ヤカン
眠たい。
真昼の太陽が熱量を伝えてくる。
「さっき起きた」
お父さん。
さっき起きたからまだ眠たいんだよ。暑いですね。
「汗かいたな」
「そうだね」
「ジュースいるか」
「いらない。後で水飲むところで飲んでくるから」
「…………」
熱中症には気をつけてね。無理はしないことだよ。歩くのはゆっくりでいいから。
一歩先を歩きながらお父さんの歩幅に合わせる。左の芝生の上ではサッカーボールが行き来する。体育の授業でもやっているみたいに、子供と、もう一回り小さい子供。
「ペットボトルちょっととって」
肩に掛けたかばんを前にやる。チャックを開けて湿ったペットボトルを取り出す。
「ありがとう」
「水飲んできていい?」
「いいよ」
道をそれて、端にある水飲み場へ普通のスピードで歩く。あっという間に着く。そうして、上向きの象の鼻の横に、優しく縦回転を掛ける。そうして、水がもこもことわき出てくる。