第9話 呪樹海探検隊④
日曜日はお休みしたので、今日は少し多目のつもりです。
母マリアの腕に抱かれ、飛び立っていく5匹の飛竜を見送って、母を見ると目が合ってしまった。やっぱり美人だなと思っていると、
「アリアナは、お昼からずっと眠っていたけど、あの5人、お昼すぎに来て、それからずっとあなたの寝顔見てたのよ。ポリーが居てくれなかったら、きれてたかも。」と、話かけてくる。山小屋に入り、椅子に座りこんだポリーを見て、
「ポリー、このガラクタどうしよう?」と宝石箱を取り出し、中を見せる。あの5人が持ってきた誕生祝いのようだ。ポリーさんが、ひとつひとつ手にとって鑑定していく。
「ピンクダイヤのティアラ 最愛の孫娘アリアナへ ダルシャ・クミロワって、大公何考えてんの、このダイヤの大きさ、金貨1000枚はするよ。つぎは、エメラルドのネックレス 愛する姪のアリアナへ タキア伯父さんよりって、第1公子様も奮発したわね、金貨400枚ってとこね。うわ、第2公子もすごいわ、ルビーのネックレス 愛する姪のアリアナへ トール伯父さんより、これも金貨400枚くらいするわよ。つぎは、何これ、サファイアの指輪って成人するまでつけられないでしょ、しかもこの大きさなら、金貨700枚以上するものを、第3公子のモリス様と、第4公子のギアナ様の連名で、クミロワの女神誕生を祝し、愛する姪に捧ぐだって、みんなどうかしてるわ。」
「今度、キールに行って、セリーヌ大公妃様に預けてみるわ。5人とも、こっぴどく叱られたらいいんだわ。」と乱暴に宝石箱に全て戻し、片付けると、母マリアは、俺にミルクを与え、寝かしつけてくれた。赤ん坊は、ミルクを飲んでよく眠るのが仕事だから、これでいいのだ。
朝だ、ミルクだ、たんけんだ。ミルクを飲んで、背中をポンポンされ、「ゲポ」としてから、またベビーベッドに寝かされた。ママとポリーさんは、女子会モードに突入したので、早速 思念体を昨日別れた呪樹海の中に転移させる。 あれ、もう出発してる。野営場所はきれいに片づけられ、南方向に足跡が続いている。
『このまま進んだら、エンキラーの縄張りに引っ掛かるじゃん。やばい!』
急いで、思念体を飛ばし、呪樹海探検隊を追いかける。
『あ!居た。』エンキラーの縄張りまで、あと5キロぐらいで追いつけた。
『パパ、パパ、このまま進んだら、エンキラーの縄張りに接触するよ。もう5キロ程、西に回り込んで。』と父イルシャに思念を飛ばすと、
『お!帰ってきた。解った。危なかったんだな。しかし、アリアナの思念体って、すごく便利だな。』と、返してから、
「全隊、停止。右へ進路変更する。女神のお告げでは、まだ、エンキラーの縄張りを回避できていないとのことだ。あと5キロ程セルム湖側に迂回する。」
「解った。全隊、西方向に5キロ進んで南にしんこうする。」
「おお!!」
父の言葉に、探検隊のリーダー的な扱いになっている虎人族のアムルが指示し、すんなり賛同される。機能の{{皇仙草}}収穫が絶大な効果を出している。1株を金貨60枚でニューセルムのハンターギルドが引き取ったとして、200株で金貨12,000枚。一人あたり金貨1,000枚として、日本円に換算したら、1億円か。そりゃ、言うこときくわな。と納得する。
周辺サーチをしていると、エンキラーの縄張り内で戦いがはじまった。東南に20キロあたりだ。気になるので、
『ちょっと、見てくる。』と父に思念を送り、思念体で飛んでいくと、200頭近いイノシシの群れがエンキラーの攻撃を受けていた。甘魔桃の香につられ迷い込んだところをエンキラーに襲われているようだ。只、イノシシといっても、地球サイズのものはいなく、体高2m、全長4m程もあり、皮も非常に硬く、エンキラーのウインドカッターで簡単には切り刻めないようである。頭数も200頭とエンキラーの群れの100匹の2倍であり、反対に押し込まれ、甘魔桃を食い荒らされている。『ラッキー!』俺は、思わずスキップしそうになりながら、エンキラーとイノシシの戦いの場からはなれ、甘魔桃の収穫をすることにした。風魔法で大量に収穫し、闇魔法の異空間収納に保管していく。父イルシャのようなアイテムボックスは持ってないが、俺の闇魔法では、それとは比べものにならない容量を異空間に収納できる。取れるだけ取っちゃえと、エンキラーの留守の間に収穫する。100tくらい収穫できたので、満足した。この甘魔桃は収穫しても、1週間程度で実がなるから、イノシシ達のように樹木を押し倒して喰い荒らさないかぎり問題はないので、エンキラーには頑張ってイノシシを撃退してほしいな『ガンバ!!』とエールを送ってから、父イルシャの元に帰る。
『おかえり、何があった?』と父の問いかけに
『うん、イノシシの群れがエンキラーの縄張りに侵入して、戦ってた。その隙に甘魔桃を取って来ちゃった。パパのアイテムボックスに100個いれといたよ。』と、返答すると、
「ええ???、そんなこと出来るのか?」と声に出して叫んでしまい、思わず、探検隊全員の視線を浴びてしまう。
「いやいや、すまん。今女神さまのお告げがあって、俺たちが女神様のお告げを最優先に守っているから、ご褒美に甘魔桃100個おれのアイテムボックスに入れてくれたそうだ。」と探検隊の面々に説明する。
ドランが目の色を変え、
「甘魔桃あるのか?、ちょっと休憩して、いちにこ食べないか?」6人の獣人たちが一斉に行進をやめ、父を取り囲む。
「しょうがねえな。じゃ、休憩にするか?」とアイテムボックスから甘魔桃を取り出し、全員に2個づつ配っていく。ダークエルフも獣人たち程ではないが、皆うれしそうな顔である。果皮を指で器用に剥き、うれしそうに果実を頬張る父に
『おいしの?皆すごく嬉しそう。』と思念を送ると、
『悪い、アリアナが取って来てくれたのに、俺たちだけ食べちゃって。でも、アリアナはまだ、食べられないから、大きくなって食べられるようになるまで、少しアイテムボックスの中に残しとくよ。』と、思念が返ってくる。
『でも、俺のアイテムボックスにどうやって甘魔桃をいれたんだ。そんな話聞いたことないぞ。』というので、
『大丈夫、アリアナの異空間収納の中にたっぷり保管してるから。』と先にかえし、
『パパとアリアナは親子で魔力が繋がっているの。だから、パパの魔力にお願いしたらパパのアイテムボックスに入れてくれるの。』と、答える。
『じゃあ、この甘魔桃100個全部みんなで喰っちゃうぞ。いいか?』
『いいよ』
まだ、皆、欲しそうな顔をしていたが、立ち上がった父が、残りはあとでといい、
「出発するぞ!!」と声をかけ、探検隊はやっと進みはじめる。
3時間程進んだところで、河に突き当たる。500m以上川幅があるので、筏を作るようだ。お昼を食べてから、今日は筏つくりで終わってしまうとの事である。
『パパ、サーチしたところ、20キロ四方や河の中にも魔獣はいないから、今日はもうママのところに帰るね。』
『うん。解った。』と返答があったので、山小屋に転移して、意識を本体に戻す。




