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秘密の恋人  作者: 峪明博
9/11

江森円佳の事情

授業が終わり放課後。

「勇ちゃん。ここの場所分かんないから、一緒に帰ろ?」

「いや、それは先約が・・・。」

「誰と帰るの?」

「私です。」

そこには、さらっとした後ろの黒髪の一部をそのまま前に下ろし、眼鏡を掛けている地味な女子がいた。

「誰?」

「星野加奈です。勇二君の恋人です。」

「えっ、勇ちゃん。彼女いんの?」

「えっ、うん。まぁ。」

勇二は照れた。

ふーん、と江森は言い、加奈のことをジロジロ見ながら微笑した。

「宜しく、星野さん。」

江森は握手を求めた。

「あっ、はい。」

加奈は手を差し出した。そしたら、江森はギュッと加奈の手を強めに握りしめた。

「痛っ。」

「どうした加奈?」

「いや、なんでもないわ。」

「けどここ始めての場所だから、分からないんだけど。」

「う~ん。どうしたらいい?」

勇二は加奈の方を見た。

「三人で帰りますか。」

加奈が渋々提案した。

「そうするか。」

「・・・妥当ね。」

三人は学校から帰った。

「円佳は今どこに住んでるの?」

「ふふーん、それはねぇ。」

「えっ、うちに暫く住むの??」

勇二と加奈はギョッとした。

「そうなの。引っ越しと引っ越し場所が間に合わなくって。」

勇二と加奈は目を合わせ、加奈の頬は急速に膨らんだ。

(か、可愛い・・・。)

勇二は吞気なことを考えていた。

「うちのマンションに空きがあるか調べてみましょうか?」

「えっ?」

「いや、それは無茶だ。そんなにここの家族はお金がない。」

「えっ。星野さん家って金持ちなの?」

「あっ、あぁ、まあな。」

「ふーん。」

円佳は二人をじろじろと見た。

加奈はしょぼくれていた。

暫く3人は無言で歩いた。

そして、

「じゃっ、ここで。加奈。」

加奈と分かれるいつもの駅に着いた。

「え、あっ、うん。」

加奈は一段としょぼくれていた。

「加奈、大丈夫?」

「うん、大丈夫。また明日ね、勇二君。」

加奈はとぼとぼ歩いた。

「なんか星野さんて暗い感じだね。」

「そうか?静かな感じだな。いつも本を読んでるな。」

「えーっ、それ暗くなーい?」

「うーん、僕も本好きだから気にしたことないな。」

「ふーん。」

そして、勇二と円佳は勇二の家に着き、

「母さん。どういうこと?」

「驚かそうと思って。」

両親はニヤニヤしていた。

「全く、こっちは彼女がいて気まずいよ。」

「どうして?この子がいてどうして気まずいの?」

「だから、彼女がいるから!」

「答えになってないわ。」

二人は、?となった。

「僕の言っている彼女はガールフレンドのことなんだけど。」

「あんた彼女出来たの?!」

「えっ、あっ、まぁ。」

「あなた、今日は赤飯ですね。」

「おい、それは違うぞ。」

両親は笑った。

「だから気まずいの。」

「仕方ないじゃない。えんちゃん(円佳の母)が困ったって言ったら、ほっとけないじゃない。」

「家族が増えて賑やかになって良いじゃないか。」

両親は笑った。

(駄目だこりゃ。)

勇二は諦めた。

{ふーん、で暫く居ると)

(うん}

{ふーん)

(加奈さん?}

{まっ、仕方ないわね

けど、浮気したら折檻だから)


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