが! 」


「お、おいリアムもうやめろっ! 」


マックスとジョンが流石に不味いと俺を静止させる。教官は腕を組み、一瞬何か考えたようにしたあと、ワントーン低い声でこう言った。


「──軍をなめるな、ひよっこども」


周りがざわついた、先程までの空気から一変し不穏な空気が辺りを支配した。


「苦しいだ? 死んだ方がマシだ? バカめ、当たり前だ。俺達は命を懸けて戦う兵士だ。お前達はここでその基礎中の基礎を学ぶんだ。いいか、例えここにいる貴様達が全員で掛かってこようと俺は返り討ちにできる。訓練されているからな」


「嘘付け! 俺達の分隊だけでも二〇〇人以上いるんだぞ! 」


俺は教官の言葉に噛みついた。もはや理性的に話してなどいない。ただ教官を否定したかった。


「なら、試すか? 」


「言ったな? まさか殴られてから上官に背いたとか騒がないよな? 」


「約束してやるぜ、今から朝飯の時間までこのグラウンドで教官である俺に対するあらゆる攻撃を許可する。リアム、お前だけじゃない。全員だ。全員で来い」


言質は取った。俺以外の全員が教官に対してやる気になっていた。


「いくぞお前らぁ! 続けぇ! 」


俺は他の仲間を後に続けさせようとそう叫び教官に突っ込んだ。

思い切り拳を後ろから前に突きだして教官の顔面を狙う。が、教官は足を一歩後ろに後退するだけで回避して、片手で俺を転倒させた。

他のみんなが臆することなく後に続き、教官をまるで小学一年生の団子サッカーみたいに取り囲んで襲っていた。

しかし、そんな中でも教官を殴ったものは誰もいなかった。攻撃するものはみな返り討ちに合い、何人もの人を巻き込む形で投げ飛ばされた。


「はぁ……みんな頭に血が上ってサル以下になってるよ」


ソフィアが集団からやや離れた場所で右手に手のひらよりやや大きい石を遊ばせながらそう言った。しかも最初に投げ飛ばされた俺のところにわざわざ歩いてきた言ってきた。


「チャンスがあるとしたら一回だけかな……」


独り言を呟きながら石を手に持ち、構えた。

ソフィアの視界には集団の真ん中がある。何を狙っているのかと思っていたら投げ飛ばされた生徒の間から一瞬だけ教官の後頭部が見えた。その一瞬に合わせてソフィアが投石した。

投げた石の軌道に人が入ることはなく、教官の後頭部に当たろうとした瞬間のことだった。──投げた石が俺とソフィアの顔の間を通過した。


「早すぎて見えなかった。一瞬で石をキャッチして投げ返したんだろうけど……参ったな……これは確かに打つ手がないよ」


ソフィアは完全に諦めたようで、一度投げ飛ばされて再び立ち向かおうとするアンネを引き留めてやめるよう促した。なんでこいつはこんなに冷静で他人事なんだ。


「君だって実力差は充分わかったろぅ? この大人数で今のところ怪我人はいない。これも手加減されてる証拠さ。教官の発言は嘘偽りない真実。そして僕達はまだ市民と変わらない無力な存在だってことがね」


俺は認めたくなかった。同じ人間なのに、教官と俺達では圧倒的な実力差があること。何故最強の肉体を貰ってるはずの俺が手も足も出ないのか。最強の肉体というものを疑った。




──結局、誰一人としてかすり傷すら与えることはできなかった。

この一連の騒動のうち問題になったのは一人の自殺者を出したことだけだった。

つまり、責任を負ったのは教官のみということだ。その日の夜、教官はソルジアの執務室に呼び出されていた。



「すみません少佐。こんな早くに自殺者を出してしまい」


「こちらこそ詫びたい。私が通常より厳しく指導するよう命令したのだからな」


「いえ、これは俺の指導力不足です。今まで誰一人自殺者を出してなかったのは結局俺の教え方に甘さがあったから耐えられていただけなんだと痛感しました」


「──貴様のキャリアに傷を付けたことを改めて詫びさせて貰う。今回の件、私が責任を持つ。あの分隊については今後通常程度の訓練にレベルを戻して構わない」


「わかりました……それでは、私はこれで帰ります……」


陰鬱な雰囲気が分隊を覆う。ここに来てまだ一週間もたっていない。地獄はこれからなのだ。

次回予定は未定。最近は絵を描くこともしていたりするのですがこの作品の登場キャラを描くのは苦戦してますw

中々私の腕では表現しきれない

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