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黄金の魔女王  作者: 釣り師
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第88話 降伏

 私たちは、3人の竜騎兵をピューマ砦に連れてきた。捕虜として、どうしようかと決めていなかったため、ピエル王子に尋問に立ち会ってもらうことにした。本当は子供の私たちでは、どうしても舐められると考え、全てピエル王子の指揮であるように信じ込ませ、王子に降伏勧告するようお願いしたのだ。砦の会議室に3人は連行する。

 キーマさんに通信連絡しておいたので、ピエル王子と、近衛の二人、キーマさんにAランクハンターの5人が待っていた。3人を椅子に座らせてから、

 「私はカムール王国第2王子のピエルです。貴方たちは、我が軍の捕虜となりました。まず、氏名と階級を話して下さい。自発的に答えていただければ、拷問等の手段を取らなくて済みますので、良く考えてください。それから先にお教えしておきますが、今日、砦に攻撃を行った竜騎兵20名は当方の反撃で、既に全員死亡しています。」

 この言葉に3人は顔を見合わせ、「やはりそうでしたか。」と呟く。

 「私は、ワグル帝国竜騎隊隊長ニール・ヤンセンです。この二人は私の副官のモルと、ミーナです。我々の任務は、ドキコア軍のサポートとして、この砦の陥落を命じられました。しかし、我々全員、僅か3ヶ月の訓練で急遽、竜騎隊を組織され、今回の遠征を命じられたため、騎竜の扱いも未熟であり、到底不可能な命令だと自覚していました。それに、今も自分達三名がどのようにして騎竜を仕留められ、捕縛されたのか解らない状況です。このままでは、先に命を落とした20名同様に、残りの77名も簡単に殲滅されると思います。彼らは私の同郷の大事な友でもあります。無駄死にさせる訳には参りません。この副官のミーナを使者に同行させ、降伏するように説き伏せたいと考えます。我らの陣は、ドキコア軍から離れた丘陵地にありますので、ドキコア軍に知られることはないと思いますが、如何でしょう。」

 「やっと解りました。あなた方の攻撃が、常にバリスタの射程外からの弓矢だけだった訳が。しかし、ドキコア軍の心配は要らないと思いますよ。先程、通信が入り、イルマニア水軍は、我が方の魔法攻撃により全滅してカイムル大河を流されているようですよ。ドキコア軍にも連絡が来てる筈ですから、今夜にも撤退してしまうと思いますよ。部下たちを説得されるなら、副官のミーナ殿ではなく、隊長の貴方が出向くべきかと思いますが、如何ですか?」私も初めて聞く情報なので、キーマさんの方を見ると、頷いた。

 「そうですか。しかし私が出向いてもよろしいのですか? 一応、竜騎隊の隊長は、捕虜として確保されるのではないかと思いましたが、」ニール・ヤンセンが聞いてくると、

 「いや、あなた達3人全員を連れて行こうと考えています。ドキコア軍の撤退が確認でき次第、兵を差し向けますので、それに同行して部下を説得して下さい。」

 ピエル王子が通告する。3人の捕虜は頷いて同意する。守備兵たちが、3人を拘束するため、別室に連れて行く。先程の情報をもう一度確認したくて、ピエル王子に問いかけると、

 「先ほど、キャスルさんから、キーマさんに通信が入り、アリアナ様の母上、白銀のブリザード様がイルマニア艦隊500隻を氷山に閉じ込めキャスルさんが、風魔法の突風山おろしで下流に押し流してしまったようです。イルマニアの魔法使いたちも、風魔法で抵抗したようですが、魔力が枯渇してしまい、一つの氷河となって海に流れていったようです。明日には魔法使いたちの魔力も回復するでしょうが、彼らに氷河を溶かすほどの力は無いようなので、生き残ったものたちを脱出させるのが限界だということです。もはやイルマニア水軍には何の脅威もないので、カムール王国軍船100隻が氷河の後について、カイムル大河沿いのイリマニア王都を目指して進軍しています。イルマニア水軍の500隻は氷河に押し潰されているので、氷が溶けても使い物にはならないとのことですので、莫大な損害になったと思いますが、先に宣戦布告してきたのはイルマニアの方ですから、今回の賠償義務が発生します。500隻もの水軍の守りが無くなったイルマニア王都は、カムール軍の100隻が制圧させて貰います。こういう時の私の兄上は容赦がありませんので当然の成り行きとおもいます。」

 ははは、またやってくれちゃったのねと思い、只、顔を引き攣らせるしかなかった。

 「それはそうと、ドキコア軍の様子を見て来ようか?白飛狼に乗って監視してれば撤退し始めたらすぐに、報告できるよ。」と言うと、

 「いえ、それには及びません。斥候にこの砦の通信用オーブを持たせておりますので、状況は逐一キーマさまの通信魔道具まで送ってくるように言ってます。」

 「へえ、そのブレスレット、結構役に立っているんだ。そうだ、ピエル王子にもこれ一個あげる。」私は、異空間収納からダイヤとミスリルのブレスレットを取り出してピエル王子に手渡し、使用者登録する。

 「こんな高価なマジックアイテムを頂いてよろしいのですか?」と聞くので、

 「私が趣味で作ったものだから、問題ありません。有効に使ってくださいね。」と言ったところに、キーマさんのブレスレットが輝き斥候兵の顔が現れた。

 「今、ドキコア軍が撤退を開始しました。ワグルの竜騎隊には連絡しないで、闇に乗じて撤収するようです。」キーマさんが「了解しました。」と答え通信が閉じられた。

 「はあ、やはりドキコアは開戦するつもりは無かったようですね。じゃあ、今夜の内に1000人程弓兵を派遣して、竜騎隊の陣を囲い込みますか。朝、ニール君に降伏するように説得してもらいましょう。やっと終わりました。アリアナ様、シロエ様、キーマ様、本当にありがとうございました。おかげで、こんな無駄な戦で兵を一人も失わずにすみました。」ピエル王子が深々と頭を下げ礼を言ってくれた。

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