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黄金の魔女王  作者: 釣り師
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第89話 うるさいのが来た

 朝の訪れに白み出した周りの風景が、昨日までとはまるで違うことに、ワグル帝国竜騎隊の陣地は驚愕につつまれた。陣地の周りを全て取り囲んだカムール軍の弓兵たち、草原から忽然と消えた昨日まで陣をはっていたドキコア10万の軍の陣地跡、昨日からピューマ砦に行って帰らない隊長を含む23名と、20匹の騎竜ワイパーンたち、何もかもが、自分達が既に敗北していることを、物語っていた。

 包囲したカムール軍から6人が、竜騎隊陣地に向かって歩いてくる。3人は昨日ピューマ砦の偵察に行った隊長と二人の副官だと見て取れた。残りの3人の内二人は子供の様に見える。留守を預かっていた二人の小隊長が、6人の方に歩き始めた。部下たちに攻撃しないように釘をさして。

 ピエル王子を挟むかたちで、私とシロエが歩き、その後ろにニール隊長と二人の副官が続く。竜騎隊陣地まで10mぐらいの位置で竜騎隊側の2名と対面する。

 「私は、カムール軍ピューマ砦総司令官のピエルです。イルマニア水軍は既に敗退し、ドキコア軍10万も昨夜撤退しました。戦場に残っているのは、貴方方ワグル帝国竜騎隊のみとなりました。私の情報を素直に信じろとは言いませんが、当方の捕虜となっていた貴方たちの隊長に確認してください。」

 「私は、隊長が陣を出た後の、指揮を委ねられていました小隊長のケントです。ニール隊長、こちらの司令官殿が仰った情報は本当ですか?」とニールに確認する。

 「ああ、間違いない。ドキコア軍が撤退していなくても、我らには勝ち目のない戦いだったようだ。我らの騎竜をカムール軍は簡単に撃ち落してしまえる。私と副官二人が乗ったワイパーンは、空中で首を刎ねられ、瞬時に落とされた。 勿論、その方法は教えてはもらえなかったが、戦えば無駄に騎竜を死なせるだけだ。今、指揮権はケント小隊長に委ねているので、私が降伏を受け入れることを、望んでいると皆に伝え、決めてほしい。以上だ。」

 「は! 解りました。直ぐに陣地に帰り協議しますので、降伏の場合、陣地の柵を開け、ワイパーンたちを連れてそちらの包囲網に歩いて行きます。司令官殿、それでよろしいでしょうか?」

 「できたら、全員武器を外して、出てきてほしいんだが。間違って当方が攻撃しないようにしたいのでね。」とピエル王子が注文する。

 「心得ております。」といって、礼をすると、二人の小隊長は竜騎隊の陣地に向かって行った。私たちも、包囲網の指令所に引き返す。


 30分程すると、竜騎隊陣地の柵が取り払われ、丸腰のワグル兵たちが、ワイパーンを一頭ずつ引き連れて投降してきた。これから、ニール隊長を含む80名の竜騎兵は、カムール王国の王都に送られるようだ。80匹のワイパーンは、3か月前まではテイマーにより調教されており、卵から育てられているので、人を襲う心配がないこともあり、取敢えず、ピューマ砦にて飼育することになった。

 そろそろ、ピューマ砦に引き返そうとしていたら、上空に2匹の白飛狼が、現れた。サエの弟達である。直ぐに私とシロエを見つけ、降りてきた。一匹にはクロシアが乗っているが、もう一匹に乗っていたのは、ママだった。降り立つ早々、

 「アリアナ、ドキコアの10万の軍勢はどうしたのよ。折角、私が応援に来てあげたのに、雅か逃がしたんじゃないでしょうね。」と詰め寄ってきた。

 あんたは、どんだけ戦闘狂なんだよと思わず言ってしまいそうになったが、

 「ママ、落ち着きなさいよ。ドキコア軍とカムール軍の間には一切戦闘は無かったのよ。その段階で、ママがイルマニア水軍500隻を氷漬けにしてしまったから、その情報が届いた途端に撤退してしまったのよ。彼らの陣地が有ったのは、ドキコア領内よ、カムール王国領内には一歩も侵入していないわ。自国内での演習だと言われたらそれまでなの。ママがやり過ぎたの。」と私が反論する。その状況に驚いたピエル王子と近衛の二人が飛んで来た。

 「これは、白銀のブリザード殿、今回カムール王国に援軍頂き、ありがとうございます。貴殿の働きにより我がカムールは危機を脱することが出来ました。父、カムール王に代わり、第二王子ピエルがここにお礼申し上げます。」と、まるで臣下の礼をとるように、片膝をついてお礼をいった。

 「ああ、そんな堅苦しい恰好しないでよ、ピエルちゃん、今、アリアナに聞いたんだけど、私がイルマニア水軍を早く撃退しすぎたようね。でも、私だけの所為じゃないのよ。キャスルの馬鹿が暴風なんか当てちゃったから、折角、氷漬けにしたのに、下流へ押し流してしまうんだもの氷河が流れて行くのと同じになっちゃったのよ。全然楽しめなかったから、ドキコア軍で遊ぼうと思って飛んで来たのに、影も形もないじゃないの。アリアナに文句いったら、反対に私がやり過ぎた所為だと言われるし、何か今回は不完全燃焼だわ。」と勝手なことを言っている。初めて会った、ピエル王子は驚きすぎて、言葉が続かなくなっていた。


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