動かないペシミスト
生温いコーヒーに
白いカップ
似合わない服装だから
香水で忘れる
雨が降りそうな日は
頭痛薬
小さなケースに入れて
傘の色は赤
足元の猫
持ち上げる鞄
靴が鳴るから
水溜まりの有無
虹色になる
雨の日の道
百葉箱の思い出
秋雨の道連れ
物別れの鼬
物忘れの狸
動かないペシミスト
あの日に忘れた思い出を
今 思い出したんだ
取り戻せるかな
イメージ湧かない
裏切ったまま
死んでいくのも
僕の人生だとしたら
そんなの要らない
そう思えているのが
良い事なのか分からず
顔が映る
パソコンのディスプレイ
問答無用に熱い
缶コーヒー
スーツのポケットから
ハンカチを出す
やっぱり
雨が降ってきた日は
偏頭痛
口に薬を入れて
コーヒーで流し込む
足元の音
喫煙室の煙
煙草を取り出して
オイルライターの有無
銀色になる
窓の外の雨
折り畳み傘の思い出
雨雲の黄昏れ
空回りの鼠
勘違いの蛇
動かないペシミスト
あの日に忘れた思い出を
今 思い出したんだ
知らないふり
してしまいたいな
壊したまま
死んでいくのも
僕の人生だとしたら
それを受け入れる
そう思えているのが
悪い事なのか分からず
顔を上げる
灰皿へ落ちる灰色
繋がりは切れて
遠回しの耳で聞く
噂話好きの人間が
居なくなったら
情報は皆無
嫌でも届く
確かで不確かな事柄は
元気でやっている
そんな回覧板
名前を書いて
次の人に回すのが
今の僕の精一杯
あの日に忘れた思い出を
今 思い出したんだ
もう一回 もう一回
忘れてしまいたい
あの時の彼女の優しさを
わからないとしたまま
死んでいくのも
僕の人生だとしたら
それで構わない
そう思えているのが
どういう事なのか分からず
顔が映る
帰り道の水溜まり