江森円佳の事情
授業が終わり放課後。
「勇ちゃん。ここの場所分かんないから、一緒に帰ろ?」
「いや、それは先約が・・・。」
「誰と帰るの?」
「私です。」
そこには、さらっとした後ろの黒髪の一部をそのまま前に下ろし、眼鏡を掛けている地味な女子がいた。
「誰?」
「星野加奈です。勇二君の恋人です。」
「えっ、勇ちゃん。彼女いんの?」
「えっ、うん。まぁ。」
勇二は照れた。
ふーん、と江森は言い、加奈のことをジロジロ見ながら微笑した。
「宜しく、星野さん。」
江森は握手を求めた。
「あっ、はい。」
加奈は手を差し出した。そしたら、江森はギュッと加奈の手を強めに握りしめた。
「痛っ。」
「どうした加奈?」
「いや、なんでもないわ。」
「けどここ始めての場所だから、分からないんだけど。」
「う~ん。どうしたらいい?」
勇二は加奈の方を見た。
「三人で帰りますか。」
加奈が渋々提案した。
「そうするか。」
「・・・妥当ね。」
三人は学校から帰った。
「円佳は今どこに住んでるの?」
「ふふーん、それはねぇ。」
「えっ、うちに暫く住むの??」
勇二と加奈はギョッとした。
「そうなの。引っ越しと引っ越し場所が間に合わなくって。」
勇二と加奈は目を合わせ、加奈の頬は急速に膨らんだ。
(か、可愛い・・・。)
勇二は吞気なことを考えていた。
「うちのマンションに空きがあるか調べてみましょうか?」
「えっ?」
「いや、それは無茶だ。そんなにここの家族はお金がない。」
「えっ。星野さん家って金持ちなの?」
「あっ、あぁ、まあな。」
「ふーん。」
円佳は二人をじろじろと見た。
加奈はしょぼくれていた。
暫く3人は無言で歩いた。
そして、
「じゃっ、ここで。加奈。」
加奈と分かれるいつもの駅に着いた。
「え、あっ、うん。」
加奈は一段としょぼくれていた。
「加奈、大丈夫?」
「うん、大丈夫。また明日ね、勇二君。」
加奈はとぼとぼ歩いた。
「なんか星野さんて暗い感じだね。」
「そうか?静かな感じだな。いつも本を読んでるな。」
「えーっ、それ暗くなーい?」
「うーん、僕も本好きだから気にしたことないな。」
「ふーん。」
そして、勇二と円佳は勇二の家に着き、
「母さん。どういうこと?」
「驚かそうと思って。」
両親はニヤニヤしていた。
「全く、こっちは彼女がいて気まずいよ。」
「どうして?この子がいてどうして気まずいの?」
「だから、彼女がいるから!」
「答えになってないわ。」
二人は、?となった。
「僕の言っている彼女はガールフレンドのことなんだけど。」
「あんた彼女出来たの?!」
「えっ、あっ、まぁ。」
「あなた、今日は赤飯ですね。」
「おい、それは違うぞ。」
両親は笑った。
「だから気まずいの。」
「仕方ないじゃない。えんちゃん(円佳の母)が困ったって言ったら、ほっとけないじゃない。」
「家族が増えて賑やかになって良いじゃないか。」
両親は笑った。
(駄目だこりゃ。)
勇二は諦めた。
{ふーん、で暫く居ると)
(うん}
{ふーん)
(加奈さん?}
{まっ、仕方ないわね
けど、浮気したら折檻だから)




