「荒野の二人」
「君」「僕」「死」の3ワードで作った短文から生まれた物語です。
俺とあいつは親友だった。
肩を並べて仕事をした回数は数え切れない。いくつもの死線を共に潜り抜けてきた、戦友と呼べる仲だ。互いのことはよくわかっている。
だからこそ、この結論は互いに納得がいくもので、どちらから言い出すというわけでもなく、自然と決まった。
決闘だ。
「ルールの確認をしよう。」
愛用の銃をくるくると回しながら、どこか嬉しそうに奴は言った。
ルールは単純明解。互いにリボルバーに一発ずつ弾を込め、撃ち合う。制限時間は無し。どちらが動かなくなるまで続ける。最後に立っていたほうが勝者だ。
弾が一発しかないため、外した瞬間に敗北……まぁ、死が確定する。ただ、外すことを恐れて撃つのを躊躇えば、次の瞬間には眉間に穴が空いていてもおかしくない。まさに、命の駆け引きだ。
なぜ、こんな勝負をするのか。その理由もまた、この勝負と同じように実にシンプルだ。「同じ女を好きになった」。ただ、それだけだ。だが、理由なんてそれだけで充分だろう。
互いに譲れない。だからこそ、同じく譲れないもの……命を賭けるに値する。俺はそう考えているし、あいつだって同じ考えだろう。そうでもなきゃ、こんな勝負を持ちかけてくるはずがない。
俺は、あいつを殺したくはない。かけがえのない友だからだ。だが、手加減はしない。手を抜けばこちらが死ぬ上、そもそも手を抜くというのは失礼に当たるからだ。……加えて言えば、手を抜いて勝てる相手でもない。
やるなら全力で。互いの全てを出し切ってやる。そういう意味では、この決闘のルールは最良の方法と言えるだろう。文字通り"死力を尽くす"ことが求められるのだから。
それに……実は、決闘が楽しみでもある。俺たちは、共に戦ってきた仲だ。味方にはなれども、敵として相見えたことは一度もない。
ゆえに、楽しみだ。俺の最も良く知る最強のガンマンが、どんな戦いを持ちかけてくるか。そして、その強敵にどうやって立ち向かうか。戦場に生きる身として、決闘が……ただ純粋に勝負が、非常に楽しみだ。奴がどこか嬉しそうなのも、きっと同じ理由だろう。俺たちは、そういうものなのだ。
「では……君が死ぬか、僕が死ぬか。」
ピィィンという音を残して、弾かれたコインが宙を舞う。コインが落ちたとき、決闘が始まる。友を手にかけることに迷いはない。殺るか殺られるか。ただ、それだけだ。
「「どっちでも、恨みっこなしってことで!」」
よくあるガンマンの話です。
どんな勝負になたか、どちらが勝ったかなどは読んでくださった皆様の想像にお任せします。
実はこれ、私が書いた中で初のR指定作品です。
私自身グロが苦手なため、極力描写は控えめにしてありますが……難しいものですね。