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ひこうき雲  作者: Aoi
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B-2

『何かを得たとき、我々は同時に何かを失う。

もちろん進歩というものは間違いなく前向きであるだろうが、失うものにも我々にとって貴重なものが(もしくは貴重であったものが)含まれていると理解するべきなのかもしれない』



俺はふと、曾祖父の本のこの一節を思い出した。


奇しくも今年は曾祖父が転送装置を発明して120年目の節目の年だ。

ちょうど良い。会社の120年記念イベントとして一つプロジェクトを立ち上げよう。


何とかして飛行機を手配して地球一周計画を実行する。

これこそが俺の求めていたことであり、そして曾祖父の偉大な発明に対する本当の意味での尊敬・感謝の気持ちを知らしめてくれるはずだ。

もうこうなってしまっては自分を止めることは出来なくなっていた。


「社長、来年の宇宙開発プロジェクトに向けて全社をあげている時期だということは理解しているつもりですが、一つどうしてもやっておきたいことがあります」


俺は父親でもある社長に直談判した。

全てを打ち明けた。熱意を込めて。


「こんなことをしても何の利益にもならないかもしれませんが、自分にとってこの会社の存在意義を深く示してくれると考えます。

偉大な進歩の陰には必ず失われ忘れ去られてしまうものが存在する。

我々にはそれを知る義務があるのではないでしょうか」


社長は最後まで黙って話を聞いていたが、一瞬微笑んだように見えた。


「お前はまだ若い。今のうちに出来ることを精一杯やりなさい」


これで俺の覚悟は決まった。これでまっすぐ目標に向かえる。


まずは機体だ。


現存する航空機の中で実際に航行できる機体を探す。

航空博物館、元航空会社の眠った格納庫、レトロ航空機の愛好会など可能性のあるところに片っ端から声を掛けた。


その結果、昔国内線として一般的に使用されていた小型ジェット旅客機を借りることができた。

低翼配置の後退翼、機体後部の二発のターボファンエンジン、T字尾翼。


データによると航続距離は約3000キロメートルらしい。

機体と同時に、航空機愛好会の一員でもある元航空会社パイロットの協力を得られることになった。


「面白そうじゃないか!ぜひ協力させてくれ」


彼もまた最後の航空機パイロット世代の生き残りとして、俺の考えに賛同してくれたようだった。



次に燃料だ。


石油がほとんど枯渇してしまった現代ではジェット機の燃料はなかなか手に入りにくいかと思っていたが、ジェット燃料のケロシンは大量に長期保存されていたおかげで何とかかき集めることができた。


世界各国の主要都市の空港(跡地も含まれるが)に先に燃料を置いておけば、給油も問題ないだろう。



最後に、世界各国の飛行許可及び空港使用許可を取りに飛び回った。


これであとは実行するだけだ。


結局準備の段階で、各地を回るのに転送装置を何度も何度も使用した。


やれやれ、もう既にこの段階で曾祖父にたくさん感謝しないといけないな。



そうして俺は、何とかプロジェクトを実行できるところまでこぎつけた。



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